学食会話 風真玲太・颯砂希
先輩と後輩
「今日、イノリなんで来ないんだ?」
「学年集会の準備がどうのって言ってた。」
「そうか、あいつ学年が違うんだよな。」
「ふふっ。いつも一緒だとそんな気がしないね?」
「それがあいつのすごいとこだよ。部活の後輩じゃ、こうはなれなかったと思う。」
「へー。颯砂は陸上部じゃ、そんなに怖いのかよ?」
「さあな。一緒に走ってみるか?」
「いやだよ。おまえに追いかけられるのは恐い。幼稚園の頃を思い出す。」
「ふふっ。恐くはないけど、颯砂くんも風真くんも学校の有名人だから、普通に話せる氷室くんはすごいと思う。」
「普通に話すどころか、どっちかって言うと上から突っ込んでくるよ。」
「だな。リョータ先輩はわかりやすいですね、とか にやけて言ってくる。」
「ま、それは事実だから。」
「何だよそれ。」
(ふふっ! 氷室くん、今頃くしゃみしてるかな?)
氷室くんのすごさ
「今日、イノリどうしたんだ?」
「さあ?いつもの、気分じゃないとかそんな感じだろ?」
「ははっ、イノリらしくていいな。そういうの。」
「遠慮されるよりは気持ちがいい。」
「ふふっ。二人とも氷室くんのことが好きなんだね?」
「好きか嫌いかって話なら好きだよ。な、玲太。」
「ああ。思ったこと何でも言えるって、大したもんだよ。」
「あ、でもこないださ、イノリが廊下で先生に褒められててさ、無茶苦茶怖い顔して、あいつなりに耐えてた。」
「え?褒められてたんでしょ?」
「テストの点が良かったらしくて、『さすが氷室家!』みたいな褒められ方してた。」
「悪気は無くても、それはひどいな。あいつ大丈夫だったか?」
「大したもんだよ。ありがとうございますって言ってた。」
「そっか……あいつなりに我慢してんだな。」
「頑張ってたよ。顔には思いっきり出てたけど。」
「きっとひどい顔してたんだろうな。」
「誰彼構わずにズバズバ言ってるようでさ、あいつの中ではちゃんと線引きしてんだ。」
「うん。氷室くんはきっと二人には心許してるんだよ。」
「ふーん……きみにも?」
「え?」
「え?じゃない。どうなんだよ?」
(えぇと……なんでわたしが責められてるの?)
いいところはどこ?
「今日、イノリは?」
「学年が違うと色々あるんだろう?」
「ま、来たけりゃ、遅れてくるか。」
「自分の知らないとこでオレたちが何言ってるか、気にしてるのかな?あいつ。」
「ふふっ、そんなこと気にするかな?」
「気にしてなさそうで、気にしてる。それがかわいいとこでもあるけどさ。」
「そうかもな。で、きみもそういうとこがいいの?」
「え?」
「何言ってんだよ、颯砂。」
「いいじゃん。イノリいないんだし。一度、きみに聞いてみたかったんだ。イノリの好きなところ。」
「はぁ、勝手にしろよ。俺は聞きたくねぇよ。」
「じゃあ、耳でもふさいでろって。」
「急にそんなこと言われても…… わからないよ。」
「『わからない』じゃ、対策もできないだろ?」
「玲太、聞かないんじゃないのかよ。」
「うるさい。で、どうなんだよ。」
「ええ? うーん……」
「あー、やっぱり、いい。」
「なんなんだよ。」
( ? 風真くん、どうしたんだろう?)
幼なじみでランチ
「今日は幼なじみでランチだ。」
「ははっ、イノリに怒られそうだな。」
「怒らないとは思うけど……なんかチクリと言われそう?」
「へー。あいつ、おまえにもそんな感じなの?」
「ああ、気になるな。オレたちには手厳しいけど、きみには甘々だったりする?」
「うーん、一緒だと思うよ?」
「ふーん、ナンセンス。 とか?」
「ふふっ、そんな感じかな。」
「でも、そういうときに限って楽しんでたりするんだよな。」
「ああ、ニヤリって感じだろ。わかる。」
「本当に楽しいときも、そんな感じかも。」
「ははっ、わかりやすいんだか、わかりにくいんだか。」
「きみと二人の時もそんな感じなら、安心したよ。」
「年下だし、俺たちにはわからない気を使ってるんだろうけどさ、俺には真似できない。」
「なんだ。玲太、降参か?」
「そんなわけないだろ。まだまだだ。」
「ふん、オレも。 イノリがいないところで、こっそりこんなこと言うの、ずるい先輩だな。オレたち。」
「ま、あいつが一歩先に行ってるんだから、いいだろ?」
(えーと……氷室くんとわたしの関係のことだよね、きっと)
▶風真玲太・颯砂希 風真玲太・氷室一紀