校内出歩きイベント 七ツ森実編
落とし物
七ツ森実
1
(今日の授業も、あと残り一教科……)
「よ。」
「あ、七ツ森くん。次は教室移動?」
「そ。じゃあな。」
(ポトッ)
「ん?パスケース…… 七ツ森くん!今これ、落としたんじゃない?」
「あれ、ホントだ。サンキュ。 またやった……いっけね。」
(よかった。でも、 “また” って……)
2
「……あれ? 七ツ森くん!」
「あんたか。」
「今日は、日直?」
「そ。日誌を職員室に届けたら終わり。」
「ふふ、お疲れさま。」
「ん。じゃあ。」
(ポトッ)
(この音は……)
「七ツ森くん!」
「はい?」
「今、なにか落としたんじゃない?」
「……あ。 またパスケースだわ……サンキュ。」
「ふぅ……」
(バサッ)
「たく…… おまえまで落ちなくてイイから。」
(日誌も落とした!?)
3
(なにか、不思議な気配を感じる……)
「よ。」
「あ、七ツ森くん。」
「おっかない顔して、どしたの?」
「うん。何かに……呼ばれているようなそんな気がして。」
「コワッ。オカルトなチカラが目覚めちゃった?」
「もう……ねえ、七ツ森くん。パスケースはちゃんとあるよね?」
「あるよ、ほら。 ……あれ?」
「まさか……」
「……なんて。ほら、ありますよ。」
「もう……でも、よかった。」
「あんたに会うたびに無くしてちゃ俺も身が持たないし。」
「そろそろ教室に戻らないと。行こう、七ツ森くん!」
「OK!」
「……あっ!!
七ツ森くんの立っていたところにパスケースが落ちてる……七ツ森くん!!」
(毎回、いったいどこから落としてるのよ~!?)
グリグリ
七ツ森実・氷室一紀
1
「あ。あそこにいるのって――」
「…………」
「七ツ森くん。なに見てるの?」
「氷室君。」
「えぇと……ヒムロイノリくんのほう?」
「氷室教頭、ガン見するワケないでしょ。」
「う、うん……どうして氷室くんを見てるの?」
「ん。アイツ、素質がありそうだと思って。」
「素質?」
「さっきから何なんですか。」
「あ……氷室くん。」
「言いたいことがあるならハッキリどうぞ。」
「氷室君。……グリグリ?」
「やってます。」
「よしっ。今夜8時、エヌ・エーの名前で招集かけるんで、来てよ。」
「まあ、いいですよ。じゃあ、8時にギルド行きます。」
「やっぱり。俺のカン、冴えてる。」
(グリグリ? 招集? 何のこと???)
2
「ふぁ……」
「あっ、七ツ森くん。眠そうだね?」
「ちょっと、寝不足。」
「それはいつもな気がするけど……」
「氷室君がすげーんだよ。」
「ミノル先輩、昨日は……いえ、今朝はどうも。」
「あ…… 氷室くんも眠そうだね?」
「少し。ヤメ時が難しくて、結局一睡もしなかったから。」
「や、ゴメンな。俺がデカいクエストに手出しちゃったから。お仲間サンみんなが寝不足だわ……」
「でしょうね。空、明るかったし。」
「えっ?ちょっと待って。明け方まで、何してたの?」
「グリグリ。」
「そ。あんたもやってみる?グリグリ。」
(グリグリ……今度調べてみようかな)
3
「あっ、七ツ森くんと氷室くん!」
「よ。」
「どうも。」
「わかったよ、グリグリ! スマホのゲームのことだよね?」
「『グリルド・グリーンピース』、略してグリグリ。正解。」
「名前の間抜けさからは想像もできない えげつないゲームですよね。」
「だよな。クエストも育成も、マジえげつないのばっか。」
「でも、途中で投げ出したくない……射幸心を上手くついた、えげつないゲーム性。」
「えぇと、どんなゲームなの?」
「だからさ、あんたもやってみなよ。俺らがサポートしてやるから。」
「必要なら、僕のストックアイテムをプレゼントするよ。」
「そうだな……ハンドルネームは “マメ子・シャイニング” だな。」
「ピッタリですね。ミノル先輩、さすがです。」
「マメ子。うん、カワイイし何気に強そう。えげつないな……」
( “マメ子・シャイニング” 、それがわたしのハンドルネーム……いったいどんなゲームなの!?)
花椿姉妹とのトーク
1
「ツインズ、次の特集でまた表紙っすか。マジ尊敬だわ……」
「そっ。衣装も私が手掛けたの。」
(ん?この声は……)
「イイなー。俺も自分でデザインして服が作れたらもっと楽しめそう。」
「実クン、自分で作ってるんじゃないの?あのナ――」
「七ツ森くん、みちるさん!わたしもお話聞かせてほしいな。」
「マリィ!はー……びっくりした。」
「……あんた。今の、どこまで聞いた?」
「えっ?七ツ森くんが服を作ってるとかないとか、そんなところだけど……」
「なら、よし。」
「ごめん、実クン。この話題は校内じゃタブーみたいね。」
「や、ミチルさん悪くないし。俺が勝手に面倒クサイことしてるだけだし……」
(ヒソヒソ話されると余計に気になるよ……)
2
「エ~ッ!? 実クン、やめちゃうの?」
「や……まだハッキリ決めてないけど。」
(ん? この声は……)
「じゃあさ、あのヴィッグとか衣装どーすんの?全部捨てちゃうの?」
「ヒカルさん、もし気に入ったのがあるならあげま――」
「ね、二人で何のお話してるの?」
「や……」
「ねー、マリィも寂しいよね?ナナコ――」
「シーッ、シーーーッ!!」
「エ……ウソ? マリィは知らないの!?」
「…………」
「あっきれた……とっくにバレてて、こーいう女子トークしてると思ってたのに。」
(七ツ森くんと女子トーク?)
「ヒカルさん、そろそろトーンダウンを……」
「メンドくさー……ていうか、マリィ。ドンカンすぎ~!」
「おかげでこっちは助かってます……」
(わたしが鈍感って、どういうことよ……)
3
「あ、みちるさん、ひかるさん!」
「マリィ。」
「マリィだ。ねえねえ……」
「ん?」
「実クンのことなんだけど、どこまで知ってるの?」
「ええっ!?」
「ヒカル、質問の仕方がおかしい。」
「エヘ♡ たしかにヘンだね?えっとぉ……」
「実クン、来ちゃった。」
「あーん、もうッ! マリィ、またアタックするからっ!サリュ!」
「ハァ、ハァ……」
「七ツ森くん、どうしたの!?」
「ツインズ……なにか……おかしなコト、言ってた?」
「おかしなことは言ってないけど。七ツ森くんのこと、わたしがどこまで知ってるのって。」
「聞き方お下品……」
「みちるさんもそう言ってた……」
「てことは、主謀はヒカルさんのほうか。」
「ねえ。七ツ森くんて、もしかしてまだまだわたしに隠してることがあるの?」
「は? まだまだって……ないよ!そんな目で俺を見るなッ。」
(逃げた……ぜったいまだ何か隠してる……)
正体?
七ツ森実・本多行
1
「あ……七ツ森くん、本多くんだ。」
「そそ。ミーくんには#4がビンゴだと思う。」
「それ、メイクさんと同意見だわ。ダーホンやるじゃん。」
「やった!」
「ねえ、二人で何の話してるの?」
「◯◯。」
「カラーリップのことだよ?」
「あ、はばチャのメンズコスメの特集で “Nana” が……って、えっ!?」
「それそれ!」
「それって……あの……」
「大丈夫。ダーホン、もう知ってるから。」
「そ、そうなの!?」
「ミーくんのお仕事のこと?うん、知ってるよ。」
「ダーホン、雑誌見てすぐわかったって。」
「うんうん、それよりさ、君は何番がいい?」
「え、わたし?」
「#1!」
(えぇと……本多くん、七ツ森くんの正体、知ってるの……?)
2
「……あ。 七ツ森くん、本多くん!」
「◯◯ちゃん。」
「……ダーホン、もういいか?俺、そろそろ仕事の時間だから。」
「あっ、ごめん。また相談させてよ。」
「ねえ、本多くん。ちょっと聞いてもいいかな。」
「うんうん。オレが知ってることならなんでも教えるよ!」
「えぇと……どうして七ツ森くんがモデルのお仕事してることを知ったの?」
「だって、雑誌にミーくんが載ってたよ。」
「でも普段の七ツ森くんとは全然違うよ?髪型とかメイクとか……メガネもしてないし。」
「ううん。痩せても太っても骨格は一緒だもん。メイクや髪型じゃ変わるわけないよ。だからオレにはNanaもミーくんも一緒に見えるよ。」
「そ、そっか……」
「ダーホン。ココでその名前を両方出すのはNGって言ったよな?」
「あれ?でも、君も知ってるんでしょ?」
「う、うん。」
「そういう問題じゃない。壁に耳あり障子に目ありだ。二人とも忘れるな。」
「ふぅーん。もう、みんな、知ってるんじゃない?ねぇ?」
(骨格でわかるなんて本多くんくらいだと思うよ……)
3
「あ……」
「ミーくん、ありがとうっ!」
「ん。」
「七ツ森くん、本多くん!」
「◯◯。」
「◯◯ちゃん。ミーくんのおかげでさ 妹の機嫌がいいんだよねー!」
「七ツ森くんのおかげ?」
「ま…… 女きょうだいと上手くやる正攻法ってヤツをな。」
「そそ。ミーくんちはお姉さんだけどね。やっぱり経験値が違うよ……」
「ふふ。わたしにも教えて?」
「それは……ヒミツ。」
「そだね。」
「えー……」
「だってさ、君とケンカしちゃった時に応用がきくかもしれないでしょ。」
「きょうだいじゃないけど、効き目はあるハズ。」
(うー……気になるなぁ)