下校会話 風真玲太

教会の噂

１

「なぁ、学校の敷地にある教会の伝説、聞いたか？」

「王子様とお姫様が出てくるお話だよね？」

「そう。ステンドグラスに描かれている通り。最後に王子様が迎えに来て結ばれるってやつ。それでさ、あの教会で本当に結ばれたカップルがいたらしい……」

「本当に結ばれる……」

「そうらしい。そんな教会に俺たちは 幼い時に鐘の音に誘われてやってきて、今は、はば学生になった。」

「ふふっ、うん。なんかすごいね。」

「恐ろしいくらいに、状況が整ってるな……これで決めなきゃウソだな。」

（……風真くん？）

２

「あの教会って、恋愛の伝説だけじゃなくていろんな噂があるみたいだよ。」

「俺も色々聞いた。変なのばっかりだったぜ。……地下に、御影先生の隠し農場があるとか。」

「ええ？」

「人工光型の野菜工場で来たるべき時に備えているんだとか……」

「来たるべき時……って？」

「さあ、文化祭とかじゃないのか？　ダチョウ牧場ってのもあったな。」

「ダチョウ？それも御影先生なの？」

「そう。御影先生がダチョウのヒナをこっそり飼ってて、それが異常繁殖してるって噂。」

「それでダチョウ牧場……まさかそのダチョウ、食用なの？」

「そこかよ！」

（……という話をしながら、風真くんと楽しく下校した）

３

「教会の新ネタ、仕入れたぞ。」

「ふふっ、ネタ扱いなの？あんなに素敵な伝説なのに。」

「だな。みんな楽しんで遊んじゃってる感じ？」

「うん、そうかも。じゃ、今回はどんなネタ？」

「氷室教頭。」

「えっ、氷室教頭の噂!?」

「氷室教頭が２匹の鬼を従えて、教会の扉を守ってるって話。その鬼の１匹は金髪で扉に近づくと上からふってくる。もう１匹は巨体で花壇からにらみを利かせてるらしい。」

「えぇと、それじゃ近づけないよ？」

「そこまでして守る秘密ってのが、教会に隠してる氷室教頭のスペアボディなんだって。」

「スペアボディ？　どういうこと？」

「氷室教頭が実はヒューマノイドで、今の教頭、学年主任の頃、担任の頃、３体のボディが存在するらしい。」

「えっと……二人の鬼が氷室先生のスペアボディを守ってるの？」

「まあ、構図としてはそうなるな。元ネタが跡形もないよな。」

「ふふっ、でも面白いね。……今度、氷室先生に聞いてみようか？」

「はっ!? おまえ無敵だな。　聞くならひとりで行けよ。」

（……という話をしながら、風真くんと楽しく下校した）

誕生日前

「なあ。そろそろだよな。」

「風真くんの誕生日だよね？」

「おう。」

「まさか、忘れてると思った？」

「おまえに限って、そんなわけないよな。」

「当然です。で、何か欲しいものある？」

「ノーヒントでお願いします。」

「ええ？　プレッシャーだよ……」

「期待してるからな？」

（う、どうしよう……）

体育祭前

「もうすぐ体育祭だね？」

「知ってるよ。」

「風真くんは、運動も得意だからいいよね。」

「別に良くない。」

「もう、怒ってるの？」

「怒ってませーん。おまえにだけは、負けた姿見せたくないの。それだけ。幼稚園の運動会で、おまえが見てるのに２番の旗、持たされた。今でも夢に見る。」

「えぇと……わたし覚えてないよ？」

「それがせめてもの救い。ただ、高校の体育祭のことはさすがのおまえも忘れないだろ？」

「もう、そんな忘れっぽくないよ。」

「だから、困ってんだよ。」

（風真くん、運動できるし、そんな心配する必要ないのにな？）

期末テスト前

「もうすぐ期末テストか……」

「なんだよ、暗い声出して。ちゃんと勉強してるのか？」

「してるよ。風真くんの『ちゃんと』とは違うかもしれないけど。」

「基準は自分で決めれば、いいんじゃないか。」

「風真くんは、バイトにお店のお手伝い、それにひとり暮らしで家事もあるのに、本当にすごいな。」

「シモンも、おじいちゃんの店も、ひとり暮らしも全部、俺が夢見てたことだから別にすごくはない。」

「……勉強も？」

「ああ、それが一番好きかも。」

「ええっ!?」

「そんな驚くことかよっ。……ったく。俺はおまえと同じ教室で 同じ授業を受けるのが夢だったんだ。なんか悪いかよ。」

「そっか……うれしいかも？」

「はいはい。」

（……でもテスト勉強と授業は違うと思うけどな……）

夏休み前

「もうすぐ夏休みだね。風真くんの予定は？」

「そうだな、せっかくだから夏休みにしかできないことしてみたいよな。」

「海水浴とか、キャンプとか……？」

「ふつー。」

「じゃあ風真くんは？」

「おまえと二人で、私服で学校に行ってみたい。これって普段、できないだろ？」

「先生に怒られちゃうよ……？」

「でもさ、想像してみろよ。私服の俺たち二人ってシチュエーション……なんか良くないか？」

「……うん、ちょっとふしぎな感じでドキドキするかも？」

「だろ？なんかいい方法ないかな……」

（風真くん、本気で考えてる？）

修学旅行前

「もうすぐ修学旅行。楽しみだね。」

「おまえと旅行なんて、初めてだよな！」

「う、うん……けど修学旅行だよ？」

「わかってるよ。あと、長崎のリサーチも完了。」

「ふふっ、バッチリだね。」

「だな。あとはおまえが風邪引かなければ、完璧。今日から夜更かし禁止。体調整えておくこと。いいな？」

「ふふっ、はい。気を付けます。」

「よし、じゃあ早く帰ろうぜ。」

（そっか……小学校、中学校の頃は行けなかったから、風真くんと一緒の修学旅行は初めてだ！）

文化祭前(通常)

「もうすぐ文化祭の本番だよ。」

「うちのクラス、気合入りすぎだよな。」

「ふふっ、うん。なんか本格的になってきちゃったね。」

「ああ、本番は楽しみだけどさ、準備期間もいいな。御影先生も堂々と作業着でいられるって喜んでたし。」

「ふふっ、御影先生らしいね。」

「俺、放課後にこうやって、みんなや先生とドタバタするの結構好きだ。本番はもうちょっとこの時間を楽しんでからがいいな。」

（風真くん、文化祭をすごく楽しんでいるみたい）

文化祭前(学園演劇)

「ふう…… 文化祭の学園演劇、上手くいくかな？」

「なんで、今から緊張してるんだよ。」

「だって、はば学の文化祭といったら学園演劇だよ？成功させたい。」

「わかったよ。おまえの気合は伝わった。俺もマジでやるよ。」

「うん、風真くんが本気出したら、すごいことになりそう！」

「ＯＫ！　この先何年も思い出すくらいの出来事にしような。成功でも失敗でもさ。」

（だから……失敗はしたくないよ？）

冬休み前

「もうすぐ冬休みだね。風真くんは何か予定ある？」

「何かって、おまえさ……冬休みは色々あると思いますけど？クリスマス、大晦日、初詣？」

「たしかに。冬休みは短いけど、大きなイベントがたくさんあるね。」

「それで？」

「ん？」

「ハァ……一緒に行こうとか、一緒に過ごそうとか？そういうの無いのかよ。」

「うん、いいね！」

「『いいね！』じゃねぇよ。おまえらしくはあるけど。」

（まずはクリスマスの準備からかな？充実した冬休みになるといいな……）

春休み前

「もうすぐ春休みだね。」

「そうか……もう進級か。ほんと、あっという間だったな。」

「うん、色々あったね。」

「おかげさまで、一切、退屈はしなかった。」

「風真くんのおかげでね？」

「なんでだよ。俺の方はもう少し落ち着いた一年でも、全然問題ないけど。」

「うん、それいいかも。進級したら、落ち着きをテーマにしようかな……」

「ずいぶん簡単に言うじゃん。」

（じゃあ、まずはファッションからかな……？）

卒業前

（発生なし？検証中）