大接近 柊夜ノ介

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1回目

「……ふふ。」

「えぇと……わたしなにか、おかしなことした?」

「いえいえ。ちょっと思い出してね。昔、劇団で飼っていた猫。」

「ネコ?」

「頭をなでたり、お腹さすったり。僕は友だちもいなかったので、よく遊んでもらってました。」

「そうだったんだ。」

「気持ちよさそうに喉を鳴らしたり、迷惑そうにしたり。あの猫の気持ちが今、よーくわかった。」

「んん?」

「今度はあなたが猫の番ですよ?覚悟しといてください。それじゃ。」

(ええ……? お腹さすられるのはちょっと……)

 

2回目

「ズルいですね。また僕が、あの劇団の猫みたいにされた。」

「あ、いやだった?」

「さあ? ただ、あの大人しい猫も、虫の居所が悪いときはあったよ?」

「ごめんなさい……」

「さて、どうしようかな……」

「う……」

「ふふっ、ははっ。」

「……あ、もしかして柊くん、怒ったフリ?」

「ええ。このぐらいの反撃、いいでしょ?」

「はぁ……びっくりした。」

「ということは、少しは後ろめたさもあるようですね? なら、少しは反省してください。それじゃ。」

(はあ、少しドキドキしたかも……)

 

3回目

「ふぅ。あなたは暗くなると、豹変する。」

「え?」

「帰り道、暗くなり始めると、それを始めるでしょ?」

「それって……スキンシップのこと?」

「ものは言い様です。矢継ぎ早に、次から次へ……全くかわせない。はぁ、夜目の利く猫みたいな人だ。
いいですか?かわせないけど、捕まえることはできますよ。」

「えっ、捕まえる?」

「ええ。あなたの動きを封じて、僕の反撃です。それが嫌だったら、ここまでにしておきましょう。」

「う、うん。」

「わかってもらえればいいですよ。じゃあね。」

(動きを封じるって……わたし、どうされちゃうんだろ?)

 

4回目

「ふー……思った以上にすばしっこいイタズラ猫だ。」

「え?」

「もう、遠回しの表現はやめます。 わかりますか。僕は男だよ。」

「う、うん。……わたしは女だよ?」

「えっ…… だ、だからです。あなたが魅力的な女性だから、困ってます。 はぁ……いい?あなたの知ってる僕は、ほんの一部です。その先は……お見せしたくないんだ。」

「柊くん……」

「僕たちの関係は、今のままがいいんです。わかってくれますよね?お願いします。」

(どうしたのかな、柊くん。いつもと違うような……)

 

5回目

「……ハァ。」

「あっ、ごめんなさい……」

「あなたは、我を忘れて何をしてるんです。前に言いましたよ。いつもの僕のままでいるのはもう限界だって。」

「……うん。」

「僕は男だとも言いましたよね。」

「……うん。」

「でもね、2歳で初舞台を踏んだ僕は、男性歴よりも役者歴の方が長い。2歳児は男を意識していないからね。僕は男である前に役者です。」

「そう……なの?」

「ええ、だから今日は柊夜ノ介から別の役になった。そうでもしないと、僕は限界を超えていたよ。芸は身を助くだ。 ははっ……帰ります。」

(柊くん……何の役になったのかな?)

 

6回目

「はぁ……待って。待ってください。」

「 !? あの、柊くん……」

「ふぅ…… 僕が何の役になっても あなたは、のべつ幕なしに触ってくる。それも、なんですか、最後のは。乱暴に撫でまわして、僕は動物じゃありません。」

「ごめんなさい……」

「いつか話した、劇団にいた猫はね、僕がかまい過ぎて、家出したんだよ。
 はぁ……僕もそうしたいくらいです。」

「柊くん、いなくなっちゃうの?……もうやめるよ。」

「いや、もう遅いですね。攻守交替。」

「え?」

「反撃されて涙目になっても、止めてあげませんよ……
 ふふ、これからが楽しみだね?
 いくよ、子猫ちゃん。」

(どうしよう、柊くんが……)

 

7回目以降

「僕は言いましたよ。攻守交替だって。」

「あっ……つい。」

「もう、それも通用しない。
 さぁ、こっちにおいで。」

(ええ、柊くん……?)

 

2択会話

「そんなに楽しいんですか?その、つつくの。」

 楽しいよ!

   「ふふっ、なら仕方ないですね?」

 なんとなく?

   「そのわりには執拗だ……」

 

「まるで手練れですね……あなたの動き。」

 誰にも止められないよ?

   「ええ、そのようですね。もう、ご自由に。」

 負けを認める?

   「いえ、やられてばかりでいるつもりはないよ。」

 

「仕方ない……そろそろやり返しますね?」

 うん、どうぞ。

   「僕をどこまでも信用していると、後悔しますよ?」

 そ、それはちょっと……

   「ですよね。その反応で良かった。」

 

「あなたは気づくと、そばにいてくれるんですね。」

 そうかな?

   「ええ。それもとても自然にね。」

 柊くんとだけだよ?

   「本当かな?そうであれば嬉しいですが。」

 

「これで僕があなたの手を取ったら、どうするの?」

 柊くんにならいいよ!

   「ははっ、そうですか。もう、降参します。」

 ……どうしよう?

   「はい、ゆっくり考えてください。」