校内出歩きイベント 七ツ森実編

 

落とし物

七ツ森実

(今日の授業も、あと残り一教科……)

「よ。」

「あ、七ツ森くん。次は教室移動?」

「そ。じゃあな。」

(ポトッ)

「ん?パスケース…… 七ツ森くん!今これ、落としたんじゃない?」

「あれ、ホントだ。サンキュ。 またやった……いっけね。」

(よかった。でも、 “また” って……)

 

「……あれ? 七ツ森くん!」

「あんたか。」

「今日は、日直?」

「そ。日誌を職員室に届けたら終わり。」

「ふふ、お疲れさま。」

「ん。じゃあ。」

(ポトッ)

(この音は……)

「七ツ森くん!」

「はい?」

「今、なにか落としたんじゃない?」

「……あ。 またパスケースだわ……サンキュ。」

「ふぅ……」

(バサッ)

「たく…… おまえまで落ちなくてイイから。」

(日誌も落とした!?)

 

(なにか、不思議な気配を感じる……)

「よ。」

「あ、七ツ森くん。」

「おっかない顔して、どしたの?」

「うん。何かに……呼ばれているようなそんな気がして。」

「コワッ。オカルトなチカラが目覚めちゃった?」

「もう……ねえ、七ツ森くん。パスケースはちゃんとあるよね?」

「あるよ、ほら。 ……あれ?」

「まさか……」

「……なんて。ほら、ありますよ。」

「もう……でも、よかった。」

「あんたに会うたびに無くしてちゃ俺も身が持たないし。」

「そろそろ教室に戻らないと。行こう、七ツ森くん!」

「OK!」

 

「……あっ!!
 七ツ森くんの立っていたところにパスケースが落ちてる……七ツ森くん!!」

(毎回、いったいどこから落としてるのよ~!?)

 

グリグリ

七ツ森実氷室一紀

「あ。あそこにいるのって――

「…………」

「七ツ森くん。なに見てるの?」

「氷室君。」

「えぇと……ヒムロイノリくんのほう?」

「氷室教頭、ガン見するワケないでしょ。」

「う、うん……どうして氷室くんを見てるの?」

「ん。アイツ、素質がありそうだと思って。」

「素質?」

「さっきから何なんですか。」

「あ……氷室くん。」

「言いたいことがあるならハッキリどうぞ。」

「氷室君。……グリグリ?」

「やってます。」

「よしっ。今夜8時、エヌ・エーの名前で招集かけるんで、来てよ。」

「まあ、いいですよ。じゃあ、8時にギルド行きます。」

「やっぱり。俺のカン、冴えてる。」

(グリグリ? 招集? 何のこと???)

 

「ふぁ……」

「あっ、七ツ森くん。眠そうだね?」

「ちょっと、寝不足。」

「それはいつもな気がするけど……」

「氷室君がすげーんだよ。」

「ミノル先輩、昨日は……いえ、今朝はどうも。」

「あ…… 氷室くんも眠そうだね?」

「少し。ヤメ時が難しくて、結局一睡もしなかったから。」

「や、ゴメンな。俺がデカいクエストに手出しちゃったから。お仲間サンみんなが寝不足だわ……」

「でしょうね。空、明るかったし。」

「えっ?ちょっと待って。明け方まで、何してたの?」

「グリグリ。」

「そ。あんたもやってみる?グリグリ。」

(グリグリ……今度調べてみようかな)

 

「あっ、七ツ森くんと氷室くん!」

「よ。」

「どうも。」

「わかったよ、グリグリ! スマホのゲームのことだよね?」

「『グリルド・グリーンピース』、略してグリグリ。正解。」

「名前の間抜けさからは想像もできない えげつないゲームですよね。」

「だよな。クエストも育成も、マジえげつないのばっか。」

「でも、途中で投げ出したくない……射幸心を上手くついた、えげつないゲーム性。」

「えぇと、どんなゲームなの?」

「だからさ、あんたもやってみなよ。俺らがサポートしてやるから。」

「必要なら、僕のストックアイテムをプレゼントするよ。」

「そうだな……ハンドルネームは “マメ子・シャイニング” だな。」

「ピッタリですね。ミノル先輩、さすがです。」

「マメ子。うん、カワイイし何気に強そう。えげつないな……」

( “マメ子・シャイニング” 、それがわたしのハンドルネーム……いったいどんなゲームなの!?)

 

花椿姉妹とのトーク

七ツ森実花椿みちる花椿ひかる

「ツインズ、次の特集でまた表紙っすか。マジ尊敬だわ……」

「そっ。衣装も私が手掛けたの。」

(ん?この声は……)

「イイなー。俺も自分でデザインして服が作れたらもっと楽しめそう。」

「実クン、自分で作ってるんじゃないの?あのナ――

「七ツ森くん、みちるさん!わたしもお話聞かせてほしいな。」

「マリィ!はー……びっくりした。」

「……あんた。今の、どこまで聞いた?」

「えっ?七ツ森くんが服を作ってるとかないとか、そんなところだけど……」

「なら、よし。」

「ごめん、実クン。この話題は校内じゃタブーみたいね。」

「や、ミチルさん悪くないし。俺が勝手に面倒クサイことしてるだけだし……」

(ヒソヒソ話されると余計に気になるよ……)

 

「エ~ッ!? 実クン、やめちゃうの?」

「や……まだハッキリ決めてないけど。」

(ん? この声は……)

「じゃあさ、あのヴィッグとか衣装どーすんの?全部捨てちゃうの?」

「ヒカルさん、もし気に入ったのがあるならあげま――

「ね、二人で何のお話してるの?」

「や……」

「ねー、マリィも寂しいよね?ナナコ――

「シーッ、シーーーッ!!」

「エ……ウソ? マリィは知らないの!?」

「…………」

「あっきれた……とっくにバレてて、こーいう女子トークしてると思ってたのに。」

(七ツ森くんと女子トーク?)

「ヒカルさん、そろそろトーンダウンを……」

「メンドくさー……ていうか、マリィ。ドンカンすぎ~!」

「おかげでこっちは助かってます……」

(わたしが鈍感って、どういうことよ……)

 

「あ、みちるさん、ひかるさん!」

「マリィ。」

「マリィだ。ねえねえ……」

「ん?」

「実クンのことなんだけど、どこまで知ってるの?」

「ええっ!?」

「ヒカル、質問の仕方がおかしい。」

「エヘ♡ たしかにヘンだね?えっとぉ……」

「実クン、来ちゃった。」

「あーん、もうッ! マリィ、またアタックするからっ!サリュ!」

 

「ハァ、ハァ……」

「七ツ森くん、どうしたの!?」

「ツインズ……なにか……おかしなコト、言ってた?」

「おかしなことは言ってないけど。七ツ森くんのこと、わたしがどこまで知ってるのって。」

「聞き方お下品……」

「みちるさんもそう言ってた……」

「てことは、主謀はヒカルさんのほうか。」

「ねえ。七ツ森くんて、もしかしてまだまだわたしに隠してることがあるの?」

「は? まだまだって……ないよ!そんな目で俺を見るなッ。」

(逃げた……ぜったいまだ何か隠してる……)

 

正体?

七ツ森実本多行

「あ……七ツ森くん、本多くんだ。」

「そそ。ミーくんには#4がビンゴだと思う。」

「それ、メイクさんと同意見だわ。ダーホンやるじゃん。」

「やった!」

「ねえ、二人で何の話してるの?」

「◯◯。」

「カラーリップのことだよ?」

「あ、はばチャのメンズコスメの特集で “Nana” が……って、えっ!?」

「それそれ!」

「それって……あの……」

「大丈夫。ダーホン、もう知ってるから。」

「そ、そうなの!?」

「ミーくんのお仕事のこと?うん、知ってるよ。」

「ダーホン、雑誌見てすぐわかったって。」

「うんうん、それよりさ、君は何番がいい?」

「え、わたし?」

「#1!」

(えぇと……本多くん、七ツ森くんの正体、知ってるの……?)

 

「……あ。 七ツ森くん、本多くん!」

「◯◯ちゃん。」

「……ダーホン、もういいか?俺、そろそろ仕事の時間だから。」

「あっ、ごめん。また相談させてよ。」

 

「ねえ、本多くん。ちょっと聞いてもいいかな。」

「うんうん。オレが知ってることならなんでも教えるよ!」

「えぇと……どうして七ツ森くんがモデルのお仕事してることを知ったの?」

「だって、雑誌にミーくんが載ってたよ。」

「でも普段の七ツ森くんとは全然違うよ?髪型とかメイクとか……メガネもしてないし。」

「ううん。痩せても太っても骨格は一緒だもん。メイクや髪型じゃ変わるわけないよ。だからオレにはNanaもミーくんも一緒に見えるよ。」

「そ、そっか……」

「ダーホン。ココでその名前を両方出すのはNGって言ったよな?」

「あれ?でも、君も知ってるんでしょ?」

「う、うん。」

「そういう問題じゃない。壁に耳あり障子に目ありだ。二人とも忘れるな。」

「ふぅーん。もう、みんな、知ってるんじゃない?ねぇ?」

(骨格でわかるなんて本多くんくらいだと思うよ……)

 

「あ……」

「ミーくん、ありがとうっ!」

「ん。」

「七ツ森くん、本多くん!」

「◯◯。」

「◯◯ちゃん。ミーくんのおかげでさ 妹の機嫌がいいんだよねー!」

「七ツ森くんのおかげ?」

「ま…… 女きょうだいと上手くやる正攻法ってヤツをな。」

「そそ。ミーくんちはお姉さんだけどね。やっぱり経験値が違うよ……」

「ふふ。わたしにも教えて?」

「それは……ヒミツ。」

「そだね。」

「えー……」

「だってさ、君とケンカしちゃった時に応用がきくかもしれないでしょ。」

「きょうだいじゃないけど、効き目はあるハズ。」

(うー……気になるなぁ)