抜け駆けデート会話 風真玲太

 

グループデート後

「◯◯。」

「あ、風真くん。どうしたの?」

「ちょっと忘れ物。」

「え?」

「おまえだよ。この後、もうちょっと付き合ってくれないか?」

「うん、もちろん!」

「だよな。」

「ふふ。これからどうするの?」

「これからが本当のデート。行くぞ?」

 

プラネタリウム

「静かだな。さっきまでの騒がしさが嘘みたいだ。」

「ふふっ。今日、にぎやかだったからね。」

「まあな、でもこういうところは、二人で来る場所だろ?だから、最初からやり直し。」

「もう……みんなに悪いよ?」

「そっか?それもまた、スパイスみたいなもんだろ。ただ、あいつら勘がいいとこあるからな。バレたらうるさい。」

「風真くん、すごく楽しんでるみたいだね。 えっ、どうしたの?」

「確認しただけ。やっぱり、おまえの目に映るのは、俺だけがいい。 ほら、始まるぞ。」

(ちょっとドキッとしたかも……)

 

プラネタリウム

「いいだろ、ここ。さすがに、はしゃぎすぎて疲れたと思ってさ。」

「ふふっ、休むためにきたの?」

「ああ、ゆっくり休める。それに、闇に紛れれば最悪の事態は免れる。」

「最悪って?」

「あいつらに見つかったら大騒ぎだからな。

「そしたら、またみんなで楽しめばいいよ。」

「はあ? ……ったく、ほんとわかってねぇのな。もう、あいつらとはしゃぐのは十分。今日一日、騒いだだろ?」

(開演ブザー)

「ほら、始まる。暗いから手、貸せよ。」

「うん、ありがとう。」

 

「はぁ、やっとだ。朝から一緒で、初めて手つなげた……」

(風真くん……?)

 

水族館:深海コーナー

「うん、ここでいい。」

「風真くんって、深海コーナー好きだったっけ?」

「場所は関係ない。大勢でいる時と二人きりでいる時、おまえの違いを楽しんでるんだ。」

「え?」

「二人きりだとこんなこともできる。」

「えっ!?」

「なんで、そんなに驚くんだよ。」

「だ、だって……」

「みんなでワイワイした後の二人きりって、やっぱりいいな?」

「もう、変な楽しみ方しないでよ!」

「悪い。ほら、時間がもったいないから、行くぞ。」

 

ボウリング

「よっし。」

「風真くん、スゴイ!! 連続ストライクだよ。」

「ああ、ていうかさ、あんだけ騒いだ後なのに、おまえ元気だな?」

「ふふっ、風真くんだって。」

「だな。よっし、じゃあ次もストライクだったら、ご褒美な。」

「ご褒美って?」

「そうだな。祝福と言えば……キスとか。」

「ええっ!?」

「じゃ、見とけよ!」

「ちょっと待って、風真くん?」

「…………」

「風真くん、えぇと……今の、わたしの番だったよ?」

「……あ。わりぃ。」

「ご褒美は無しだね?」

「えっ!」

 

ボウリング2

「まじか、7と10のスプリット。
 いやなのが2本残ったな。プロでも至難の業らしい。」

「でも風真くんなら、倒せちゃいそう。」

「お、おう。おまえが言うなら、やってみるか。」

「うん! 風真くん、がんばって!」

「邪魔なピンだな…… なんか、あいつら二人に見えてきた。
 ふぅー。今は俺たちだけの時間なんだっ!

「すごい!風真くん!」

「ああ、これで、二人きりだなっ。」

「え? 誰かいたの?」

「7と10のピン。ちょっとあいつらに見えてさ。俺たち二人の時間を邪魔するなって投げたら、倒れた。」

「ええ?二人に悪いよ。」

「そうか?邪魔する奴が悪いんだ。このイメージ投法でいくと、ハイスコア出せるかもしれないな。」

(風真くん…… もっと別の方法がいいと思うよ?)

 

近所の公園

「ここに来たかったの?」

「ああ。俺にとっては、ここも特別な場所。ほら、昔、よく遊んでただろ?」

「う、うん。」

「おまえ……わかりやすすぎ。いいよ。俺もぼんやり覚えてるだけだから。」

「そっか。」

「俺は向こうに行っちゃったから、こっちを懐かしんで思い出してたけど…… おまえにとってはこっちが日常だろ?忘れるのも当然だよ。」

「うん……」

「て、思えるようになったのは最近だけどな?」

「ふふっ。でも覚えてることもあるよ?」

「ああ。大切なことだけ覚えててくれれば十分。おまえと二人でこの街を歩くと、忘れてたことが浮かんでくる。」

「風真くん……」

「でも、あいつらと一緒じゃ無理だろ?だから、場所じゃなくて、おまえと二人でいることが重要。」

「これからも二人ではばたき市の色んなところ行きたいね。」

「だな。……ま、10回に1回くらい、あいつらも誘ってやるか。」

(ふふっ、みんなが聞いたら怒るかも?)

 

近所の公園2

「ここに来るとさ、なんか不思議な感覚になる。」

「そうなの?」

「ほら、昔はあの山とか、ほんとに大きく見えてただろ?」

「あの山の遊具のこと?そんな昔からあったかな……?」

「あっただろ?たしか、あの後ろに穴が1つ開いててさ、二人で入って、なんか話してたような?」

「風真くん、すごい!よく覚えてるね。」

「なんか、自信なくなってきた。ちょっと待ってろ、確かめてくる。」

「えっ。」

「…………」

「どうだったの?」

「穴、いっぱい開いてた。」

「ええっ?」

「そのうちのどこかに入って話したのか、そもそも俺の記憶違いか?これじゃ、おまえのこと言えないな?」

「ふふっ。」

(風真くんとの思い出探しみたいで、なんだか楽しいな)

 

商店街:ショッピング

「……そろそろのはずなんだけどな。」

「ん? 何が?」

店員「今から、半額タイムセールでーす!」

「え!? 半額セールだって!風真くん、知ってたの?」

「ああ、おまえお得、好きだろ?」

「……うん。風真くんは?」

「うーん? 好きかな。お得を喜んでるおまえを見るのが。」

「もう……だって同じ値段で2つ買えるんだよ!2倍お得。」

「そうだな。今日はデートも2回だし?」

「ふふ、そうだね。」

「今、おまえの笑顔を見られるのは俺だけだ。 ほら、2つ買うんだろ。」

「あ、待って!」

 

商店街:ショッピング2

「おまえに似合う服、選んでやる。」

「ホント?じゃあ、わたしも。」

「えっ、い、いいよ。……いやな予感しかしない。」

「ふふ……じゃあ、また後でね?」

「この、ポンチョとか風真くん似合いそう?」

「似合ってたまるか――
 ……って、あ
――

「わぁっ!?」

「しっ、見つかる。緊急事態。あいつら何してんだよ……」

「ちょっと……風真くん、苦しいよ。」

「あ、悪りぃ。大丈夫か?」

「何かあったの?」

「あいつらがいたんだ。二人そろって。」

「え?じゃあ、みんなで買い物する?」

「しない。俺は二人でいたいんだ。」

「そ、そっか。そうだよね。」

「そうだよねじゃねぇよ、ったく。ほら、さっきの続き。お互いの服、選ぶんだろ?」

「うん! いいの見つけたんだ。」

「ポンチョは、却下。」

「ええっ!?」

 

動物園:グッズショップ

「この時間から動物園って、斬新だよな。」

「ふふっ、そうかも。」

「グッズショップなら疲れないだろ?おまえ、買い物好きだしさ。」

「ありがとう。じゃあ、おみやげでも買おうか。」

「いいけど、おみやげって、誰にだよ?」

「えぇと……」

「まさか、あの二人にか?」

「うん、いいね!」

「良くない。おまえはいいかもしれないけどさ、こっちは大変なんだ。1週間、学校で質問攻め。」

「ふふっ、そうなの?じゃあ、今度はみんなで来ようね。」

「そうじゃないだろ? ……ったく、おみやげは俺たちに買えばいい。な?」

「う、うん。」

 

動物園:グッズショップ2

「ここなら、安心だろ?」

「安心?」

「そう、あいつらに気づかれないってこと。ん……」

「どうしたの?」

「なんか視線を感じた。」

「ふふっ、風真くん、みんなで遊びたいんじゃない?」

「そんなことない。やっとおまえと二人になれたんだ。」

「いた、いた。見つけたよ。」

「え? みんないたの?」

「ああ、ほら。 ここにいた。」

「ええー?ぬいぐるみ?」

「ああ、なんか物欲しそうにみんなこっち見てる。今日は二人きりになれない日かもな?」

(ふふっ、風真くん みんなのことが好きなんだな……)

 

遊園地:ナイトパレード

「なんとか間に合ったな。」

「うん!」

「ああ。急いで来た価値あるからな。」

「ふふ、そうだね。」

「わかってるのかよ?見る価値があるのは、おまえの喜んだ顔。」

「ええ?」

「そういう面白い顔もありだ。」

「もう。」

「悪い。でも、これに間に合えば、おまえのキラキラした顔が見られるのは本当。更にひとり占めだ。」

「風真くん……」

「ほら、見るのは俺じゃなくて、パレードだろ。」

(連れてきてくれてありがとう、風真くん)