ナンパ撃退 七ツ森実

 

公園入口・はばたき駅

「七ツ森くん、まだ来てないみたい……」

男「向こうの世界いくのか?」

「えっ?」

男「う、カワイイ……」

「あの、わたしここで待ち合わせしてるんですっ……!」

男「オレも。」

「誰だおまえ。」

男「へっ?」

「七ツ森くん!」

「遅れてゴメン。で、こちら、どちらサン?」

「知らない人。」

「そっかそっか。エライぞ?知らない人には絶対、ついて行っちゃいけない。」

男「誰も知らない世界に興味ないのか?」

「ああそうだ。おたくはもうこの子に用は無いっすよ。」

男「ハ?」

「俺ら、これからデートなんで。サヨナラ~。」

男「興味ないってか、聞いてねぇ……」

「七ツ森くん、ありがとう……」

「お礼なんかすんな。俺が遅れたから悪いんだし。あんな安っぽいヤカラに……本当にゴメンな?じゃ、デートしましょ。」

 

駅前広場・バス停

「あれ?七ツ森くん、まだ来てない……」

「七ツ森くん、遅いなぁ……」

男「……オッケェーイ!そんじゃ、今晩の打ち合わせのシースー店は、いつもの三ツ星でヨロ! アラ、アララ!まだまだいるモンなのねぇ……はばたき市には、ダイヤの原石が!」

「……え?」

男「はい来た、今日もドーン!はばたき市でのプロデュース歴ウン十年の私めにお任せあれ!今日からキミは、歌って踊れるアイドルグループ、真っ逆坂4――

「おたくも粘るねぇ……」

「七ツ森くん!」

男「あれ?高校生モデルのNanaクン?君、そーだよね?ネ?」

「そーっす。おたくね……こんなトコで仕事してるとまぁたウチの事務所からクレーム行きますよ?」

男「そーなのよ……そうそう!ココ、ウチのシマじゃないから目立つとちょーっとマズイんだよねぇ……」

「……あ。ウチの社長だ。」

男「ヤバイッ!そんじゃ、御社のシャチョーサマによろしくどうぞ~!」

「あのおっさん、ウチの学校のOBらしいぜ?」

「えぇっ!? この街じゃけっこう有名人だよね?……あまり良くないほうで。」

「ああ。けど、なんだかんだ出世だけはし続けてるみたいだよな。雑草根性も花開くモン、ってか…… ……ま、いっか。行こうぜ。」

 

「七ツ森くん、まだ来てないみたい……」

男「ああ、もうこんな時間だ……早く行くよ。」

「えっ?」

男「へぇ、その装備いいじゃん。」

(この人もじゅうぶんヘンな人に見えるけど……)

男「限定クエスト『愛のビッグウェーブ』、行くんだろ?乗り遅れるぞ。」

(ゲシッ)

「アホらし。なんだそのダサいキャッチコピーみたいなセリフは……」

「七ツ森くん!」

「悪い。ロッカーのカギ、どっかに落としちゃってちょっと探してた。」

「えぇっ!? 鍵はみつかったの?」

「あったからこうして来たんだよ。」

「もう……失くし物には気を付けてね?」

「わかってマース。」

男「なぁ、三人でもいいけど、『愛のビッグウェーブ』。」

「まだいたのかよ。本気でナンパすんなら――そうだな……うん。 ダメだ。成功率を上げられる助言をしてやろうと思ったけど、見つかんねぇや。」

男「え、助言欲しい……」

「じゃ、俺らはその、ナントカのビッグウェーブに乗って来るんで。サヨナラ~。」

男「またソロプレイか……」

「ナントカってなんだっけ?」

「さて、なんだっけ?行こうぜ。」