抜け駆けデート会話 本多行

 

グループデート後

「◯◯ちゃん。」

「あ、本多くん。みんなはもう帰ったよ?」

「そそ。だから来ちゃったよ。」

「え?」

「ね、この後、時間空いてる?二人で遊びに行かない?」

「うん、もちろん!」

「だー、良かったー。あのまま帰ってたらオレ、今頃、後悔してるし。勇気出して正解だったよ。んじゃ、早速行こ?」

「ふふっ、うん!」

 

臨海公園:波止場

「タイミングはバッチリ。さて、今日は見えるかな……?」

「 ? 何のこと?」

「あっ、始まった!ほら、水平線を見て?日が沈んでく!」

「わぁ……!」

「ね、息をのむって、まさにこの光景でしょ?晴れてる日でも、キレイに見える時って少ないんだよね。今日は運がいい。」

「せっかくだし、みんなで見に来れば良かったね。」

「……うん。
 ヤなヤツって思われるかもしれないけど、君と二人で見たかったんだ。
 みんなとワイワイするのは嫌だなんて言わないよ?でも
――
 そんな気持ちになっちゃったんだ。だから、一緒にいい?」

「……うん。」

「良かった……太陽が完全に隠れたら、家まで送らせて?」

「うん、ありがとう、本多くん。」

 

臨海公園:波止場2

「くしゅん!」

「大丈夫? ここは風強いし、もう帰る?」

「いやだ。」

「えっ!?」

――て、オレが言ったらどうする? 今のは冗談だけど、帰りたくないって気持ちは本当。だってさー、4人でいたんだよ?単純計算でいつもの3分の1しか君と話せなかったんだから。ここで取り返さないと!」

「ええ?」

「あ、子どもっぽい発想って思った?自分でもそう思うよ。けど、そんなこと考えちゃうくらい君との時間は貴重だから。 くしゅん!」

「あ、ほら……本当に風邪ひいちゃうよ?」

「はは……そーだね。寝込んだりして君と会えなくなったら余計辛いしね。」

(本多くん……)

 

水族館:水族館内

「……ふぅ、やっと二人になれた。みんなといた時、あんまり話せなかったからね。」

「え、そうだった?」

「そーだよ?だってリョウくんもミーくんも、君と話したそうだったし。
 ホントは、独り占めにしたかったんだけど。」

「え……」

「あっ、なんでもない!
 ほら、大水槽見て!アジの群れが通ってくよ!きれいだよねー。
 アジってリーダーがいるわけでもないのに一糸乱れず群れを作るでしょ?
 なんでか知ってる?」

「えーと、捕食されちゃう確率を下げるんだっけ?」

「ピポピポーン!大正解っ!
 ただ、答えは他にもあるんだ。……それはまた次回かな?」

「次回?」

「そそ!取っておけば、また一緒に水族館に来られるでしょ?」

「あ……ふふ!楽しみにしておくね?」

「こちらこそ!」

 

水族館:水族館内2

「ね、今日のオレ、強引だった?」

「え……どうして?」

「オレ、行動力ある方だと思ってたけど……その対象が人になったのは初めてでさ。」

「それは……わたしに興味があるってこと?」

「そそ! あっ、見て!マンボウだよ!」

「ふふ。マンボウ “も” 興味あるんだ?」

「……って今の聞き方じゃ、君とマンボウが同列みたい。違うよ、全然!
 マンボウも興味あるけど、君のほうがもっと好きだから!」

(えーと、マンボウと比べられちゃった……)

 

海:海辺の散歩

「あ、見て! 向こうに相合い傘が描かれてる。」

「ほんとだ。素敵だね?」

「……よし!じゃあ、オレたちも描こう。」

「えっ?」

「よし! これでバッチリ。 どうかな?」

(ザザーン!)

「だー! オレたちの相合い傘が波に飲まれたっ!
 そうとなれば作り直すまで!今度は海からもっと遠ざけて描くよ!」

(本多くん、真剣だ……)

 

海:海辺の散歩2

「……クスッ。」

「どうかしたの?」

「今、君とここに来たこと、リョウくんとミーくんに言ったらどんな顔するかなって想像してたんだ。」

「どんな顔するかな?」

「リョウくんはね……『は? 二人で? なんでだよ?』。」

「風真くん、怒ってる……?」

「そそ! 怒って詰め寄ってくる! 俺を差し置いて何を――って気持ち。
 んで、ミーくんは……『へぇ、ダーホンが? 楽しかった?』。」

「七ツ森くんは淡泊な感じ?」

「そそ! でもそれはうわべだけ。心の中では興味津々だと思うよ。もちろん、君のことにね。」

「そ、そうなの?」

「そうだよ?もしオレが逆の立場だったらって考えると、気持ちわかるし。4人で遊んだ後に、オレじゃない他の誰かとまた遊びに行ったなんて知ったら、ショックだもん。だから、今日のことは二人には秘密だよ?」

(本多くんは、そんな風に感じるんだ……)

 

映画館

「さて、なんの映画みたい?」

「本多くんは?」

「オレは特に見たいのないよ?」

「え……」

「だー、ごめん。正直言うと、本当は映画じゃなくて君と話したくてさ。」

「ええ!?」

「今日はリョウくんとミーくんがいて君と話し足りなかったから。」

「ふふっ、わかった。じゃあ、映画は今度だね?」

「やった!ありがとう!
 じゃあ、なんの話題がいい?コメディ、歴史、サイエンス……」

「なんか映画のジャンルみたいだね?」

「そそ!映画の代わりにオレ、しゃべるよ~?」

(本多くんの話、映画より長いかも……?)

 

映画館2

「ここのキャラメルポップコーンが美味しいんだって!
 オレ、ミーくんに教えてもらったんだ。」

「うん、そうらしいね?」

「……あれ? もしかして、君もミーくんから聞いたの?」

「ううん、ここのポップコーンは人気なんだよ。」

「そっか……
 ……あれ?」

「どうかしたの?」

「さっき、ミーくんと君がポップコーン食べてるイメージが浮かんで、
 モヤっとした……」

「ええ?」

「これって、嫉妬? おかしいよね、二人きりでいるのに。
 オレ、こんなに独占欲あったんだ……
 君といると、知らない自分がどんどん出てくるんだよなー。
 もう面白くってしょうがないよ。」

(えーと、本多くん、映画は……?)

 

ゲームセンター

「あっ、クイズゲームの新バージョン入ってる!? ね、ちょっとだけ――
 だー、やっぱナシ!君と来てるのにクイズに熱くなってちゃダメでしょ。」

「ええ、いいよ?」

「ううん。君にまで、寂しい気持ち、味わわせたくないし。」

「君に『まで』……?」

「あ……うん。実はさっき、ちょっとそういう気持ちになっちゃってさ。」

「さっきって……みんなといた時?」

「あっ、仲間外れとかじゃないよ?リョウくんも、ミーくんも優しいし、そんなこと絶対にしないから!……ただ、君が二人と話してると、焦りというか不安な気持ちになってさ。今日のオレ、どーかしてんだよね。たぶん、ヘン!」

「本多くん……」

「でも、安心して? 今は嬉しいし、楽しいから。めいっぱい遊ぼう?」

「……うん!」

 

ゲームセンター2

「ねね、今の見た?オレ、あんなにダンスゲームが上手い人、初めて見たよ!」

「ふふ、うん。カッコよかったね!」

「…………」

「えーと……どうかした?」

「ようし、オレも挑戦してくる!」

「え……ええっ!?」

「だ……ダメだぁ、ぜんぜん身体がついてかないっ……」

「本多くん、いきなり高難易度のステージを選択するんだもん。」

「でもさ……そうでもしなきゃ見劣りするでしょ。」

「え?」

「君がさっきの人見て、カッコいいって言ってたからさ……」

「ええ!? それで無茶したの?」

「うん、君のたった一言で、こんな汗だくになってる。」

(本多くん、大丈夫かな……?)

 

近所の公園

「ねね、こういう公園っていいよね。誰にでも1つくらい思い出があるんじゃない?オレは、妹と二人でキャンプしようと思って色々持ち込んで怒られた。」

「ふふっ、可愛いな。」

「そだ、今度は最初からここでデートってどう?……あれ、でも昼間は子どもたちがたっくさんだね。」

「きっと、本多くんが囲まれちゃうね?」

「だー、そっか。子どもたちに教えるのはいいけど、せっかくのデートだしな……」

「楽しそうだけど?」

「君が楽しいなら、いいね。あ、その時はリョウくんとミーくんも呼んでみようか?二人が何て言うか、楽しみだし。」

(ふふっ、風真くんと七ツ森くんが子どもたちと遊んでる姿か……想像できないかも?)

 

近所の公園2

「だー、ゴメン。君を連れ出すことばかり考えてて、その先ノープランだった。」

「ふふ、大丈夫だよ。」

「ありがと。でもさ、なんか新鮮なんだこの感じ。オレ、目の前のことで頭がいっぱいになるっていう感覚知らなかったから。」

「本多くんはいつも色々なこと考えているもんね。」

「うんうん、なのに今日はさ、ちょっと先のことも見えなくなっていた。こんなの初めて!人って面白いなぁ。まだまだ知らない自分がいるみたい。」

「本多くんの考え方が面白いんじゃないかな?」

「そうかもね。でもさ、きっかけは君。君のおかげで自分の面白さに気づいた。こんな身近に興味対象があったなんてさ!」

(本多くん、自分が研究対象になっちゃったみたい?)

 

ナイトパレード

「はぁはぁ…… ナイトパレード!間に合った!」

「ふぅ……急に走り出すからビックリしちゃった。」

「だー、ゴメン!どうしても一緒に見たかったんだ。今日は……特に。」

「え、今日って……なにか特別な日だった?」

「うん。君を独り占めしたい――そんな気持ちになった特別な日!」

「えっ……?」

「さっ、パレードが始まるよ。前の方、行こ!」

(本多くん……)

 

イルミネーション

「わぁ……キレイ!」

「君も同じくらいキレイだよ!」

「……え? 本多くん、どうしたの?」

「あれ?おっかしーな。 予習してきたんだよ。イルミネーション見ながら言いたい、イケメンゼリフ。」

「えぇと……いつもの本多くんの方がいいよ?」

「……そっか、そだよね。じゃ、もう一回。」

「えっ!」

「君の方がキレイかも!
 ……考えたんだけど、あんまりイケメンゼリフと変わらなかったよ?」

(うれしいけど、恥ずかしいな……)