校内出歩きイベント 颯砂希編

 

読書?

颯砂希

(そうだ、まだ休み時間あるし 図書室行ってみようかな……?)

図書委員「ごめんなさい。ひとり20冊までなんで、2冊多いです。」

「あ、そっか、すみません。2冊返してくる。」

(へぇ……20冊も借りる人いるんだ……)

 

「よう、きみも本借りにきた?」

「うん。……颯砂くんも?」

「ああ。今さ、珍しいみたいな顔したよな?」

「そ、そんなことないよ。どんな本借りたの?」

「今、返してきたとこ。きみは?」

「人気ランキング上位のを借りようかなって。」

「いいじゃん。でも、人気だから早くいかないと借りられちゃうぞ。」

「うん!」

「じゃな。」

 

「2冊返したんで、それでお願いします。」

図書委員「はい、20冊で。貸し出し期間は2週間です。」

(ええっ!? 20冊借りてたの、颯砂くんだったんだ!)

 

(そうだ、まだ時間あるし、図書室に本を返しに行こう)

図書委員「全部で20冊ですね。」

「今回はピッタリ。」

「あ、颯砂くんだ。 颯砂くん、たくさん借りたね?」

「おお、きみか。知ってた?ここ上限20冊なんだぜ。」

「うん。颯砂くん、前にも20冊借りてたでしょ。読書家なんだね?」

「ん?そんなんじゃないよ。」

「え?」

ダンベル替わりに鞄に入れてんの。これで、通学中も鍛えられる。」

「ええ!?」

「オレにしちゃ、頭脳プレイだろ?じゃな。」

(颯砂くん……本の使い方間違ってるよ?)

 

(まだ休み時間あるし、図書室に行ってみようかな?)

図書委員「『運動学習理論の実践』は来月入荷予定です。」

「そうですか……」

(颯砂くんだ。『運動学習理論の実践』……)

「よう、きみか。ランキング上位の本、借りられた?」

「颯砂くんは『運動学習理論の実践』、借りられなかったみたいだね?」

「なんだ、聞いてたのかよ?」

ダンベル替わりなら、何でもいいんじゃ?」

「陸上バカでも、ちょっとは頭使うんだよ。」

「でも、難しそうな本だね。」

「うん、トレーニングで体に負荷かけたらちゃんと休めとか、ちゃんと食べろってのが難しく書いてある。ま、こういう本に書いてあるとさ、やってることを裏付けられるみたいでちょっとホッとすんだ。」

「へぇ……颯砂くんってすごいな。」

「そう?ま、ダンベルみたいなもんだよ。じゃな。」

「ふふっ、うん。がんばってね!」

(颯砂くんはすごいな……頭も体も全部使ってがんばってるんだ)

 

温泉同好会

颯砂希柊夜ノ介

(えーと、次の授業は……)

「いいよな、東北の温泉。」

「ええ、それも冬がいいです。」

「颯砂くんと柊くん。二人とも温泉好きなの?」

「よう。きみも温泉同好会入る?」

「歓迎しますよ。」

「はば学に、温泉同好会なんてあった?」

「さっきできたばっかり。な、副会長?」

「はい。温泉好きが二人揃いました。あなたは?」

「えぇと……お風呂は好きだけど……」

「じゃあ、迷うことないだろ。決まり。」

「いつかみんなで温泉巡りできたら素敵ですね。」

「最高じゃん。それも部費で。」

(それは難しいと思う……)

 

(次の授業は教室移動だったよね……早めに戻ろうっと)

「へぇ、いいな。全国温泉紀行か。」

「ええ、お客様からの頂きものです。」

(あ、颯砂くんと柊くんだ。ということは……)

「もしかして、温泉同好会?」

「おお、これで全員そろったな。」

「えっ、わたしも?」

「はい。あなたは僕と同じ副会長です。」

「ふふっ。」

「あなたにも、お裾分けしますね。お客様からの頂きもの。自宅でも楽しめる天然湯の花です。」

「これは、あの有名温泉地の……いいの?」

「はい、もうこれで完全に入会だな。」

「ええ、逃がしませんよ?」

「じゃあ、次の会はこの湯の花の感想を言い合おう。」

「ふふっ、わかりました。柊くん、ありがとうね。」

「どういたしまして。では。」

(なんだか上手く乗せられちゃったけど……楽しそうかも、温泉同好会!)

 

(さてと、次の授業は……)

「副会長、いいとこに来た。」

「副会長って、わたし? ……ってことは……」

「ええ、温泉同好会。でもさっそく存続の危機です。」

「えっ、どうしたの?」

「御影先生に相談したんだ。部費で温泉に行きたいってさ。笑ってくれたけど、厳しそう。」

「同好会として学校に公認してもらう必要があって、ずいぶんと難しいそうです。」

「まずは年間活動計画を提示するんだって。」

「そっか…… 二人ともすごく忙しいもんね……」

「ええ、生徒会もありますし。劇団の仕事は突発的なことも多いので、僕は難しそう。」

「オレも。きみには悪いんだけど、温泉同好会は解散かな。」

「うん、仕方ないよ。」

「………… そうだ!
 温泉は無理だけどさ、みんなで温水プールでも行こうぜ?」

「……あっ、賛成。」

「えっ?」

「よっし決まり。プールに湯の花でも入れられたらいいんだけどな。」

「うーん、大分薄まってしまいますよ。」

(二人とも…… そういう問題じゃないよ)

 

ギャップ萌え

颯砂希花椿みちる花椿ひかる

(あ、みちるさんとひかるさんと……颯砂くん?)

「三人で何のお話?」

「マリィ!いいとこにきた~♪」

「ふふ。ここはマリィの意見も聞いておかないとね?」

「もう、いいよ。」

「どうしたの?」

「颯砂くんのギャップ萌えのこと。」

「そう。颯砂くんはギャップ萌えの権化なの。」

「……ギャップ萌え?」

「ダメだよ、マリィ。颯砂くんを語るにはこれは外せないんだから。」

「そう。大柄で屈強なイメージがあるのに、お化けが苦手とか。」

「ちょっとみちるさん、誰から聞いたか知らないけどさ、別に苦手じゃないって。」

「ふふ、いいじゃない?そこが魅力って言ってるの。強そうな人が怖がりだなんて、カワイイでしょ。」

「それがギャップか……」

「そう、他にもたくさんあるよ。例えば――

「もういいって。ほら、授業始まるよ。」

「本人は無意識みたいだねぇ。」

「ふふ、だからいいの。」

(なるほど、颯砂くんのギャップか……)

 

(あ、みちるさんとひかるさんと……颯砂くん?)

「三人で何のお話?」

「きみか、いいとこにきた。」

「たしかに。ここはマリィの意見も聞いておかないと。」

「また、ギャップ萌えの話?」

「うん。今日はひかるさんのギャップ。」

「ギャップになるのかなぁ?ひかるがハンバーガー大好きってコト。」

「同じ環境で育ってきたけど、私はハンバーガーに思い入れはないし。」

「ひかるさんの好物っていったら、高級フランス料理って感じじゃん?それがハンバーガーだよ?」

「だからどーしてギャップなの?食べやすいし、種類はいっぱいあるしさ。みんなもきっと大好きでしょ?」

「ギャップだ……」

「マリィまで……わかんない、ひかるにはわかんない……」

「ひかるさんが街角でハンバーガー食べてたら、逆にカッコいいもんな。」

(なるほど。それがひかるさんのギャップ萌えか……)

 

(あ、みちるさんとひかるさんと……颯砂くん?)

「あ、三人っていうことはギャップ萌えのお話?」

「そう。今日はお姉ちゃんの番!」

「やめて、二人とも。」

「へぇ、みちるさんにも見た目と違うところがあるのか。どんなとこ?」

「うーん…… ひかるには、そういうのも含めてお姉ちゃんだから。難しいんだよねぇ。」

「無理に考えるものじゃないし。」

「あ!少女漫画――

「ヒカル、ダメ。」

「なんでよ~。」

「でも、みちるさんが少女漫画が好きでも、そんなにギャップじゃないけどな。」

「うん。みちるさんもひかるさんも女の子らしいものが好きって感じだから。」

「もうやめましょ、この話は。」

「ふーん。そういう照れる感じは新鮮かな?」

「え……? 授業が始まる。じゃ、私はこれで。」

 

「みちるさん、意外と照れ屋? でも、ギャップってほどじゃないよな。」

「ふふっ、そうかも?」

「で、一番難しいのがきみ。ギャップがないっていうか、ギャップばかりっていうか……」

(???)

 

氷室くんのコーチ

颯砂希氷室一紀

(あれ……あそこいるの、颯砂くんと氷室くんだよね?)

「こんにちは。二人でなんのお話し中?」

「イノリ、オレたち二人が話してるの珍しいって顔されてるよ?」

「そのようですね。」

「えっ?そんなことないけど……」

「けど?」

「ははっ。イノリ、いじめんな。こう見えてさ、オレたちって結構共通点あるんだ。」

「そうなの?」

「なんでそんなに意外そうなの?」

「オレもイノリも、ひとりの時間が好きとかさ。」

「ええ。 ノゾム先輩が陸上競技に集中している時間って、ずっとひとりですからね。」

「イノリがサーフボードに乗ってる時間もな。」

「そっか……全然違うスポーツだけど、似ているとこがあるんだね。」

「そう。だから、メンタル面とか考え方とか参考になる。」

「僕のなんか、ノゾム先輩の足元にも及びませんけど。」

「いや、波に乗ると同時に、ねじ伏せるようなテクニックを発揮するって、聞いてて面白いよ。」

「違う競技でも共通点を見つけて学ぶって、二人ともすごいな……」

「うん、近い競技より逆に素直に聞けるのかもな。」

「ええ。また話、聞かせてください。」

「オレ、陸上競技に関しては頭固いから、イノリみたいなやつの意見の方が受け入れられんだ。あいつもそうだと思う。お互い頑固なんだろうな。じゃあ。」

(二人ともすごくいい関係なんだな……)

 

(そろそろ昼休みもおわり……次の授業は――

「そんなの無理ですよ。」

「無理なことないって。」

(今の声は……)

「颯砂くん、氷室くん! 二人ともどうかしたの?」

「おお、きみか。」

「どうかしたって何?」

「無理って声が聞こえたから……」

「ああ、イノリにコーチを頼んだら断られたんだ。」

「ええ?コーチって、陸上の?」

「そう。無理に決まってるでしょ?」

「テクニックじゃなくて、感じたことをそのまま聞きたい。」

「それって、何の役に立つんですか?」

「自分の考えだけで8種目やってると、まったく関係ない外の意見が欲しくなるんだ。」

「……わかりました。そういうことなら。」

「サンキュ、頼むよ。」

(颯砂くんと氷室くんって、友だちみたいで、兄弟みたいで、ライバルみたい? 男の子の関係って、すごく不思議)

 

(そろそろ昼休みも終わり……次の授業は体育だ)

「なるほど。その感覚は気にしたことなかったよ。」

陸上競技に必要かわかりませんけど。ほら昔、裸足のマラソン選手がいたって聞いたことありますし。」

 

「よう。次、体育?」

「うん。二人は?」

「イノリにアドバイスもらってた。」

「すごい。本当に氷室くんが、颯砂くんのコーチ?」

「そんなんじゃないから。僕が感じたことを、勝手に言わせてもらっただけ。」

「オレがその意見をどうしようと自由って約束でね。 イノリの サーフィンは足の裏に目があるっていうの、最高のアドバイスだったよ。」

「そんなイメージでやってるってだけです。」

「そういう感覚みたいなのって、やってるヤツの言葉だから響くんだ。オレもスパイクから感じるグラウンドの感覚を大事にしてみるよ。」

「はい。いつかノゾム先輩も、海来てくださいよ。じゃあ。」

「氷室くん、すごくうれしそうだったね。」

「あいつのいいところだよ。照れて、最初は引いてるけど、結局最後まで付き合ってくれるんだ。」

「そっか……颯砂くんと氷室くんはわかりあってるんだね。すごいな……」

「まあ、男二人だけなら単純だから?」

(……二人だけなら?どういう意味だろう……?)