校内出歩きイベント 氷室一紀編

 

氷室教頭のこと

氷室一紀

(今日は天気もいいし、屋上でお昼も良さそうだな)

「知らないよ。本人に聞けば?」

男子生徒「そう言うなよ、氷室ぉ~。」

「……? あ、氷室くん。」

「……どうも。」

「何かあったの?お友だち、すがりついてたけど……」

「ハァ……気にしないで。レーイチさんについて色々聞かれただけ。」

「氷室先生について?」

「そう。だいたいさ、親戚なら何でも知ってると思ったら大間違い。しかも……好きなタイプとか、そんな話、僕とするわけないだろ。」

「そ、そんなことまで聞かれたの?」

「本当、ナンセンス。君も忘れて。」

(ううーん……気になるといえば、気になるなぁ)

 

(今日もいい天気!さて、お弁当を――

男子生徒「あとは頼むぜ、氷室! ヒムロッチに確認しといてくれよ。」

「なっ…… そんなことできるわけないだろ!」

「……んん?」

「ハァ……」

「氷室先生になにを確認するの?」

「なんだ、君か…… またくだらない噂話だよ。レーイチさんが昔、伝説の教会に待つお姫様を迎えに行ったのは本当かどうか……」

「えっ!?」

「信じない。あくまで噂だから。」

「そ、そうだよね。」

「じゃなきゃ困る。僕も……変に意識するし。」

(氷室くんは親戚だもんね……無理もない)

 

(うーん、今日もいいお天気!お昼は屋上で――

男子生徒「ついに有力情報GETだな!氷室、サンキュー!」

「何がサンキューだよ……僕は知らないから。」

「氷室くん。もしかして、また氷室先生のこと?」

「ハァ…… ここにも好奇心旺盛なのがいた。」

「ええ? わたしは別に……」

「ふうん、興味ないんだ? レーイチさんの恋愛事情。」

「えっ、なにかわかったの?」

「目が輝いてる。」

「う……」

「レーイチさん本人には聞けないから、父さんに軽く聞いてみたんだ。こんな噂が出てるけど、何か知らないかって。そしたら――

「くだらない噂を流したのは君と、君の父親か。氷室一紀。」

「レーイチさん!?」

「 !? 」

「急遽、本日の放課後に家庭訪問からの三者面談を行う。」

「えっ……」

「異論は受け付けない。16時、職員室前で待っているように。以上。」

「サイアクだ……」

(氷室くん、ご愁傷さま……)

 

追われる身?

氷室一紀本多行

(よしっと、……そろそろ帰ろうかな)

「あ、氷室くん。」

「悪いけど、用があるなら後にして。」

「え?」

「あ、いたいた!ノリくーん!」

「……っ。」

「本多くん?」

「◯◯ちゃん、君もいたんだ!ノリくんに声かけたのに、気づいてくれなかったから追いかけてきたんだ!」

「気付いた上で逃げたんですよ……」

「で! いつにする?」

「だから、行きませんってば。」

「ええっ! なんで!?」

「何度も言ってるでしょう?僕はカップ麺でいいんです、以上!それじゃ。」

「ノリくんのわからずや~!待ってよー!」

(な、何が起きてるんだろう……?)

 

(よしっと、……そろそろ帰ろうかな)

「あ、本多くん。」

「しーっ。」

「え?」

「オレがここにいること、ナイショにしてね?」

「えっ、なんで隠れるの?」

「◯◯先輩。」

「あっ! 氷室くん……」

「今、誰かと話してた?」

「えぇと……独り言?」

「あ、そ。ところで、この後空いてる?もしよかったら――

「はい、はーい!オレも空いてる。」

「 !? 」

「ノリくん、放課後暇なんだ?だったら今日こそ行こうよ、ラーメン屋!◯◯ちゃん、君も一緒に!」

「えっ、わたしも?」

「ハァ、何から何まで勝手に……」

「みんなで食べれば、もっと美味しく感じられるよ?はい、レッツゴー!」

(急にお邪魔することになっちゃったけど……本多くんのお気に入りラーメン屋、ちょっと楽しみかも?)

 

(よし、そろそろ帰ろうかな。……あれ?)

「もう並びたくはないですね……」

「そなの?でも、美味しいお店に行列は付き物だよ?」

(この声は……)

「氷室くん、本多くん。ラーメン屋さんの話?」

「ええ、まあ。」

「うんうん、美味しかったよね。ノリくんも相当気に入ったみたいだよ?」

「そうなの?」

「ハァ……たまたま食べてたカップ麺が、あの店とのコラボ商品だったってだけで……」

「うんうん、お店の味が恋しくなって、食べてたんでしょ?紹介したオレとしては、チョー嬉しいな!」

「全否定はしませんよ。でも、僕はインスタントの方がいいです。」

「ええ、そなの?じゃあ、君と二人になるけど また、一緒に行こうね!」

「え、わたし? ふふっ、うん。もちろん。」

「えっ。
 インスタントの方が好きってだけで、店の味が嫌いなわけじゃない。」

「ん? ノリくんも?」

「……行きますよ。」

(ふふっ!この二人、案外いいコンビかも?)

 

ニックネーム

氷室一紀花椿みちる花椿ひかる

(えぇと、次の授業はなんだっけ……)

「とにかく、それはやめてください。 以上です。では。」

「エェッ!? 氷室ちゃん、待ってよ~!」

(ん? この声は……)

「みちるさん、ひかるさん。どうかしたの?」

「あ、マリィ。大丈夫、心配しないで。」

「氷室ちゃんにね、カワイイニックネーム提案したのに、断られちゃった。」

「あれはないと思う……氷室ちゃん、本当に困ってたもの。」

「へぇ。どんな呼び方?」

「『ヒムヒム』に『ヒムロン』、あと『イノリンリン』とか!」

「そ、それは……」

「ね? ちょっと違うと思うでしょ?」

「……ちょっと?」

「お姉ちゃんだってさー、『ヒムノリ』とか言ってたじゃん?ないわ~……」

「ひ、ヒムノリ……?」

「すごくいいじゃない。ね?」

(ど、どうだろう……?)

 

(そろそろ教室に戻らないと……)

「だ、だから呼びませんから! 以上です。では。」

「エェッ!? 氷室ちゃん、待ってよぉ!」

(ん?この声はもしや……)

「みちるさん、ひかるさん。えぇと、今度はどうしたの?」

「あっ、マリィ!聞いてよ~!」

「ヒカルがね、氷室ちゃんに私たちのことをもっとカワイく呼んでってお願いしたの。」

「だって氷室ちゃん、ひかるたちのことまとめて『花椿先輩』って呼ぶんだよ?」

「そうなんだ?」

「雑すぎだよねぇ。」

「とはいえ、あれはさすがに氷室ちゃんには厳しいよ……」

「いったい、どんな呼び名をお願いしたの?」

「『ピカリン』と『ミッチー』。ねっ、すっごくカワイイでしょ♡」

(うーん。氷室くんにはハードルが高い気がする……)

 

(えぇと、次の授業はなんだっけ……)

「ああもう、わかりました!呼べばいいんでしょう?」

「えっ、いいの!? やったぁ!」

(ん? この声はもしや……)

「どうもありがとう、氷室ちゃん。」

「みんな、どうしたの?」

「君……なんでここに。」

「聞いて、マリィ! イノリンリンがひかるのこと、『ピカリン』って呼んでくれるって!」

「えっ、そうなんだ? よかったね。」

「一回だけですから。そこ、忘れないで下さい。それに、一回呼んだらその『イノリンリン』とかいう間抜けな呼び名もナシです。いいですね?」

「約束は約束だもの。ね?ヒカル。」

「ウン!ひかるに二言はないよ?」

「わかりました。では……」

「あ、ちょっと待って!どうせ呼んでもらうなら、もっとカワイイのがいいかな~?」

「ええ?」

「カワイイのって、たとえばどんなの?」

「うーん…… 『ピカっち』? 『ピカたん』?」

「『ピカりーぬ』はどう?」

「それ、マジカワイイ♡ さっすがお姉ちゃん!」

「なっ……付き合ってられません! 何が『ピカりーぬ』ですか!」

「あっ! 早速、呼んでくれた!やったぁ♪」

「……は!? 今のは別に呼んだわけじゃないです。ただ復唱しただけで――

「じゃあ、きちんと呼び直してくれるってこと?」

「えっ! いや!? そういうワケじゃ……!」

(さすがの氷室くんも、みちるさんとひかるさんには敵わないみたい?)

 

風真くんへの意識

氷室一紀風真玲太

(えぇと、次の授業なんだっけ……)

「あ……」

「あ、氷室くん。これから体育?」

「そう。君は?」

「わたしは、たしか――

「◯◯。」

「あ、風真くん。どうしたの?」

「どうって……あー、ほら、次教室移動だろ?置いてくぞ。
 ……ああ、イノリいたのか。」

「気付いてたでしょう。」

「何のことだか? ほら、行くぞー。」

「はあい!……氷室くん、またね?」

リョータ先輩に――

「え?」

「よろしく伝えて下さい。では。」

「えっ!?」

(氷室くん、怒ってた……?)

 

(日誌を提出したら終わりっと……)

「◯◯。」

「あ、風真くん。もう帰るの?」

「ああ。おまえの仕事待ち。」

「そっか、ありがとう。もう少しだから……」

「はいはい、お待ちしてまーす。」

「◯◯先輩。」

「……はい?」

「日誌、出しに行くんでしょ? 小次郎先生、今日は早めに帰るらしいけど。」

「えっ!?」

「僕も用あるから、一緒に行くよ。
 リョータ先輩はここで待っててください。」

「俺も行くよ。」

「なんでわざわざ三人で?」

「なんで二人で行くんだよ。」

「だから、僕は用があるからですよ。」

「俺も今 用ができたんだ。」

(……んん?)

 

(あっ、そうだ。帰る前に御影先生に頼まれたノート、職員室まで運ばなきゃ!)

「◯◯。」

「◯◯先輩。」

「え…… イノリ?」

「え、リョータ先輩……?」

「二人とも…… 一緒に帰るの?」

「なんで?」

「ええ、どうして……
 で、君は何をしてるわけ?」

「御影先生に用事頼まれたの忘れてて、これから教室に戻らないと。」

「手伝う。いいか、そんなの先に言っとけよ。」

「あっ、僕が手伝いますから。」

「なんでだよ? おまえ、クラスも学年も違うだろ。」

「それでも手伝ったっていいですよね?」

「……ったく、早く行くぞ。」

「わかってますよ。」

(えぇと……二人で手伝ってくれるんだね……?)