グループデート会話 臨海公園 柊・氷室・御影
ショッピングモール:ショッピング
「広いよな、ここ。いったい何軒、店があるんだ?」
「案内によると、100以上ですね。」
「はばたき市で一番大きいショッピングモールですから。」
「何度来ても広くて、方向感覚が狂います。」
「夜ノ介先輩、迷子にならないでくださいよ。」
「自信ありません。」
「じゃあ、みんなで手でも繋いで行くか?」
「は?」
「え?」
「はい。並び順どうします?」
「並び順…… 彼女の隣に……」
「誰かひとりは、辛い思いをしますね。」
「おお、考えてるな~、男子高校生!4人の並び順。さて、どうする?」
「4人横に並んで歩くなんて、迷惑だからダメです。」
「そんな怒るなよ。せっかく4人だからさ、ドキドキ企画が欲しかっただけだって。」
(もう……でも今日は珍しく、柊くんと氷室くんも乗ってたよね?)
ショッピングモール:ショッピング2
「ここは、欲しいものが何でも揃いそうだな?」
「何か買ってくれるんですか?」
「え? それは……」
「氷室くん、何か欲しいものあるの?」
「なんです?」
「おう、一応聞いておこう。」
「サーフボード。高いですよ。」
「うっ……」
「イノリ君はサーファーでしたね。」
「ちょっとバイトしたくらいじゃ買えません。でもヴィンテージもので、貴重なものなんです。」
「それ、見てみたいな。イノリ君、ここで売ってるんですか?」
「ええ、みんなで行きましょう。」
「御影先生も行きましょう?」
「お、おい。そんな高いのは無理だって……」
「ふふっ、大丈夫ですよ。氷室くんも御影先生に買ってもらうつもりは、全然ないと思いますよ。」
「あ、そう? 全然、ね……」
(御影先生は、生徒の望みを何でも叶えてあげたくなっちゃうんだな……)
臨海公園:遊覧船
「4人で船旅に出るみたいですね。」
「ふふっ、うん。」
「はば学に入学するまでは、ずっと旅の生活でした。」
「船旅もあったのか?」
「はい、離島にも行かせてもらいましたから。」
「夜ノ介先輩は昔に戻りたいですか?」
「え……」
「……いいえ。まだ慣れないこともありますが、はば学の生活、大好きです。」
「ふぅ、そりゃよかった。夜ノ介、変な間を作るなよ。」
「すみません。でも、少しだけ 昔を懐かしむ気持ちもあるんです。」
「そっか。余裕が出てきた証拠じゃねぇか。」
「そうなら良いです。」
「じゃあ今日は、夜ノ介先輩の旅心を満たすために、旅行気分で乗船しましょうか。」
「うん、そうしよう。」
「ふふ、ありがとう。」
「僕は船の時間、確認してきます。」
「イノリ君は何でも遠慮なく聞いてくれて、気持ちいいです。」
「ああ、あいつのいい所の1つだな。」
「はい。」
「僕が昔を懐かしむ余裕を持てるのも、皆さんのおかげです。」
(よーし、4人の船旅、楽しむぞ!)
臨海公園:遊覧船2
「今日は風も波も穏やか。」
「みんなでのんびり船の上なんて、贅沢な時間ですね。」
「なに、まったりしてんだよ?もうちょっとはしゃいでもいいじゃねぇか。」
「何ではしゃぐ必要があるんです?」
「ええ。御影先生も深呼吸してみてください。気持ちいいですよ?」
「へいへい。」
「ふふっ。御影先生、どうしたんですか?」
「仲間と騒ぐのも、高校生の醍醐味だろ?」
「騒ぐ?ちょっと意味がわかりません。ね、夜ノ介先輩。」
「御影先生は、運動がしたいんですか?」
「はぁ、もういいよ。ほら、海鳥のエサ、売ってる。あれは盛り上がるぞ。」
「御影先生は動物好きですからね。」
「ま、生物の先生だし。」
(ふふっ!御影先生が一番高校生っぽいかも?)
水族館:水族館内
「前から気になってたんです、水槽の掃除。」
「え? 掃除?」
「夜ノ介は生き物じゃなくて、掃除が気になるのか?」
「ええ、とてもキレイなので。」
「全ての魚を別の水槽に移動させてやるんですかね?」
「大変そう……」
「アクリル水槽のお掃除グッズなんてあるんですかね?」
「どうだろうな。そういえば、水垢の曇りは洗うより、アクリルを削るって聞いたな。」
「ええっ? じゃあ、どんどん薄くなっていったら……」
「恐ろしいことになるね。」
「心配すんな。そんながっつり削らない。」
「きっと繊細な研磨技術なんでしょうね。究極の掃除です。」
「あ、そこのパネルにお掃除生体って書いてあります。」
「ああ、巻貝やエビなんかだな。水槽の藻を食べてくれる。」
「すごいですね。飼っている生き物が掃除もしてくれるなんて。」
「うーん。でも僕は、自分の手で掃除したいです。」
(ふふっ。柊くんはお掃除が好きなんだな)
水族館:水族館内2
「おお、あそこにマンタがいる。」
「大きいですね。」
「御影先生、エイとマンタは違うんですよね?」
「別の種類だな。見分け方は簡単だ。デカイのがマンタ。」
「ふふっ、簡単。」
「一目瞭然。」
「へぇ……小次郎先生の授業ってこんな感じなんだ。」
「確かに課外授業みたいですね。」
「ふふっ、そうかも。」
「ま、ここは課外授業の定番だからな。」
「そうか、こういう感じか……」
「どうした、イノリ。」
「僕は、小次郎先生の授業を受けたことがないので。」
「うん、氷室くんと同級生になったみたい。」
「夜ノ介先輩と君と……」
「ん? 夜ノ介?」
「はい?」
「イノリにこんな気持ちを味わってもらいたかったから、俺たちをここに誘ったのか?」
「い、いえいえ。僕はそんな気の利いたことはできません。」
「……ありがとうございます。ちょっと、嬉しいかも。」
(氷室くん、一緒に授業受けたかったんだ……柊くん、優しいな)
水族館:深海コーナー
「水族館の施設の中でも、ここは別格に面白い。」
「僕も同感です。ここは人を楽しませる工夫があちこちにありますから。」
「遊園地みたいな雰囲気あるよね。」
「俺も好きだ。イノリ、みんなの好みを考えて誘ってくれたのか?気が利いてるじゃねぇか?」
「偶然ですよ。でも僕たち、結構好みが合うのかも。」
「ふふん、姿かたちは全然違いますが、同じ環境下を好む。ここの生物たちと似てます。」
「深海生物か。たしかに、おまえたちは個性的で面白いな。」
「見た目はちょっと……」
「あなたは、発光器官を持ってる生物ですね。きれいで目をひく。」
「おう、ナイスフォロー。」
「でも、うかつに近づくと、食べられちゃうんですよ。」
「ええ?」
「近づくのも命がけってことか。」
「なるほど……」
「みんな、今の距離感なら平気でしょう。」
( ? 何の話をしてるんだろう……?)
水族館:深海コーナー
「ここのダイオウグソクムシ、若者に人気みたいですよ。」
「おまえも十分若者だろ。」
「興味深いのはわかります。本当に甲冑をまとっているようですから。」
「見た目もそうだが、謎が多い。この個体も、何年もエサを食べてないらしいぞ。」
「……それが人気の理由ですか?」
「パンフレットには、『キモカワ生物』って書いてあったよ。」
「『キモカワ』とは何です?」
「気持ち悪いと可愛いを併せ持つ、という意味。若者言葉ですよ。」
「だから、おまえも若者だろって。」
「ひとくくりにしないで下さい。」
「え、ああそうか。悪い悪い。おまえたちは、いわゆる若者とは違うかな。」
「そうでしょうか……」
「ふふっ。二人とも、普通って感じではないかも?」
「それを言うなら、僕たちに付き合ってくれるあなたも十分、稀な存在ですよ。」
「ははっ!ああ、確かにな。」
「さっきから他人事みたいな感じですが、小次郎先生が、普通じゃない最たるものですよ。ダイオウグソクムシみたいに。」
「おお、そうか?嬉しいじゃねぇか。俺たち4人、キモカワ仲間ってことだな。」
(その表現はなんだかな……)