抜け駆けデート会話 柊夜ノ介

グループデート後

「◯◯さん。」

「どうしたの、柊くん？」

「名残惜しくて残ってた。そしたら、あなたの姿が見えました。」

「ふふっ、そっか。」

「そうです。なので、もう少し一緒にいない？」

「うん、もちろん！」

「よかった。実は、目星はつけてあります。行こう。」

ショッピングモール：スカイラウンジ

「この時間の景色、あなたと見たかったんです。」

「うん、ありがとう。キレイな夕焼けだね。」

「ええ。海と山と街、はばたき市の全部が見られます。本当に素敵なところですね。ここは。」

「うん。ここから見える全てが、はばたき市のいいところだね。」

「ですね。僕の目には、しっかりあなたも映ってます。」

「え？」

「僕にとってはあなたも、この街の魅力の１つですから。」

「ええ？　うれしいけど、大げさだよ。」

「そうですかね？ でもそんなあなたを独り占め成功です。」

「柊くん……？」

「ふふ、なんてね。また、皆でお出掛けしましょう？勿論、二人きりでも。」

（柊くん、みんなといる時と少し違うような……ちょっとドキッとしたかも）

ショッピングモール：スカイラウンジ２

「はぁ、間に合いました。夕焼けの時間。」

「うん、きれいだね……」

「見たかったんだ、あなたと二人で。あ、こんなこと言ったら、イノリ君に叱られるね。」

「ふふっ、そうかも。御影先生は？」

「ははっ、どうでしょうか？イノリ君と一緒になって怒るかも？」

「うん。じゃあ、今度は誘ってあげよう？」

「……嫌です。」

「柊くん？」

「……ふふっ。その顔、ズルいですよ。そうやって、いつも僕を笑わせる。」

「笑わせてるつもりないよ？」

「そうですか、失礼。でも、やっぱり あなたと二人がいいな？」

（柊くん……楽しそうだけど、ちょっと変な感じもする。どうしちゃったのかな……）

近所の公園

「柊くん、公園に来たかったの？」

「どうかな？　昨日は考えてたんだ。でも、いざあなたと二人になると、どこでも良くなってしまいました。」

「ふふっ、そっか。」

「どこでもいいなんて、この公園に失礼かな。でも、それが正直な気持ちです。あのお二人には悪いけれど、あなたと二人だけで話がしたかったんだ。」

「そうだったんだ……」

「ふぅ、はい……」

「それで、お話ってなに？」

「え？」

「えぇと、二人で話したかったんでしょ？」

「あ……それも……なんでもよかったみたいだ。」

「ええ？」

「じゃあ、せっかくです。あのブランコでも乗ろう？」

「ふふっ、うん。いいよ。」

「はい、手を貸して！」

（ふふっ。なんだか今日の柊くん、子どもみたい？）

喫茶店

「今日も沢山、遊びましたね。」

「うん。柊くん、疲れてない？」

「ええ、昼よりも元気なくらいです。」

「え？　そうなの？」

「ええ、御影先生やイノリ君と一緒だと、少し頭が疲れます。もちろん楽しいんですけど、余計なことが頭をよぎる。」

「余計なこと？」

「イノリ君の的確な仕切りとか、御影先生のユーモアとか……到底、僕には真似できない。あのお二人には劣等感を感じます。情けない……」

「ええ!?　柊くんが劣等感？」

「どうしてそんなに驚くんです？」

「柊くんみたいなスゴイ人でも、そんな感情をもつんだなって……」

「僕がスゴイ人？もしそうなら、この僕をこんな風にさせるあなたはなんて表現すればいいんでしょう？」

（ええ？そんなこと言われても、困るよ……）

商店街：ショッピング

「どこか気になるお店、ありますか？」

「柊くんは？何か欲しいものがあったんじゃないの？」

「ええ。でも、もう手に入れました。あなたと二人きりの時間。今日、ずっと欲しかったんです。」

「え、柊くん……？」

「僕の中にこんな独占欲があったなんて、驚いた？」

「えぇと……」

「ごめん。困らせるつもりはないんだ。さ、今日の思い出に二人で何か買いましょう？そしたら、前半の印象よりこっちの方が強くなるかな？」

「ええっ!?」

「ふふんっ。僕は意外と策士なんですよ？」

（なんか今日の柊くん、いつもと違うかも……？）

商店街：ショッピング２

「ショッピング？」

「ええ。僕の服を見て欲しくて。」

「いいよ。どういうのがいい？」

「そこは、お任せします。」

「じゃあ……」

「ここは、女性の……しかも随分と露出が多い……」

「このショップ、数は少ないけどメンズも置いてるんだよ？」

「そ、そうですか……」

「あんまりだった？」

「いえ、僕から頼んだんだ。任せます。」

︙

「……はぁ、買ってしまった。新しい扉が開きそうだよ。」

（柊くん、レザーのセクシー系、似合うと思うんだけどな……）

映画館

「柊くん、この映画が観たかったんだね？」

「うーん、どうだったかな？」

「え？」

「ふふ、すみません。正直に言うと、静かにあなたとお話できればどこでも。映画、観なくてもいいくらいです。」

「ええっ？」

「あのお二人には申し訳ないですけど？」

「あっ、そろそろ始まるよ？」

「じゃあ、折角ですから観ましょうか？」

「うん。おしゃべりの続きはまたあとでね？」

映画館２

「ふぅ、まあまあだったね。付き合ってくれてありがとう。」

「ううん、こちらこそ。」

「劇団の後援会の方から、譲ってもらったんです。２枚だけ。」

「そうだったんだ。御影先生と氷室くんにも観せてあげたかったね。」

「ええ。でも４人で並んで映画を観るって、面白い絵面ですよ。」

「そうかな？」

「ええ、想像してください。御影先生、僕、あなた、イノリ君が順番に真剣な顔で並んでる……」

「……あははっ。」

「ね？」

スタッフ「すみません。一旦清掃にはいりまーす。」

「あ、はい。……もうこんな時間だ。映画の感想は、帰りながらゆっくり。」

「うん！」

はばたき城：天守閣

「よかった。夕焼けの時間に間に合いました。」

「うん、キレイな夕日だね。」

「ええ。空もお城も赤く染まってます……まさに『はばたき城炎立つ』。」

「え？劇団はばたきの演目の？」

「そう。市民劇団として活動を始める前、ひとりでここに来たんです。」

「そうだったんだ。」

「ええ。その時、このはばたき城を舞台にした演目を考えたんです。この赤く燃えるような空と天守閣から、あの演目のアイディアが生まれました。」

「……この景色から、お芝居が生まれたんだね。」

「はい。一度、あなたと一緒に見たかった――いえ、あなたと二人で見たかったんです。」

「そっか……ありがとう、柊くん。」