抜け駆けデート会話 七ツ森実

 

グループデート後

「◯◯。」

「あれ?七ツ森くん、まだ帰ってなかったの?」

「こんな不完全燃焼で帰れるワケがない。」

「えっ?」

「時間、まだ大丈夫ならもう少しつき合ってくれないか。」

「うん、もちろん!」

「サンキュ。」

「それで、これからどうするの?」

「不完全燃焼を燃やし尽くす。二人で思いっきり、遊ぼ。」

 

近所の公園

「こういう公園でデートすんのも悪くないな。」

「うん。」

「あんたのウチの近所なら、なおさら。」

「どうして?」

「なんかさ、子どもの頃のあんたがあのブランコとかすべり台で遊んでる姿を想像するだけで癒される。」

「ふふ。どうして癒されるの?」

「だって、カワイイに決まってるじゃん。笑ったり泣いたりしてる顔とか、今と変わらなそうだし?」

「そ、そうかな?」

「ああ。 ……もし俺も、この近所に住んでいたら、あんたとトモダチになって遊んでたのかな。」

「そうだね…… きっと、仲良しになれてると思う。」

「そっか。……うん、そうかもしんないな。」

「ふふ!」

 

近所の公園2

「静かだね……」

「ああ。でも、今の俺にはちょうどいいサウンドかも。」

「ふふ。みんなと遊んで疲れちゃった?」

「いや、ぜんぜん。むしろ遊び足りないカンジ。」

「そうなの?じゃあ、ここの公園で遊ぼっか?」

「 !? すげー発想。ホントあんた、オモシロすぎます。」

「そ、そうかな?」

「そう。オモシロくて、どピュアで。本当に目が離せない。」

「うぅ……」

「ここの遊具はさ、子どもたちのもの。俺みたいなデッカイヤツにはもろすぎる。あんたが子どもの頃の思い出もたくさん刻まれてるんだろ?そういうものも、こわしたくはないから。」

「七ツ森くん……優しいんだね。」

「まあな。多少、人を選ぶけど、あんたには最大級に紳士だぜ?」

「ふふ!」

 

ショッピングモール:スカイラウンジ

「うーん、遠くまでよく見える…… 気持ちがいいね!」

「だな。あ、はば学が見えるぞ。」

「えっ、どこ?」

「あそこ。ほら、もっとこっち来てみ。
 俺の指先、たどって。あの赤い屋根の家から、坂道を上って……」

「うん。」

「その先の森を……」

「あっ!」

「あっ……ゴメン。近すぎた。」

「う、ううん。」

「急に二人だけになると距離感が難しいな?」

「あ……ふふ!」

「さて、今度はなに見つけるかなー。」

 

ショッピングモール:スカイラウンジ2

「ハァ……」

「七ツ森くん、ため息?」

「あ、ゴメン。さっきまでのドタバタのあとに今のまったりだろ?なんか、ホッとしたため息。」

「そっか。みんなではしゃいだもんね!」

「主にアッチの二人がな?……たく、元気すぎるんだよ。」

「ふふ。二人とも、もう家に着いたのかな?」

「どうだろな。 …………」

「ん、どうかした?眉間にシワよせて。」

「や…… 抜け駆けみたいなことして俺ってヒキョウ者だな。」

「そんな……」

「ま、乗っかってくれたあんたも同罪だけど?」

「えっ!?」

「ココでその『えっ』はないでしょ。ズルいヤツめ。」

 

水族館

「この時間になるとカップルが増えるんだよな、ここ。」

「ふぅん……」

「クールっすね……」

「えっ……?そ、そうかな。」

「今度は違う。オモシロイ。」

「うぅ……」

「ハハッ!コロコロ表情変わって、ホントに飽きないな、あんたは。」

「もう……」

「スネないで。褒めてるんだから。 カップルか……俺らは何だと思う?」

「えっ?」

カップル?トモダチ?その他のなにか?」

「七ツ森くん、わたしで遊んでる?」

「当たりー。表情見てるだけで楽しいから。」

「もうっ!水族館に来たんだから魚たちを見よう?」

「ごもっとも。じゃ、デートの続きを楽しみましょ。」

 

水族館2

「水族館て、案外スキ。」

「案外?」

「そ。写真映えとかそういうの置いておいてさ。子どもの頃からずっと。」

「そっか。」

「だって、スゴクない?このサカナたち……海洋生物、その種類、数。さらには照明効果も、地上には無い世界観。水族館の中にいると、地球の深いところに一気にテレポーテーションした気がする。」

「たしかに……よく見るお魚やクラゲたちもいるけれど神秘的に見えるかも?」

「そうそう。青、緑、紫色の世界に、キラキラしたものが常にうごめいていて。言葉にできないんだよな…… わかってもらえるかな、この高揚感。」

(ふふっ!七ツ森くん、すごく楽しそうだな)

「ニヤニヤしてるな…… 俺、おかしいか?」

「ううん、ぜんぜん。わたしもおもしろいよ!」

 

ダーツコーナー

「……さて。軽く勝負でもするか。」

「うん、いいよ。」

「なんか賭けてみる?」

「賭けるって、ジュースとか?」

「違う。そういうのじゃなくて……あんたの時間……とかは?」

「えっ?」

「カウントアップで、俺の得点分、あんたの時間をもらう。あんたの得点分、もらった時間を返す。」

「ねえ、その賭けのメリットって……」

「あ……そうだな、ゴメン。俺にしかメリットないわ。」

「もう。」

「でも、ちょっと本気だったんだけどな。もし帰れなくなっても…… ……と。アブね!俺、すげーチャラいこと口走りそうになったぞ!?」

「七ツ森くん?」

「そんな、どピュアな目で見るな!今の俺を見るな!」

「???」

 

ダーツコーナー2

「よしっ、キマった!」

「七ツ森くん、ダーツ上手だなぁ。」

「そ?人並みだと思うけど。少し休憩しようぜ。」

「うん。」

「…………」

「…………」

「なんだよ?急に黙り込んで。」

「ちょっと。なんだか、先に帰った二人に悪いコトしてるみたいで。」

「悪いコトかー。ま、抜け駆けしたようなモンだし?」

「抜け駆け……」

「うっ……なんか、あんたのクチからそう言われるとマジであいつらに悪い気がしてきた。」

「……やっぱり、悪いコトなのかな?」

「あんたはぜんぜん悪くない。安心していいから。もし、これで俺があいつらに恨まれるなら、それは……ライバルバトルが始まるってワケだ。」

「???」

 

カラオケBOX

「さて。なに歌う?お先にどーぞ。」

「七ツ森くんからでいいよ。」

「俺はね、あんたのステージ見てからスイッチ入れようと思ってんの。」

「うーん。どうしようかなぁ……」

「…………」

「んー…… ん?」

「 !! 」

「先に歌いたくなった?はい、リモコンどうぞ。」

「や……そうじゃないんだけど。 薄暗い部屋で改めて二人きりになるとヤバいな、俺。」

「曲名が思い出せないの?わたし、探してあげるよ。出だしの歌詞を――

「あぁもうっ!あんまりカワイイこと言うなっ!マジで俺、ヤバいことしそうだから!」

「 !? す、すごい歌詞だね……」

「へ……?」

 

カラオケBOX2

「ねえ、カラオケBOXのお部屋って……」

「ん?」

「すごく狭いよね?」

「エッ!?」

「ほら、使用人数が二人だけだとこういう狭い部屋になることが多いから。」

「あ……まあ、そうね。どしたの、急に。」

「さっきの4人でこの部屋に入ったら狭いんだろうなあって思って。」

「そりゃそうだ。」

「でも、席は4人分あるし。どういう席順になるのかな。」

「…………あんた、どうしたい?」

「えっ?」

「席は4つ、人数も4人。どこに、どう座りたい?」

「わたし……わたしは……」

「ん?」

「ずっとステージの上!……かな?」

「ご名答……」

 

茶店

「はぁ……ほっとひと息ついた感じがするね?」

「ああ、今日はドタバタだったからな。ようやく静かな時間突入だ。」

「ふふ。」

「あんたは?疲れてない?」

「ううん。楽しくて、まだドキドキしてる。」

「ドキドキ……余韻、てこと?」

「うーん……どうだろう。ちょっと違うかも?」

「なあ、俺の目、見て。」

「う、うん。」

「…………」

「…………」

「ドキドキ、どうなった?」

「もっと速くなったかも……?」

「よし。」

(???)

 

茶店

「七ツ森くん、スイーツいっぱい頼んだね……」

「ま、夕飯ぶんも半分兼ねて。」

「あ……そっか。七ツ森くんはひとり暮らしだもんね。」

「そ。だから、外出で食事をするときは少しだけハラを満たしておく。」

「ふぅん…… 自炊はするんだっけ?」

「ああ。自分の好きな料理だったらだいたい作れるし。」

「えらいなぁ。」

「あんたもひとり暮らしすればきっとできるさ。」

「そうかな?」

「ああ。手料理で男の胃袋を掴めりゃ将来は安泰だぞ?」

「う、うん?」

「俺は、辛いものと甘い物さえあれば90パーセント、掴まえられるハズだ。」

(七ツ森くんの胃袋を掴むヒント???)

 

イルミネーション

「さすがにカップルが多いな……」

「うん、そうだね……」

「ほら、人が多いから。もっと近くにいな。」

「う、うん。」

「……もしかして、恥ずかしい?」

「えっ?」

「や、なんていうか…… あいつら差し置いて、抜け駆けしてこんなトコでデートしてるワケで。もし、こんなシチュエーションなんか求めてなかったら……ゴメン。」

「七ツ森くん……」

「俺、気が急いちゃってさ。気づいたら、あんたを追いかけてた。このシーズン、鉄板シチュエーションで一緒にいたいって。そんな気持ちが抑えられなくて。自分勝手だった。ホント、ゴメン。」

「ううん。誘ってくれてありがとう。イルミネーション、キレイだね?」

「◯◯…… マジで、マジになるかも。」