日常のひとコマ 颯砂希

f:id:nicoko1018:20211123000826j:plain

 

 

自分のペースで走り続ける

(颯砂くん、ひとりで走ってる…… インハイの後、少しみんなと距離があるような……)

部長「マネージャー、気にする必要ないよ。あいつは自分のペースでしかできないやつだから。」

「えっ……でも……」

「颯砂くん。」

「おう、お疲れ。一緒にクールダウン頼んでいい?」

「もちろん。……颯砂くん、あのね――

「マネージャー、オレは陸上バカって言っただろう?」

「えっ?」

「だから、こうして時々きみと走れればいい。」

「でも……部長とかみんな、颯砂くんのこと誤解してると思う。」

「……きみは?」

「わたしは、わかってるつもりだよ?」

「うん、それだけでいい。力湧いてきた、強めにもう一周走ってくる!先上がってて。」

(颯砂くん……)

 

ストッパーを外して

「◯◯、タイムどうだった?」

「いつも通り。なんでピッタリ同じタイムで走れるの?」

「歩幅も、呼吸も、フォームも、いつも同じだから。でもさ、インハイで先輩に背中押してもらったから、もっと強めにいこうかなって思ってる。」

「うん。でも、無理はしないでね。」

「無理とガムシャラは、オレの得意技だよ。じゃあいってくる!」

(ふふっ!颯砂くん、前よりもずっと楽しそう?)

「◯◯、オレのフォーム、何か変化ある?」

「えぇと……ううん、変わってないと思うけど。」

「あの時先輩に言われてさ、ストッパーかけてたところ、外してるんだ。だから、これからどういった変化が出るか、自分でも楽しみ。」

「そっか、小さな変化もわかるように、わたしも注意するね。」

「さすが、オレのマネージャー!じゃあ、最後10分追い込んでくる!」

(颯砂くん、今まで以上に気合入ってるみたい。次の記録が楽しみだな!)

 

ハードルの自己ベスト更新

(颯砂くん、ハードルのタイム、また自己ベストだ。本当に全種目優勝できるかもしれない)

「◯◯、今の全ハードル、イメージ通りにまたげたよ。」

「うん、こないだの記録会よりもいいタイムだよ。」

「この感じ忘れないようにもう一本、行ってくる。」

「◯◯、きみのおかげで、ここんところ練習が充実している。最後のインハイ。先輩たちに、いい報告できるかもな。」

「そうだね。颯砂くんが最後まで全力でできたら、きっと喜んでくれるよ。」

「オレは自分のためだけにやってるのに、みんなが応援してくれる。こんなに嬉しいことはないよ。だから、ぶっ倒れるまでやるよ。」

「応援してる。でも、本当に倒れたりしないでね?」

「きみがゴールにいると思えば、そこまではたどり着ける。」

「え?」

「だから、見ててよ。これからも!」

(颯砂くん……最後のインハイまで、もう少しだね!)

 

記録に満足

(気付けばもうインターハイ直前だ。みんなには、がんばってほしいな……)

部員「大会も近いから、出場する選手は体のケアもしっかりな~」

「◯◯、こうやっていつも、最後のランニング付き合ってくれてありがとうな。」

「うん、最初は大変だったけど、わたしも鍛えられたかな?」

「うん、選手もできそうじゃん。」

(あれ?颯砂くん、今日はいつもより腕の振りが固いみたい……?)

「腕?ああ、ちょっと力入ってるかも。うん、ありがとう。筋肉張ってるわ。気づかなかったよ。」

「ううん。ちょっといつもと違って見えたから。」

「いつも見てくれてるきみだから、気づいてくれた。こういう小さいズレが大きな失敗につながるんだ。ありがとう。」

「うん、役に立てて良かった。」

「今日はゆっくり筋肉ほぐしてみる。最後の最後、本番で後悔するとこだったよ。」

(もうインターハイ……颯砂くんが満足して終われるように、最後まで応援しよう!)

 

あれからおかしな心拍数

(ふぅ、やっと部費の計算が終わった……)

「◯◯、ここにいたのか。」

「うん、部費の管理してたの。でももう終わり。」

「そっか。大変だな。」

「颯砂くんは?」

「あ、オレはなんだっけ? 忘れた。じゃな、早く出て来いよ。」

(???)

 

「はっ、はっ、はっ…… なんかこうやって、一緒に走ってもらってる方が落ち着くよ。」

「え?」

「こないだ部室で、心拍計ってもらって、ドタバタしたろ?」

「あ、うん。計測器、修理したからもう大丈夫だよ。」

「うーん、そうでもない。あれから、変なんだよ……」

「え……?」

「さっききみに話があって部室行ったら、ちょっとヤバかったよ。しばらく、引っ張りそう……」

「えぇと、高地トレーニング?」

「そう、それ。たまにきみの感触が――
 ……って何言ってんだ!? ダメだ、もうちょっと追い込んでくる!」

(ええ!? クールダウンだったんじゃないの……?)

 

思い浮かぶ牧場でのできごと

(ああ、いいお天気……)

「◯◯。」

「あ、颯砂くん。お昼休みもトレーニング?」

「うん、きみと一緒。いい天気だと動きたくなってくる。」

「ふふっ、そうかも。」

「時間ちょっとある?一緒に走ろう。」

「あのさ、前に牧場いったじゃん?」

「うん。乳しぼりしたよね?」

「あ、ああ。それそれ。オレ、走ってるときって無心になるんだ。でも最近、牛の乳搾ってるきみが突如、浮かんできたりする……」

「ええっ!? な、なにそれ?」

「楽しそうにさ、搾ってんだよ。困ってんだ…… どうにかなんないかな?」

「そんなこと言われても、困るよ……」

「だよな……妙にリラックスできるんだけど、そんなこと考えて走ってるって、変だよな…… あ、悪い。バカだなオレ。忘れるように頑張るよ……」

(乳しぼりしているわたし、そんなに楽しそうだったのかな……)

 

二人三脚のようにトレーニン

(午後の授業までまだ時間があるし……校庭に出てみようかな)

「◯◯。来たな?」

「颯砂くん、今日もランニング?」

「うん、軽く行こうよ?」

「オッケー!」

 

「うん、いいじゃん。」

「はぁ、はぁ……そう?」

「姿勢もいいし、脚も上がってるよ。なんかこうやって並んでるとさ、二人三脚、思い出す。」

「え?体育祭の?」

「右っ、左っ、右っ、左っ…… ほらっ、きみも一緒に。」

「ええっ? 右っ、左っ、右っ、左っ……」

「右っ、左っ、右っ、左っ…… はははっ!」

「ふふっ、もう、走れないよ……!」

 

「まさか、きみとまた二人三脚できるとはな。」

「ランニングでしょ?」

「そっか。じゃあ、オレもうちょっと走ってくる。じゃね。」

(ふぅ…… ちょっと疲れちゃったけど、楽しかった!)

 

タイムよりフォームが気になる

(すごい……颯砂くん、いつもトップだ!)

部員A「颯砂、ちょっとはこっちに花持たせろよ~。」

「え?あー、すんません。オレ、調整きかなくて。」

 

「◯◯、お疲れさん。」

「うん。えぇと、颯砂くんのタイムは……」

「今はいいよ。走ってる感覚だけで十分。」

「そうなの……?」

「うん、タイムよりフォームの方が気になる。あ、ちょっと見てよ。なんか違和感あったら言って。」

「うん、いつもと同じ。キレイなフォームだよ。」

「そっか。気になることあったら言ってよ!」

「うん。じゃあわたしが気づけることあったら言うね。」

「ありがと!じゃ、ここから上げてくから。」

部員B「あいつだけ、次元が違うんだよ。」

「え……?」

(今の、颯砂くんのことだよね……みんなが気持ちよく、陸上の練習をできるようにしたいな……)

 

臨機応変に練習

「あ、颯砂くん。今日もいいタイムだよ。」

「そっか、ありがとう。次、ハイジャンプいってくる。」

(単独種目の人の、8倍の練習量だもんね……颯砂くんの八種競技は、本当にすごいな)

「おーい、こっち。」

「え、颯砂くん?」

 

「あれ、ハイジャンプは?」

「ううん、単独種目の選手が来たから。またあとでやるつもり。それまで体冷やさないようにこうしてる。悪い、また一緒に走ってよ?」

「うん、もちろん。わたしでよければ。」

「いいに決まってるだろ?それにきみにしか頼めない。8種やってるの、オレだけだし。単独競技の人とは一緒にできないよ。」

「もしかして、さっきもそれで……?」

「オレもそこまで、空気読めなくないから。こうやってさ、きみと話しながら走るのがオレには一番。いつも、ありがとうな!」

「颯砂くん……」

「よっし、強めで3キロいく。」

(単独競技の選手より、颯砂くんの記録がいいもんね……うーん、やっぱりやり難いところあるよね)

 

普段できないトレーニングに挑戦

部員A「今日は市民グラウンドで練習です。みんな、普段できないトレーニングをやろう!」

部員B「すごい、はば学で貸し切りだ!」

(ふふっ。みんな張り切ってるな)

「御影先生が手配してくれたらしいよ。さすがだな。」

「あ、颯砂くん。 そうなんだ。やっぱり頼りになるね。」

「ほんと。校庭じゃ、やり投げの投てき練習はめったにできないから、嬉しいよ。」

「◯◯、クールダウン。一緒に走ろう。」

「うん。 どうだった?いい練習できた?」

「もちろん。満足そうだろ?」

(今日はたくさん投てき練習したんだよね。右腕、大丈夫かな……?)

「腕?ちょっと投げすぎたかも? いつもは、助走からクロスステップまでのトレーニングが多いからさ、嬉しくなって投げすぎた。」

「大丈夫?」

「うん、御影先生に感謝。あ、帰り一緒に帰ろうぜ?」

「うん!」

「じゃ、もう少し走ってくる。」

(よかった……いつもより、のびのびトレーニングできたみたい。御影先生に感謝だ!)

 

颯砂くんのケガの手当てを

(部費の管理、大変だな……あ、救急箱の中も補充しないと)

「あ、颯砂くん。どうしたの?」

「ハードルの抜き足で膝ぶつけた。」

「大丈夫?今、ばんそうこう持ってくるね。」

「おお、サンキュー。」

ばんそうこうも補充しとかないと……!)

「ウォーミングアップにハードルまたぎ取り入れてみようかな……」

「ハードルを?」

「もっと上手くなんないと、ハードルどんどん壊しちゃうからさ。」

「それは……困るかも?」

「あ。今、オレの体じゃなくて、部費の心配したろう?」

「ふふっ、両方かな?」

「おい、オレ優先で頼むよ。」

部員「おーい、そこの二人。いつまでラブラブしてんだよ。上がるぞ~?」

「あれ……もう誰もいねぇ……つうか、ラブラブってなんだよ?」

「えーと……」

「お、オレ、クールダウンしてくる。」

(みんなに見られてたのかな?ちょっと恥ずかしいかも……)

 

最後にいっしょにクールダウン

(そろそろ、練習時間もおわりか……)

「マネージャー!片づけ終わったら、一緒にクールダウン、走ろうぜ!」

部員A「いいなぁ。たまにはオレたちも入れてくれ~!」

「いいよ~!」

部員A「いっちにーさんしー。」

部員B「ごーろっくしちはーち。」

「にーにっさんしー。」

部員A「ごーろくしちはーち。」

「たまには、みんなでクールダウンもいいな?」

「うん、そうだね。週に何回か、メニューにしてもいいかも?」

「うん、そうやってきみが動いてくれるから、陸上部はなんとかまとまってる。オレがここでやれるのも、きみのおかげだ。」

「え……」

部員C「さんにーさんしー。」

部員A「ごーろっくしちはーち。」

「きみがいてくれて、本当によかった。ありがとうな。」

(颯砂くん……すごくうれしいな。よーし、これからもがんばろう!)

 

原点は一等賞

(今日の記録会。みんな、がんばってたな!)

「マネージャー、お疲れ様!」

「颯砂くん、いい記録出てたね。」

「うん、きみのおかげ。クールダウンのランニング、付き合ってよ!」

 

「はっ、はっ、はっ……」

「颯砂くん、満足そうだね。」

「うん。記録もだけどさ、登録した4種目はトップ取れた。やっぱり一番は気持ちいい。」

「おめでとう!」

「やっぱりオレの原点は、運動会の一等賞みたいだ。子どもだろ?」

「ううん。それをずっと追いかけられるなんて、すごいと思う。」

「うん、ありがとう。なんかすげぇ、嬉しい。ちょっと、強めに走ってくる!じゃな。」

(行っちゃった……あれ?今のクールダウンのはずだったよね?)

 

校庭でいっしょにトレーニン

(うーん、いいお天気!そういえば、最近調子いいかも?運動しているからかな?)

◯◯。調子良さそうじゃん?」

「あ、颯砂くん。ランニング?」

「そう、ランチ前にひとっ走りしてたとこ。一緒にどう?」

「颯砂くんのジャマにならないかな……?」

「全然。行こう!」

 

「うん、いいじゃん。リラックスできてるし、日頃の運動の成果だね。」

「えっ?」

「結構、楽しそうにやってるよな。」

「見てたの?」

「時々。でもさ、楽しそうにやれるって、才能だぜ。オレも見習わないとって思ってた。」

「そ、そっか。でも、わたしそろそろ限界かも……」

 

「無理は禁物。一緒に走れて楽しかったよ。じゃね。」

(ふぅ……ちょっと疲れたけど、颯砂くんと走れて楽しかったな)

 

校庭でいっしょにダッシュ

(うーん、いいお天気!そういえば、最近調子いいかも?運動しているからかな?)

「◯◯。いたな?」

「あ、颯砂くん。今日も走ってたの?」

「そうだけどさ?なんか、人を馬みたいに言うなよ。」

「ふふっ、馬?」

「ああ、笑ったな?バツとして、一緒にダッシュ。」

「ええっ!?」

「うん、すごく良くなってる。普通にオレについてきてるじゃん?」

「そっ、そう?」

(ふふっ……颯砂くんの髪、ぴょこぴょこ揺れてて可愛いかも……馬のたてがみみたい?)

「え、髪?そう、天パー。つか、よく届いたな! 余裕じゃん。少し強めに走ってみるか?」

「えぇっ!? それはちょっとムリ……」

「そっか、でもすごいよ。オレ、いつかきみと本気で走りたい。じゃな?」

(ふぅ……たしかにこの前よりちゃんと走れたかも。運動、がんばってるからかな?)

 

今日もいっしょにランニング

(うーん、いいお天気。気持ちいいな……)

「この足音は……もしかして……」

「おー、いたいた。一緒に走ろう!」

「うん。もうなんか、立派なアスリートみたいじゃん。」

「はぁ……颯砂くん、今日はちょっと速いよ……」

「うん、今日はオレもマジ。でも、全然普通にできてるじゃん。」

「う、うん、なんとかね。」

(颯砂くん、本当に本気でランニングしてるのかな……口元、笑ってるよね?)

「ごめんごめん。笑ってたわけじゃないって。別に力は抜いてないよ。きみの体力がついてきたってこと。」

「本当?」

 

「予鈴だ。ありがとうな。これで午後は気持ちよく寝られそう?じゃな。」

(いつも運動してるから、楽にランニングできたかも!でも、寝ちゃダメだよ、颯砂くん……)

 

はばチャコラムの感想

(そろそろ帰ろうかな…… あ、まだ早いし、砂浜に行ってみよう。颯砂くんがトレーニングしてるかも?)

(うーん…… 颯砂くん、いないみたい。仕方ない、帰ろう……)

「おーい! こっち、こっち!」

「あ、颯砂くん?」

 

「はぁ……こんなところで、何してんの?」

「もしかしたら颯砂くんが走ってるかもって思って。」

「まじで? 嬉しいこと言うじゃん。じゃあ期待に応えて、もうちょっと走るかな?きみも一緒に。」

「ええっ!?」

 

「あ、はばチャコラム読んだよ!」

「ほんと? ……どうだった?」

「きみから見るとオレってあんな感じ?嬉しいけど、だいぶ盛ってる気がする。」

「そんなことないよ。」

「じゃあ、あの記事に書かれてたオレにならないとな。きみの記事がフェイクニュースみたいになったらヤだし?」

「ふふっ、うん。応援してる!」

「よっし、やる気出てきた。力入れて走ってくる。じゃな!」

(わたしの記事が少しでも、颯砂くんの役に立てばうれしいな!)