校内出歩きイベント 風真玲太編

 

授業中の主人公

風真玲太

(ふぅ……午後の授業は、眠くなっちゃうな……)

「◯◯。さっきの授業、眠そうだったな?」

「えっ!風真くん、見てたの?」

「ガクってなってた。3回も。」

「……数えてたの?」

「実は俺も眠くてさ、眠気覚ましに、おまえ見てた。」

「なんでわたし?」

「おまえの真剣な顔見たら気合い入るかなって思ったらさ、眠そうな顔してた。」

「う……」

「でも、おかしくて目は覚めたよ。次、睡魔が来たら、またよろしく。」

(……眠気には注意しなきゃ!)

 

(この授業が終わったらお昼だ。もうお腹空いちゃったな……)

(グゥ~)

(お、お腹鳴っちゃった! ……けど、誰にも聞こえてなさそう?)

 

「◯◯、どうした。具合悪いのか?」

「あ、風真くん。どうして?」

「授業中、顔赤くして下向いてたから。」

「ええっ? 見てたの?」

「そりゃ、具合悪そうだったら、気になるだろ?」

「あ、ありがとう。平気なんだけど、ちょっと……」

「ちょっと?」

「お腹が……」

「痛いのか?」

「ううん、えーと……」

「ん? ……ああそっか、じゃあ急いで学食行くぞ。」

「え……」

 

「早く来いよ。」

(風真くん、察してくれた? お腹鳴っちゃったことは、黙ってようっと……)

 

「次の授業は危ない。」

「あ、風真くん。なにが危ないの?」

「学食で満足して、午後の授業だろ?絶対、睡魔がくる。」

「そうかな?今のところ大丈夫そうだけど……」

「もしもの時はこれを見ること。」

「……手紙?」

「いや、眠気覚ましの薬みたいなもん。」

男子生徒「着席ー。」

「もしもの時だ。じゃな。」

「???」

 

(……風真くんがくれたメモ、何が書いてあるんだろう?眠くはないけど、見ちゃおうっと)

(えぇと…… “俺を見ろ” ? ……って風真くん、こっち見て笑ってる!)

教師「風真、楽しそうだな。そんなに古文が好きか?」

「あ、はい。……すみません。」

生徒たち「あはは!」

 

「◯◯、ちょっと早いよ。」

「え?」

「もっと後かと思ったら、すぐ見ただろ?思わず笑っちゃったよ。」

「あ、あのメモのこと? 風真くんを見ろって、どういうことだったの?」

「面白い顔でもして、笑わせてやるつもりだったのにさ、まんまとこっちが笑っちゃったよ。おまえには負ける。」

(わたし、笑わせてないのに…… でも、おかげで助かっちゃったかも!)

 

ひとり暮らしのテクニック

風真玲太御影小次郎

「それ、便利ですね。」

(ん?今の声は……)

「風真くんに御影先生。二人でなんのお話ですか?」

「男のひとり暮らし講座だ。」

「御影先生はひとり暮らし歴が長いからさ、裏技を教えてもらってる。」

「裏技?たとえばどんなの?」

「食パンは買ってきたら、すぐ冷凍。」

「それは基本だな。一斤買っちゃうと、食べ終わるまでに悪くなる。」

「なるほど……ひとり暮らしならではですね。」

「まずは基礎編からだな、きちんとメモっとけ?」

「はい、よろしくお願いします。」

 

(ふふっ。風真くん、真剣に聞いてる。ひとり暮らしって大変そうだもんね……)

「まず、服はなるべく洗濯しない。」

(ええっ!?)

 

「なるほど、画期的ですね。」

(ん?今の声は……)

「風真くん、御影先生! 男のひとり暮らし講座ですか?」

「◯◯、おまえも受講するか?今日はいかに掃除をサボるかだ。」

「えーと……大丈夫そうです。」

「御影先生、それお願いします。俺の家広すぎて、掃除が大変なんですよ。」

「まずはいかに汚さないかだ。そうすれば掃除も必要ない。掃除機かければすぐにわかるだろ?家の汚れのほとんどが、ホコリだ。」

「確かにそうですね。」

「だろ?ホコリは掃除機をかけると舞い上がる。つまり、一番の掃除は――掃除をしないことだ。」

「目からうろこですね……」

(ううーん……)

 

「なるほど、究極のおしゃれですね。」

(ん?今の声は……)

「風真くん、御影先生。今日も、男のひとり暮らし講座ですか?」

「ああ、今日で最終回。風真も卒業だ。おまえは新規受講希望か?」

「やめとけ。おまえには刺激が強すぎる。」

「刺激って……」

「ま、女子には無理だな。」

 

「……いったい、何を教えてもらったの?」

「寝る時は素っ裸がいいってさ。」

「ええっ!? ……それが、究極のおしゃれ?」

「『生身で勝負だ』とか言ってた。」

「ええ……? まさか、風真くんも?」

「俺はこれからもパジャマ派だ。」

(ふぅ、とりあえずよかった……のかな?)

 

 

ふたりを見る花椿姉妹

風真玲太花椿みちる花椿ひかる

「マリィ、いる~?」

「あ、ひかるさん、みちるさん。」

「……あれ?今日は風真くん、一緒じゃないの?」

「ほらね。こういう日もあるの。」

「なんだよ、それ。」

「あ、風真くん。」

「ほら、来た!ひかるの勝ちでしょ?」

「ダメ、ヒカル。最初はマリィひとりだったんだから、私の勝ち。」

「おい、何言ってんだよ?」

「うん、なんのこと?」

「休み時間にマリィに会いに行くと、風真くんが現れる確率が高いって話。」

「で、今日はいないかと思ったら……現れた!」

「人を何だと思ってんだよ。……ったく。」

「え~、なんで怒ってんの?」

「まあ、ああなるところまで想定内。」

「えーと……二人は、なにか話があったの?」

「ううん、ないよ?」

(本当に風真くんをいじりに来たんだ……)

 

「……嫌な予感がする。じゃあな。」

「え、風真くん?」

「風真くん、逃げた!」

「あ、ひかるさん。」

「別に逃げてない。用が済んだだけだ。」

「あー……前にあったコト、気にしてる?ゴメンね♪」

「ふふ。私たちは、風真くんと仲良くしているマリィを見るのが好きなの。」

「そうそう♡ 風真くんと話している時のマリィってさ、カワイさが爆増するんだよね〜♪」

「……そうなのか?」

「ええ?」

「そう。」

「…………」

「あ!でもさ、風真くんだけのマリィじゃないからね!ひかるたちといる時だって、カワイさ大爆発なんだから!」

「ふふ。そう、だからひとり占めは無し。」

「わかったよ。価値のわかる者同士ってことだな。」

(仲直りしてくれたのはうれしいけど、素直に喜べないような……?)

 

「おはよう、マリィ。」

「あっ、みちるさんにひかるさん。おはよう!」

「アハ♡ 朝から三人がそろうなんて、今日も超いいことありそう♪」

「もうひとりいるけどね?」

「ふーん……」

「風真くん?」

「わかったよ。こないだ、花椿が言ってたこと。」

「マリィのカワイさ大爆発のこと?」

「ああ、それ。」

「でしょ。風真くんといる時とはまた違うの。」

「いい事教えてもらった。」

 

「ふふ、さすが風真くん。マリィのことに関しては、飲み込みが早い。」

(……いったい何を理解したんだろう?)

 

颯砂くんとの思い出

風真玲太颯砂希

「◯◯。いいとこにいた。」

「颯砂くん、風真くん。二人とも、どうしたの?」

「また、玲太が昔話をねつ造してんだよ。」

「事実だ。おまえが忘れてるだけ。」

「きみは覚えてる?幼稚園の時の、コマ回し大会のこと。」

「コマ回し大会……?」

「ほんと、おまえたち何も覚えてないのな。」

「玲太が特殊なんだよ。」

「どんな大会だったっけ?」

「自分たちで色を塗ったコマを、全員で同時に回すんだ。それで、最後まで回ってた人が優勝。」

「で、最後まで回ってた玲太のコマを オレが手で止めたんだって。」

「ああ。優勝は決まってたけど、タイムもあったからさ、止まるまで見てたかったんだ。」

「なんでそんなに覚えてんの?」

「うん、すごい記憶力。」

「……ってことは、おまえも覚えてないのな。もう、いいよ。」

「行っちゃった。今度、適当に話合わせてみるか?」

(それはさすがに……でも風真くん、本当に幼い頃のことよく覚えてるなぁ)

 

「◯◯。」

「風真くん、颯砂くん。どうしたの?二人で。」

「オレ、ちょっと思い出したことあるんだ。昔のこと。」

「え、なに?」

「幼稚園の節分の時さ、オレ、鬼の役やったんだよ。覚えてない?」

「うーん、どうだったかな……」

「玲太は?」

「よーく覚えてるよ。」

「そっか、よかった。二人の共通の思い出だね?」

「颯砂、それ続きないのかよ?」

「続き? 玲太と一緒に走り回った記憶だな。楽しかったよな。」

「なに美化してんだよ。」

「え? 違うの?」

「……ったく。鬼の面かぶって、俺ばっかり追いかけてきてさ、相当怖かったんだぜ。まだ昨日のことのように思い出せるよ。」

(ふふっ。当時の二人の鬼ごっこ、きっと可愛かったんだろうな)

 

「◯◯。颯砂の謎が解けたぞ。」

「えっ、颯砂くんの謎?」

「玲太、なんだよそれ?」

「颯砂、おまえの思い出って、俺と走って楽しかったってのばっかりだろ?」

「うん、そうかも。」

「おまえは、思い出したくないことを封印してるんだ。」

「ええ?」

「どういうこと?」

「おまえ、今も幽霊とか苦手だろ?」

「う、うん。それがどうした?」

「卒園が近づいたある日、幼稚園にあった『ヌルヌルオバケ』って絵本で、おまえ大泣きしたんだ。いつも元気で無敵な颯砂がそれ以来、急におとなしくなった。」

「全然覚えてないな…… 確かに、ヌルヌルとオバケは今も得意じゃないけど……」

「おまえは、俺を追っかけまわした楽しい記憶で、『ヌルヌルオバケ』の恐怖を包み隠したんだ。」

「うんうん、なるほどな…… そう考えるとさ、今の苦手も克服できるかもな。玲太、サンキュ!」

「颯砂くんが大泣き……そんなことあったかな?」

「おまえの方はまた別の問題な。それは今度、じっくりやろう。」

(風真くん、名探偵みたい……)