抜け駆けデート会話 颯砂希

 

グループデート後

「◯◯。」

「颯砂くん? どうしたの?」

「きみの方こそ。どうしたの?」

「うーん、なんとなく?」

「なら、オレもなんとなく。」

「ふふっ!」

「あのさ……なんとなく、この後一緒に行きたいとこあるんだ。どう?」

「うん、いいよ!」

「決まり!じゃ、行こう!なんとなくだけど、場所は決めてある。」

 

近所の公園

「はい、着いた。」

「え? 颯砂くん、この公園に来たかったの?」

「そう。この公園って、昔からあるじゃん。多分オレたち、ここで一緒に遊んでる。」

「え! 覚えてるの?」

「……って、玲太が言ってた。」

「ふふっ、そっか。風真くんは色々覚えてるもんね。」

「ああ、ズルいよ。最初はさ、昔のこと覚えてる変わったヤツ、としか思ってなかったけど……今は違う。だって玲太だけ、オレの知らないきみを思い出せるんだろ。」

「えっ……」

「だから、ここに二人で来たら、なんかのはずみで思い出すかなって。うーん……あっ!」

「えっ、何か思い出したの?」

「ううん、全然ダメ。」

(なんだぁ……ビックリした)

 

近所の公園2

「よっし、到着。」

「え……この公園に来たかったの?」

「うーん、ごめん。なんとなく、きみと話してたら着いた。 正直さ、きみを誘い出すところがメインになってて、その後がグダグダ。」

「ふふっ。じゃあせっかくだから、公園で遊んでいこっか?」

「おう、いいね。オレ、あの台形の山、気になってたんだよな。ちょっと登ってくる!」

(颯砂くん、子どもみたい?もしかしたら幼稚園の頃、こんな感じで一緒に遊んでたのかも……?)

 

ショッピングモール:ショッピング

店員「ただいまからタイムセールでーす。お買い得ですよー!」

「うん、いいよ。」

「え……? わたし、何も言ってないよ?」

「ははっ。だって、行きたいって顔に書いてあるよ。」

「ジュ、ジュエリーショップ…… オレ、場違いすぎじゃね?」

店員「いらっしゃいませ~!新作エンゲージリング、入荷しています。」

「うわ、キレイ。素敵だな……」

店員「今ご予約いただければ、3か月以内の挙式でしたら間に合いますよ?」

「え!?」

「きょ、挙式?」

店員「ご予定はいつですか?」

「あの、オ、オレたちは……まだです。」

(……ん? 『まだ』?)

店員「そうでしたか。ごゆっくりご覧下さいませ。」

「ふぅ……びっくりしたね?」

「……うん。」

(でもさっき、颯砂くん、『まだです』って言ってたよね……?)

 

水族館:水族館内

「この時間からの水族館、なんか気分が違うな。」

「うん、新鮮かも。」

「シーンとしててさ、さっきまでとのギャップがすごい。玲太とイノリには悪いけど、こっちの方がいいな。」

「聞かれたら、怒られるよ?」

「え!?」

「ふふっ!」

「ああ、だましたな?」

(なんだか秘密のデートって感じで、ドキドキするかも……?)

 

水族館:水族館内2

「うん、ここならゆっくりできる。」

「颯砂くん、そんなに水族館好きだったっけ?」

「うーん、普通寄りの好き?」

「ええ?」

「正直さ、魚たちに悪いけど、きみと二人で落ち着ければどこでもよかったんだ。」

「えぇと……颯砂くん?」

「あ、でもさ。こうやって、青い光の中できみを見てると、水族館でよかったかな。なんか人魚っぽくてさ、いいじゃん?」

(颯砂くん、ちょっと浮かれてる……?)

 

カラオケBOX

「はー、歌ったー!」

「颯砂くん、声枯れちゃわない?」

「全然平気。せっかくきみと二人になれたんだし。いっそさ、もともと今日は二人でカラオケに来たくらいの気分になろうよ。」

「ええ?風真くんと氷室くんが聞いたら怒るよ?」

「まあな。玲太もイノリも、変なところ敏感だからな。 ううん……オレ声、大丈夫だよな?」

「え?」

「声枯らしたら、カラオケ行ったってバレそうじゃん?」

「うーん……それだけじゃ、わからないんじゃない?」

「そうだよな。じゃ、どんどん歌おう!」

「ふふっ、うん!」

 

映画館

「上映開始に間に合ってよかった。ちゃんと最初から観られたね。」

「うん、よかった!」

「このスポーツドキュメンタリー映画の競技指導に、父さんが協力してんだって。」

「そうだったんだ。颯砂くんのお父さん、すごいね。」

「はは、ありがとう。まあそれで、ペア招待券もらったってわけ。あいつらには内緒な。」

「ふふっ、叱られそうだけどね?」

「それは、きみ次第だよ?」

「え?」

「オレはこの映画をきみ以外の人と観ることはないけどさ。きみは?」

「えっ、それは……」

「あ、ごめん、ごめん、今日のオレ、独占欲強すぎだな。」

(今日の颯砂くん、ちょっと意地悪……?)

 

はばたき城:天守

「ふぅー……夕焼けのお城はいいな。」

「うん。街が赤く染まって、きれいだね。」

「うん、想定通り。」

「うん?」

「この時間は観覧者も少ないから、きみとオレで貸し切りじゃん。玲太とイノリには悪いけどさ。それにオレさ、バカだから高いところが好きなんだ。お城も表彰台も、一番上がいい。」

「ふふっ。」

「だから、きみの中にある表彰台でも、一番上に登る。」

「えっ?」

「ははっ、何言ってんだろうオレ?」

(颯砂くん? ちょっといつもと違う感じがするな……)