校内出歩きイベント 花椿みちる編

 

悩みごと

花椿みちる

(あっ、みちるさんだ)

「はぁ……」

「みちるさん!ため息なんて、どうしたの?」

「あ、マリィ。うん……」

「悩みごと?」

「悩みごと……そうなのかもしれない。」

「?」

「でも、私にはどうすることもできないもの。はぁ……」

「あの、わたしで力になれるなら相談にのるよ?」

「ううん、大丈夫。マリィ、心配してくれてありがとう。じゃあ……」

 

「はぁ……どうしたらいいの……」

(なんだかすごく悩んでるみたい。大丈夫かな……?)

 

「はぁ……」

「みちるさん!」

「マリィ。」

「……大丈夫?悩みごと、まだ解決してないの?」

「解決……そうだよね。私が勝手にクヨクヨ考えてもどうにかなるものじゃないか。」

「あの…… わたしも一緒に考えてなんとかなるなら本当に――

「マリィ、ありがとう。本当に優しい子。でも、もう少し考えさせて?どうにもならなくなったらマリィにも打ち明けるから。じゃあ……」

(みちるさん……うん、少し待ってみよう)

 

(あっ、みちるさんだ!)

「みちるさん!」

「マリィ。」

「あの……」

「ふふ、大丈夫。マリィに打ち明けることにしたから。」

「うん! それで、どうしたの?」

「あのね? ……これ。」

「漫画の本?」

「そう。いま連載中のラブストーリーなんだけど。二人の男の子の間で心揺れるヒロイン。幼なじみと、学園の王子様なんだけど、どっちもステキでね。ヒロインだって、こんなステキな男の子が身近に二人もいて、どちらからも好意を寄せられたら、それは悩むじゃない?このモヤモヤしたヒロインの気持ちにものすごく感情移入しちゃって。お話の続きが気になるんだけど、こわくて読めないの……」

「なるほど……」

「ヒカルはこういうのが好きじゃないからちっとも共感してくれないし。……だいたい、こんなこと言えないし。だからマリィ、お願い!あなたにこの本を貸すから、読んで。一緒に気持ちを共有してくれない?ひとりで切ない気持ちでいるのが本当に辛いの。マリィ、一緒に悩んで、語り合いましょ?」

(漫画にすごく感情移入しちゃったんだ。みちるさんて、すごく心が乙女なんだなぁ)

 

氷室くんを追及

花椿みちる氷室一紀

(あ、みちるさんと氷室くんだ)

「そんなこと言われても。」

「わからない……だって、ほとんどの人にはそうしてるでしょ?」

「そうですけど。」

「なら、どうして私たちはだめなの?」

「ハァ……理由を説明するのがすごく難しいんです。すみませんが、僕はこれで。」

「もう。難しい理由ならなおさら知りたいじゃない。」

(いったい何の話だろう?)

 

(あ、みちるさんと氷室くんだ)

「ねえ、自分だってややこしくなってるのわかってるんでしょ?」

「僕は、べつに。自分の中では区別できてるんで。」

「もう!本当に天邪鬼なんだから。」

「ねえ、みちるさん、氷室くん!何のお話、してるの?」

「あっ、マリィ。」

「……話がややこしくなりそう。じゃあ僕はこれで。」

「はぁ……また逃げられちゃった。もしかして、マリィが来ると都合が悪い理由なのかな?」

(???)

 

「あっ、みちるさん。」

「マリィ。今日も元気でカワイイね。」

「もう、みちるさん! 恥ずかしいよ……」

「あ。」

「あ、氷室くん。」

「……さよなら。」

「??? 氷室くん、どうしたんだろう?」

「ねえマリィ。氷室ちゃんの相手の名前の呼びかたって変じゃない?」

「名前の呼び方?」

「私とヒカルは双子の姉妹でしょ。それなのに、どちらに対しても『花椿先輩』って呼ぶの。どっちのことを呼んでいるのかわからないし。だいたい、他の人のことは下の名前で呼んでるのに。だから同じように下の名前で呼んだらって言ったら、なぜか避けるし。ヘンな子。 ……ねえ、マリィはどう呼ばれてるの?」

(氷室くん、実は女の人のことを下の名前で呼ぶのが恥ずかしいんじゃ……?)

 

姉妹ならでは?

花椿みちる花椿ひかる

「マリィ。」

「あ、みちるさん。今日はいい天気だね!」

「本当に。どこかにお出かけしたくなるね?」

「うん!」

「ハ~イ、マリィ♡ 今日はいい天気だね♪」

「ひかるさん!うん、どこかにお出かけしたくなるね?」

「ふふ!やだ、マリィったら。私と同じこと言ってる。」

「あ……本当だね?ふふ!」

「えっ、なになに?なんの話~?」

「ううん。こっちのこと。ね、マリィ?」

(ふふ!)

 

「あ、みちるさん。」

「マリィ……」

「どうしたの?」

「さっきから、くしゃみが出そうなんだけど。うーん……」

「あ、その感覚わかる。なかなか出てこないんだよね?」

「そうなの。んん……はぁ……」

「はっくしょん!!」

「えっ?」

「ふあ~、スッキリしたぁ♪ あ、マリィ!」

「いまのくしゃみ、ひかるさん?」

「そっ。なかなか出てくれなくてさ~。やっとだよぉ。」

「ふふ。ヒカルが代わりにしてくれたから私もすっきりしちゃった。」

「アハ♡」

(これが双子のシンクロニシティ?)

 

「マリィ。」

「マリィ!」

「みちるさん、ひかるさん。二人ともどうしたの?」

「生物の教科書を――

「あっ!それはひかるが言おうと思ってたの!」

「えぇと……二人とも、生物の教科書を忘れたの?」

「そうみたいね……?」

「お姉ちゃんは教科書なくても授業を理解できるでしょ?ひかるは教科書ないとムリだもん!」

「ヒカル、そこは威張るところじゃない。」

「ねえ、二人はクラスが違うんだから生物の授業は別々だよね?どっちが先なのかな?」

「私は次の時間。」

「ひかるは午後イチ。……あれ?」

「ね?」

「……ごめんね、マリィ。じゃあ、私が先に借りて、そのあとヒカルに渡しても大丈夫?」

「今日は生物はないから大丈夫だよ。よかったね?」

「エヘ!マリィ、ありがと♡」

「やだ……双子のシンクロも、こういう恥ずかしいのは見せたくなかったな。」

(ふふ!慌てんぼうなところも似てるんだ?やっぱり双子なんだなぁ)