本多くんのありがたみ
「…………」
「…………」
「……二人とも、どうしたの?」
「なにが?」
「無言で黙々と食べてるから……」
「あー。ダーホンがいないからだろ。」
「だな。」
「本多くん?」
「こういう状況になって初めて、本多の存在のありがたさに気づいた。」
「ああ。ダーホンが話題の創始者ってコトな。」
「なるほど……」
「◯◯、今日のランチタイムの話題提供は頼む。」
(ええっ!? 急に振られても……)
恋愛はまだ早い?
「なあ、本多はどうしたんだよ?」
「えっ? わたしは知らないけど……」
「そうか。」
「ダーホン、何してんだ……」
「?」
「こっちが気疲れするよ。……ったく。」
「ま、あいつにはまだ早いのかな。レンアイは。」
「だろうな。恋愛の意味は解ってても、恋愛の仕方は未経験って感じだし。」
「ねえ。さっきから二人でコソコソと何の話?」
「別に何でも。」
「なる……お互いドンカンそうだな。」
「……でなきゃこうはならないだろ。」
(鈍感って聞こえたけど……本多くんとわたしのこと、言ってる?)
ふたりともにぶい
「ダメ。ダーホン、電話にも出ないわ。」
「仕方ない。じゃ、もう食べようぜ。」
「うん。いただきます!」
「……あとでヤキモチ妬かれないかな。」
「自業自得だよ。いないあいつが悪い。」
「 ? 本多くんのこと言ってるの?」
「……おまえ案外、あっさりしてんのな。」
「え……」
「ダーホンいないのにさ。ムリして俺たちにつき合ってんなら――」
「七ツ森、二人とも激ニブだから心配いらないだろ。」
「なる……」
「もうっ! ぜんぜんわからないよ。何の話?」
「レンアイ下手な二人の話。」
「見てるこっちがもどかしいんだよ。」
(もう、二人とも何言ってるの……?)
風真玲太・本多行 ▶風真玲太・七ツ森実