学食会話 颯砂希・氷室一紀

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見過ごすのは珍しい

「玲太、今日どうしたんだ?」

「御影先生とお話ししてたよ。」

「珍しいですね。僕たちだけで学食行くのを、リョータ先輩が見過ごすなんて。」

「確かに。絶対許さなそうだもんな。」

「そうかな……?」

「ええ、後から走ってくるかも。」

「十分あり得る。イノリ急げよ、なんか玲太抜きで話すことないか?」

「急に振られても……ノゾム先輩は?」

「じゃあ、玲太の……髪型?」

「あ、いいですね。 君、リョータ先輩の髪型どう思う?」

「ええ、髪型? どうって言われても……」

「ほら、特にぴょこっとしてるてっぺんのヤツ。」

「僕は前髪も気になりますね。」

「おーい。」

「ははっ、ほら!本当に来た。」

「ええ。思った通りでリョータ先輩らしい。」

「玲太、こっち!」

(ふふっ!風真くんのお話、面白かった。でも、わたしもきっと何か言われてるな……)

 

変な事って何?

「玲太、今日は御影先生に手伝い頼まれてるって言ってたよな?」

「ええ。さっきリョータ先輩に釘刺されました。」

「え?」

「『変な事』を君に吹き込むなって。」

「玲太らしい。きっと今頃さ、ヤキモキしてんだよ。」

「えーと……『変な事』って?」

「難しいですよね。もっと具体的に口止めしてくれないと。例えば、リョータ先輩が君とお花畑にいる夢を見たとか?」

「えっ?」

「イ、イノリ……おまえ、怖いやつだな。」

「どうしてですか?今のがリョータ先輩が言う『変な事』なのかわからないし。」

「よーく、わかった。イノリへの口止めは具体的にするよ。」

「ノゾム先輩の言う『変な事』ってなんですか?」

「それはさ―― ……って言うかよ。」

「もう少しで言っちゃいそうでしたね。」

「こわ……」

「ふふっ!風真くんも颯砂くんも、氷室くんには適わないんだね?」

「イノリは策士だからさ。そうだ、きみが知ってるイノリの『変な事』教えてよ。」

「はぁ? ちょっと何言ってるんですか。」

「氷室くんの変な事……?」

「考えなくていいから。」

「ふーん、こりゃいいな。玲太に教えてやろう。」

「な、なにをです?」

「イノリをけん制するには、きみの持ってる情報がカギだってさ。」

(えぇと……氷室くんにすごいにらまれてるような気がするけど、何のことだろう……?)

 

後輩の女子に人気

リョータ先輩がいないの、変な気がしますね。」

「あっちで後輩に囲まれてた。一緒にランチだってさ。」

「君、それでいいの?」

「え? いいって?」

「ずいぶん余裕なんだな。後輩って言っても、女子がほとんどだよ?」

「うん、シモンのお客さんでもあるし、風真くんのおすすめとか聞きたいんだと思う。」

「ハァ……本当、君って人が良い。僕なら行かないけどね、君を置いて。」

「えぇと……?」

「イノリ、玲太の居ぬ間に、アピールか?」

「どう受け取るかはお任せします。」

「ははっ、いいな。今日はオレたちのアピールタイム。よろしくな?」

(ええ!? よろしくって言われても……!)

 

何もしないのは

「なんで玲太って、何もしないのかな?」

「え?」

「ノゾム先輩、意味深……」

「え……!? ああ、きみと何かするとかじゃないよ?ほら、運動も文化系のセンスもあるのにさ、もったいないって話だよ。」

「……あ、部活のことか。びっくりした……」

「君の反応も意味深……ノゾム先輩、気を付けて。二人は今が大切な時期でしょうから。」

「えっ……?風真くんの部活の話でしょう?」

「うーん。もうその話はいいや。」

「ええ。リョータ先輩がいないし、二人の進展を共有してもらいましょうよ。」

「ああ、友だちとしてオレたちも知っておいた方がいい。」

「ええ、今後の参考になる。」

「ええ!? 風真くんとわたしの進展って……昔から仲良しだよ?」

「そんなのオレだって一緒じゃん。」

「だめ、やりなおし。」

(風真くんがいないと、二人の追及が厳しいよ……!)

 

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