文化祭会話 七ツ森実

 

出歩きイベント「ならではの1日」

「あ……」

「あ、七ツ森くん。何してるの?」

「歩いてる。」

「それはわかるよ。」

「巡回中。俺がこうして校内を歩いてるだけで風紀の取り締まりになるんだと。」

「なるほど……七ツ森くんは制服をきちんと着てるし背も高いから、けん制力があるのかも。」

「どうだか。ま、一日3回だけこうして校内巡回しろって氷室教頭に頼まれたから、行ってくるわ。」

(七ツ森くんて、学校だと模範生徒みたいな雰囲気があるもんね。がんばって!)

 

「ん? あれは……」

女性客A「エッ、生徒会長じゃないんだー。」

女性客B「いかにもって雰囲気なのにね~!ねえねえ、メガネ取ってみてくれない?」

「いえ。それはできません。」

女性客B「え~!絶対カッコイイと思うのに~。」

「七ツ森くん!」

「あ、呼び出しされてるんで。失礼します。」

女性客A「あーん……」

「ハァ……」

「大丈夫?」

「女子のナンパはこわい。何言って断っても動じねー……打つ手なし。あんたがあそこを通らなかったらどうなっていたやら……」

「ふふ。お役に立ててよかった。」

「ああ。タコヤキおごるよ。救出してくれたお礼。」

(やった!でも七ツ森くんて、制服姿でもやっぱり目立っちゃうのかな……?)

 

「よ。」

「あ、七ツ森くん。今年も巡回?」

「や。去年、あのジケンがあったから今年はなくなった。」

「あ……じゃあ、今年は文化祭を楽しむ時間が増えるね!」

「まあな。でも……」

「?」

「あぁ……そっか! あんた、今ヒマ?」

「今? 大丈夫だけど。」

「じゃあさ、一緒に見て回んない?去年まではひとり寂しくだったんで。」

「ふふ、いいよ。」

「よしっ。えーと……どこからがイイ?あんたについてく。」

「OK! じゃあ、甘い物の出店から回ろう!」

「わかってるねぇ。GO!」

(よーし!七ツ森くんを楽しませてあげなきゃ!)

 

クラス展示

1年目:和風喫茶

「お抹茶とみたらし団子、お待たせしました~!」

(ふぅ…… こんなにお客さんが来るなんて想像してなかった……)

「あ……」

「あっ、七ツ森くん。いらっしゃいませ!」

「ワナか。」

「?」

「甘いみたらし餡の香りにつられて来たら、そこには浴衣姿のあんたがいた。確実に逃亡不可能。」

「ふふっ! おすすめのお団子セットはいかがですか?」

「……ください。」

「お団子セット、1つ入りました~!」

 

「美味い……」

「ホント? よかった。」

「配膳も上手い。本物の甘味処より居心地いいかも。」

「ふふ、それは褒めすぎだよ。」

「笑顔もイイ…… フロア担当のおかげかもな?店のレベル上げてんの。」

(褒められちゃった! 大成功♡)

 

2年目:ダンボール迷路

「迷路だよ~。見事ゴールできたら、搾りたて牛乳が飲めるよ~。」

「そのセンス……オモシロすぎるし。」

「あっ、七ツ森くん! 牛のモーリィの迷路、どうぞ入って行って~!」

「モーリィとか牛はイイとして、搾りたて牛乳って。」

「すっごく美味しいよ?」

「そう言われると興味わくな……」

「迷路も楽しいよ?」

「……入ります。」

「では1名様、ごあんなーい!」

 

「ゴール。」

「あっ、七ツ森くん。お疲れさま!」

「意外とオモシロイ。牛柄デザインもおしゃれだったし。あ、搾りたて牛乳。ゲット?」

「はいっ、おめでとうございます!あちらに搾りたて牛乳を用意してまーす。」

 

「ウメ~。」

(それはヒツジ。 やったね、迷路は大成功!)

 

吹奏楽

1年目:楽曲演奏「クラシック」

(ちょっと緊張してきちゃった。ちゃんとできるかな……)

「あらら。緊張?」

「あ、七ツ森くん……うん。」

「そりゃそうか。おっきなステージで、大勢のお客さんを前にして、自分の芸を披露するのって大変なことだ。けど、お客さんはあんたの演奏を心から楽しみにしてる。もちろん、俺もな。あんたも失敗なんか気にしてないで、音楽を精一杯楽しみな。」

「音楽を楽しむ……」

「そうそう。……ほーら、ワクワクしてきただろ?」

「ふふっ!」

「GO!全力で楽しんで来い!」

「うん!」

(七ツ森くん、勇気づけてくれてありがとう!よーし、がんばるぞ!)

 

(良かった!初舞台、大成功みたい!)

「オツカレ。」

「あっ、七ツ森くん。上手くできたよ!」

「見てたよ。眠たくなんなかったから。」

「えっ?」

「や、クラシックって眠くなるじゃん?けど、さっきの演奏はトリハダ立つくらい感動したからさ。」

(やった!ちゃんと成果が出せたみたい!)

 

2年目:楽曲演奏「ゲームミュージック

(うわぁ……お客さんたくさん。去年より多いみたい。はぁ、緊張するな……)

「◯◯。緊張してんねー。」

「あ、七ツ森くん。うん……」

ゲームミュージック演るんだろ?人を楽しませるヤツ。その世界を紡ぎ出すあんたがそんなんじゃダメでしょうに。」

「みんなが知っている曲かもしれないと思うと失敗がこわくて……」

「それも含めて生オーケストラだ。案外、お客も楽しみにしてるかもよ?」

「えぇっ?」

「ハハッ! 今までやってきたことをやればいいさ。GO!」

「うん、行ってきます!」

(七ツ森くん、勇気づけてくれてありがとう!よーし、がんばるぞ!)

 

(うん、去年よりいい演奏ができたかも!)

「スゲー……」

「あっ、七ツ森くん。上手くできたよ!」

「マジ上手かったし、アレンジんとこ、超カッケー!」

「ふふっ、がんばったもんね。」

「そっか。うん。お客さんもみんな感動してたし、大成功だな。」

(やった!こんなに感動してもらえてわたしもうれしいな!)

 

3年目:楽曲演奏「フォース・ハート」

(今年は落ち着いていけそう。三年間、がんばってきたおかげかな?)

「◯◯。」

「あっ、七ツ森くん! 聴きに来てくれたの?」

「俺が来ないとでも思った?」

「ううん。来てくれると思ってた。」

「……ん。これなら最高の演奏が聴けそうだな。」

「うん。わたし、がんばるね!」

「お、おう。 ……ヤバ。俺のほうがドキドキしてきたし。」

「 ? それじゃ、行ってきます!」

「いってらっしゃい。客席から見守ってるよ。」

(七ツ森くんが応援してくれてる。よーし、三年間の集大成、悔いのないように演奏しよう!)

 

(三年間で一番いい演奏ができた。よかった……)

「スゲー……」

「あ、七ツ森くん。大成功だったよ!」

「ああ。オーケストラでウルっとしたの、初めてかも。」

「ふふ、喜んでもらえてよかった。」

「あんたのソロパート、女神降臨レベル。みんなウルウルしてたしな。三年間、オツカレさん。俺もさ、マジでいい経験させてもらったよ。」

(こんなに感動してもらえるなんて……三年間、吹奏楽でがんばってきてよかった!)

 

園芸部

1年目:ハーブティー

(今年の園芸部の出し物はカフェ。ハーブティーとクッキーを用意したけど……)

「よ。」

「七ツ森くん!来てくれたんだ。」

「ん……まあ。あんたの様子見に――
 やっ…… ハーブティーとクッキーだっけ?園芸部の店。」

「そうだよ。美味しさに自信があります!」

「お。そりゃ試さないわけにはいかないな。」

「ふふ!では、1名様ご案内お願いしまーす!」

 

「フゥ……」

「いかがですか?」

「美味い。癒される……」

「よかった。七ツ森くんの好みに合わせてハチミツもちょっと追加してみたんだ。」

「やっぱり?ほんのり甘いトコがマジでイイ。あんた、やるね?」

(やったね!七ツ森くんに褒められちゃった!)

 

2年目:ハーブティー&野菜即売会
3年目:オーガニックカフェ

 

生徒会執行部

1年目:文化祭運営「雑用、連絡係」

「よし、と。 椅子は運び終わったから、次はどこに何を運ぶんだっけ……」

「よ。お仕事オツカレさん。」

「七ツ森くん。ごめん、ちょっと今忙しくて……」

「見りゃわかるよ。なんか手伝うか?」

「ありがとう。でも、これは自分の担当だから。」

女子生徒「すみませーん。視聴覚室の暗幕が足りないので持ってきてもらっていいですか?」

「はーい!これから行きます!」

「やっぱ手伝う。ほっとけないし。」

 

「はー……結構運んだな。」

「うん。七ツ森くんが手伝ってくれたおかげですごく助かっちゃった!」

「暗幕重たいの、よく知ってるから。女子ひとりに任せらんないし。一生懸命な人見てると、なんかほっとけないし?」

「ふふ!」

「仕事が一段落したら出かけようぜ?ご褒美にタコヤキおごってやる。」

(やったー!お仕事も上手くいってよかったな)

 

2年目:文化祭運営「資材担当」
3年目:文化祭運営「フロア担当」

 

手芸部

1年目:カジュアルウェア

(ギリギリ仕上がったけど、いよいよランウェイ……緊張しちゃうな……)

「◯◯。それ、自分で作った服?」

「あ、七ツ森くん。うん、そうだけど……」

「緊張してんの?」

「ちょっと。」

「自信持て。マジで、あんたが一番カワイイから。」

「えっ……」

「GO!カッコイイとこ、見せてくれよな。」

「うん!」

(七ツ森くんに応援されたら勇気出たかも。よーし、キメるぞっ!)

 

(よかった、なんとか成功したみたい!)

「オツカレ。いいステージだったぜ?」

「ありがとう!」

「俺も一緒に並んで歩きたかったなー。」

「ふふ!」

(やった、大成功!)

 

2年目:パーティードレス

(初めて作ったドレス。自分では気に入ってるんだけど……)

「あ……」

「あっ、七ツ森くん!」

「化けたね……」

「もう、それどういう意味?」

「あ……言い方悪かった。すごく、綺麗。」

「ホント?ありがとう!」

「なる……大人の魅力のパンチは強め、と……」

「?」

「堂々と行きな。それでお客をノックアウトだ。」

「ふふ!行ってきます!」

(七ツ森くんが応援してくれてる……!よーし、キメるぞ!)

 

(よかった、なんとか成功したみたい!)

「オツカレ。あんた、最高にキマってたぜ?」

「七ツ森くん。ありがとう!」

「ハハ!ステージの上じゃクールだったのに今はチャーミングときたか。」

「ふふ!」

「これ以上俺を誘惑しないでくれよ。」

(やったね、大成功!がんばった甲斐があったな)

 

3年目:ウエディングドレス

(今年は手芸部伝統のウエディングドレス。キレイにできたと思うけど……)

「…………」

「あ、七ツ森くん。……どうしたの?」

「綺麗だ。」

「あ、ありがとう……ちょっと恥ずかしいな。」

「…………
 その姿のあんたと将来並ぶのは誰なんだろうな。」

「ふふ。」

「俺……マジでスイッチ入ったわ。」

「?」

「送り出すのも不思議な感じだけど……精一杯やってきな。」

「うん!」

(よーし!高校最後のランウェイ、キメるぞ!)

 

(やったー! 大成功!!)

「おかえり。」

「あ、七ツ森くん。ステージ、上手くいったよ!」

「ああ。本物のモデル顔負けのいいステージだった。次は……本番か。」

「ん?」

「ん? あー……いい花嫁さんになれるといいな?」

(やった、三年間手芸部に打ち込んできて、本当によかった!)

 

ローズクイーン

「よ。」

「あ、七ツ森くん!」

「ローズクイーン、本当になっちゃったんだな。」

「うん。」

「おめでと。」

「ありがとう。」

「ティアラと真紅のガウンをまとった姿、最高にキレイだった。」

「あ、ありがとう……」

「この人のためなら、俺はどんなことでもできるんじゃないかって思った。」

「そんな……」

「◯◯。さすが、はば学の “女王様” だな?」

「え?もうっ、七ツ森くん!」

「ハハッ!怒り顔の女王様もカワイイぜ?」

(もう……でも、ローズクイーンになれてうれしいな)