校内出歩きイベント 御影小次郎編

 

先生の振る舞い

御影小次郎

(次は生物、御影先生の授業だ。何か準備のお手伝いあるかな……)

(ノック)

「おう、入れ~。」

「失礼します。」

「◯◯、どうした?」

「次の生物の授業、準備のお手伝いありますか?」

「おう、ありがとうな。でも特にないな。」

「そうですか……じゃあ、失礼します。」

「おう、待て待て。せっかく来てくれたんだ。お茶でも出すよ。」

「ふふっ。なんだか御影先生のお家みたいですね。」

「まあ、そんなもんだ。ちょっと待ってろ。」

「御影先生、ごちそう様です。予鈴鳴りましたよ。」

「お構いもできませんで。じゃ、行こうか。」

「今日は理科室じゃなくて、教室ですけど……」

「そうだな。」

「その格好だと、また氷室先生に叱られちゃいますよ?」

「おお、そうだった!あぶねぇー。 悪い。先に行っててくれ。スーツに着替えてから行く。」

「ふふっ、はい。」

(お手伝いはできなかったけど、様子を見に来てよかった。また、氷室先生に叱られたら大変だしね)

 

(次は御影先生の授業だ。何か準備することあるかな……理科準備室に行ってみよう)

(ノック)

「おう、入れ~。」

「失礼します。」

「いらっしゃい。」

「何か授業の準備ありますか?」

「おお、ありがとうな。今日は着替えも終わってるし、完璧だ。どうだ?」

「ふふっ、はい。決まってます。」

「おお、そっか。おまえもこっちの方がいいのか?」

「えぇと、ツナギ姿も御影先生らしくて、いいと思いますよ。」

「おう、よーくわかってるな。スーツとつなぎの緩急がいいんだ。これがわかるおまえは大人だ。」

「朝もツナギでバイク通勤ですよね?」

「ああ、そのまま園芸部の畑に直行できるし、効率いいだろ?」

「スーツはここに置いてあるんですか?」

「そう、置きスーツ。 よっし、今日は一緒に教室まで行けるな。」

「ふふっ、はい。」

 

(次は御影先生の授業だ。理科準備室に行ってみよう)

(ノック)

「あ、はい……」

「御影先生?」

「お、おう。いらっしゃい……」

「御影先生?その服……」

「スーツ、クリーニング出したの忘れてた……」

「ええ!?」

「これ以外はツナギしかない。」

「え?次は理科室で授業ですから、御影先生、いつもツナギじゃないですか。」

「へっ、あっ、そうか……助かった…… おまえが来てくれて助かったよ、このまま私服で教室行くとこだった。」

「ふふっ、よかったです。」

「命拾いしたぜ。」

(でも、私服の御影先生もかっこよかったかも)

 

特別な授業

御影小次郎柊夜ノ介

(次の授業は移動教室で、理科室だ。早めに行ってみよう)

 

(あ、もう御影先生、来ている。一緒にいるのは……)

「ああ、あなたでしたか。もう始業時間になるんですね。話し込んでしまった。」

「夜ノ介の好奇心が刺激されたんだ。いいじゃねぇか。」

「はい、興味深いです。」

「柊くん、生物や化学に興味があったの?」

「ずいぶんと意外そうですけど?」

「えっ、そんなことないよ?」

「◯◯。夜ノ介の興味の範囲は広いぞー。今はあのスライド式黒板だ。」

「黒板?」

「残念ですが生物の勉強ではなく、あの黒板、壁面を有効利用できて効率的。優れモノです。 もう予鈴ですね。失礼します。」

「おう、またな。」

「柊くん、すごく楽しそうでしたね。」

「ああ、あいつが笑ってくれると、なんかホッとするんだよな。」

「はい。柊くんはいつも忙しそうですから。」

「あんなに喜ぶなら今度、作ってやるかな、黒板。」

「ええ?」

「俺たちのクラスの黒板もスライド式にした方がいいだろ?」

(ふふっ、授業じゃなくて、黒板に興味を持った柊くんの話し相手になってたんだ。御影先生、優しいな)

 

(次の授業は理科室だよね。もう、御影先生いるかな?早めに行ってみよう)

 

「あ、御影先生と柊くんもいる!」

「◯◯、早いじゃねぇか。」

「御影先生と柊くんは黒板のお話ですか?」

「はい、本当に優れモノです。毎週この後は、あなたのクラスが理科室なんですね。」

「そういうことだ。授業の内容もほぼ同じだから、俺も楽々。」

「効率的な時間割ですね。あの黒板と一緒。」

「でも黒板は毎回消されてますよ?」

「そこまでは楽しないよ。板書するタイミングも重要なんだ。」

「それわかります。同じ舞台でも、セリフの間やタイミングはお客様の反応で変えたいものです。」

「なるほどなぁ。教師と役者は意外と近いのかもな。」

「生徒がお客様ということですね。」

「ふふっ、面白いですね。」

(チャイム)

「そろそろ開演の時間ですよ、御影先生。」

「おお、教壇が俺の舞台だな。始めるか?」

「はい。」

「じゃあ、僕は別の会場でお客様になってきますね。」

 

「そろそろ『生物基礎』開幕だ。」

男子生徒「開幕? みかげっち、どうしたの?」

(ふふっ!御影先生、役者さんになったつもりみたい?)

 

(次の授業は理科室だよね。御影先生と柊くんいるかな?)

「おお、来たな。」

「待っていましたよ。」

「ふふっ、柊くんのクラスが前の授業だったんですよね。」

「ああ、授業内容は同じだが、詳細は秘密だ。な、夜ノ介。」

「ええ。今日の授業はいつも以上に、最高のエンターテインメントでした。」

「座長のお墨付きだ。」

「へぇ! すごく楽しみです。」

「ふふ、御影先生、お客様のハードルが上がってますよ。」

「おう、夜ノ介のアドバイス通りに、掴みを重視していく。お、今回も満員御礼だ。」

「御影先生、それでは。あなたは楽しんでください。」

「うん、またね。」

 

「よーし、今日は、園芸部のハウスから野菜を採ってきて、顕微鏡で組織を観察だ。 その後は……サラダで美味しくいただこうぜ!」

女子生徒「すごい、サラダバーみたい!」

男子生徒「みかげっち、オレ、野菜苦手なんだけどー。」

「そういうやつにこそ、俺の野菜を食わせたいんだ。好きな野菜採りに行くぞ。」

(すごい、生物の授業がサラダバーみたい!ふふっ、掴みもバッチリだ)

 

ファッションチェック

御影小次郎花椿みちる花椿ひかる

(ふぅ……いいお天気。ベンチでひなたぼっこしよう)

「マリィ、こっちこっち!」

「ひかるさん、みちるさん。あれ……御影先生も?」

「今、御影先生のファッションについて、お話ししてたところ。」

「そうそう、マリィも激辛評論しちゃって!」

「ええ?」

「激辛の必要はねぇだろ?それにこれはファッションじゃなくてだな――

「うーん、やっぱりナイよ。」

「そうね。オールインワンはいいと思うけど、手袋がだめね。」

「これは軍手、それと作業着だ。」

「ふふっ。」

「なに、笑ってんだよ。」

「マリィはアリなの?御影先生のファッション。」

「エッ、そうなの?」

「えぇと……御影先生らしくて、いいかなと思うけど……」

「けど?」

「けど、このファッションでデートはダメでしょ?」

「うーん、それは……」

「ふふん。デートじゃ、ビシッと決めるぜ?」

「ダメダメ。全然説得力なーい。」

「だよね。その格好で言われても。」

「おお?試してみるか、お嬢ちゃんたち。で、誰から俺とデートすんだ?」

「エ~ッ?」

「えっ。」

「ええ!?」

「はははっ。じゃあ、順番決まったら教えろよ~?」

「逃げた。まさかあんな手を打ってくるなんて……やるな、御影先生。」

「……うん。不意打ちはズルい。」

(びっくりした……)

 

(今日もいいお天気。……あれ、午後の授業はなんだったっけ?)

「あっ。マリィ、こっち!」

「ん?ひかるさん?」

「こないだと同じパターンだな?」

「今日は逃がさないから。」

「別に逃げてないだろ。で、なんだよ?」

「今日はそのヘアスタイルについて。」

「そう、そこそこ!もう、ナゾだらけ。」

「御影先生の髪型か……うん、確かに気になるかも。」

「なんだなんだ。おまえら、興味津々じゃねぇか。」

「セットには、どのくらいかけてますか。」

「お、おう。セットの時間か……そうだな、15分くらいかな?」

「へー、けっこう早いんだ~?もっと時間かけてると思った。」

「全然。ほとんど形状記憶だ。乾かせば、仕上がりに近い。」

「それはうらやましいかも……」

「う、うん。」

「あっ、でもさ、御影先生ってバイク通勤じゃん?ヘルメットで崩れないの?」

「大丈夫。朝、学校来て、園芸部の畑で水やりしてるうちに、元通りだ。俺の髪は植物と一緒。クタっとしてても、水あげればパリッとする。」

「すごい……」

「水あげる……?」

「ほら、授業始まるぞ。またな。」

「……ねえ。ひかるたちさ、上手くあしらわれてない?」

「たぶん。植物と一緒なんて、あるわけない。」

(二人とも、すごく疑ってるみたい?)

 

(さて、次の授業は…… あっ、あそこにいるの――

 

「この三人ということは……」

「そういうこと。」

「今日は逃がさないんだから!」

「なんか怖ぇな。今日はパリッとスーツ着てるし、問題ないだろ?」

「ええ、そうですね。問題はないけど……」

「うーん、逆に問題なくてつまんない。ねえ、マリィ?」

「えっ、うーん……先生らしくていいと思うけど……」

「そう、普通の先生って感じ。」

「ねえ、フツーでいいの?御影先生。」

「ん?問題ないのはいいけどさ、普通とか、つまんないのは困るな。」

「でしょ?御影先生は普通じゃだめ。」

「それなら、ひかるたちに任せて!御影先生にピッタリのファッション、おじさまに聞いてみるから♪」

「……おじさま?」

「ええっ! GORO先生に!?」

「おお、世界的ファッションリーダーの花椿吾郎先生か。そりゃ凄い。楽しみだ。」

「私たちも楽しみ。」

「うん、きっとおじさま、御影先生のこと、気に入ると思う♡ ねっ、マリィ?」

「う、うん。」

(GORO先生のファッションってかなり独創的だったよね……?御影先生、大丈夫かな……)

 

氷室教頭の評価

御影小次郎氷室零一

(あ、もう帰らないと……日直の仕事、時間かかっちゃったな)

「すみません。以後、気を付けます……」

(え、今の声は……御影先生?)

「御影先生、あなたは自分を過小評価している。」

「はい?」

「ん? まだ残っていたのか。」

「あ、えぇと、すみません……」

「おう、日直、ご苦労さんだったな。」

「はい……」

「御影先生は生徒が日直の仕事を終えるのを待っていただけのようですね。……私の小言は的外れでした。」

「え……」

「…………」

「とは言え、その服装で教室にいるのは控えるように。以上。」

 

「すみません。わたしの日直が終わるの、待っててくれたんですね。」

「なんで一生懸命日直やってんのに謝るんだよ。」

「だって、そのせいで氷室先生に怒られてしまったんですよね。」

「怒られんのはいつものことだろ?それにこの格好で小言言われただけだよ。」

「御影先生……」

「ほら、もう帰れ。気を付けてな。」

(御影先生、優しいな……)

 

(さて、そろそろ帰ろうかな……)

「や、やめてください。」

(えっ? 今の声は、御影先生だよね?どうしたんだろう……?)

「…………! そんなに心配か?」

「え?」

「出てきなさい。」

「……は、はい。すみません。」

 

「おい、どうしたんだ?」

「えぇと、御影先生の声がしたので……」

「……きみたちの御影先生を叱っているわけではない。安心しなさい。」

「はははっ。なんだ心配してくれたのかよ。ありがとうな。俺だって、いつも怒られてるだけじゃないんだぜ?」

「はぁ……確かに褒めていた。」

「え!?」

「こら、驚きすぎだろ。」

「あ、ごめんなさい。」

「私の理想の教師像ではないが……」

「氷室教頭? どうかしたんですか?」

「どうもしない。失礼。」

 

「よかったですね。褒めてもらったんですか?」

「なんか調子狂っちまうよ。でも、たまにはいいもんだな。じゃあ、気を付けて帰れよ。」

(御影先生、うれしそう! なんだか、わたしまでうれしいな!)

 

(次は、生物の授業だ)

女子生徒A「ええーっ、なんで教頭先生が?」

男子生徒A「次、生物だろ? みかげっちは?」

「……静粛に。御影先生に話があるので、ここで待たせてもらう。」

男子生徒B「みかげっち、なんかやらかしたのかな?」

女子生徒B「教頭先生に怒られちゃうの?かわいそうだよ。」

(ええ?こないだは御影先生、褒められてたし大丈夫だよね……?)

「おう、今日はやけに静かじゃね――
 げっ、氷室教頭!?」

「御影先生、お話が。」

「ああ、そうですか。じゃあ、外で――

「ここで結構。」

「う……」

「先日、保護者の方々に行ったアンケートで、御影先生への感謝のお声を多数いただきました。」

「え?」

「学園を代表して、私から御影先生に、お礼を申し上げます。ありがとう。」

男子生徒A「みかげっち、すげぇじゃん!」

女子生徒A「うん、やったあ!」

「きみたちの担任の先生は、生徒だけでなく、ご父兄にも評価されている。誇っていい。」

「御影先生、すごいですね!」

男子生徒B「みかげっち、最高!」

「……以上。では、切り替えて授業を。」

「あ、はい……
 ありがとな。みんなのおかげだ。こりゃ、次の査定が楽しみだぜ!」

男子生徒A「みかげっち、給料あがったらおごって!」

「おう。ひとり一回、学食おごってやる。」

(氷室先生、わざわざみんなの前で……御影先生、よかったですね!)