大接近 氷室一紀

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1回目

「……やっぱ女子って、けっこうスキンシップするんだ。」

「そうかな?」

「自覚ないわけ?女子の中でも君って激しいほうだよ。」

「……他の子も氷室くんのこと、触ってるの?」

「な――!? そんなわけないだろ!誰にでも触らせてると思ったの?君にしかこういうこと許してないから!」

「ご、ごめん!でもわたしは激しいって……」

「女子同士で戯れてるのを見ての感想。へんな誤解しないで。もしかして、同性異性関係なくやってるの?」

「ううん、やってないよ。」

「……本当に?」

「本当に!」

「なら、いいけど……あ、違う、よくない。僕に対しても自重して。いい?」

「わ、わかった。」

「ふぅ……先が思いやられる。」

(???)

 

2回目

「自重してって言っただろ。」

「え?」

「その、ペタペタペタペタ触るの。」

「あっ……」

「君って学習能力ない?三歩歩けば忘れるっていう鶏なわけ?違うだろ、人間だろ、学習したら?」

「ごめん……」

「謝って欲しいわけじゃないし。」

「本当にごめんね。もうしない。」

「一度、裏切られたわけだけど?」

「本当にしないから!」

「あ、そ。はあ……」

「氷室くん?」

「……適度にほどよく。」

「え?」

「適度にほどよくなら触ってもいい。」

「えっ、でも……」

「なんども言わせないでくれる?どうせ一切やめろって言っても無駄なのはわかってるから、妥協案。わかった?」

「う、うん……」

「じゃ、そういうことで。帰る。」

(適度にほどよく……か)

 

3回目

「まただ……」

「えっ?」

「触るのは、適度にほどよくって言っただろ?」

「あ……」

「こっちが黙ってたら、調子に乗って……」

「ごめんなさい……」

「だから、謝ってほしいわけじゃない。もっと慎みを持ってくれる?……僕だって男なんだし。」

「え?」

「なに、その驚いた顔?もしかして、女子同士の感覚で触ってたわけ?」

「ち、違う!ちゃんと男の子だってわかってるよ?」

「へぇ?男だってわかってて、触ってるんだ?ある意味もっと問題なんだけど。」

「う……」

「じゃあ、自分が女子だってのは理解してる?」

「も、もちろん!」

「ハァ……感覚がお子様なだけか。」

「ええ!?」

「あのさ、もっとしっかりしてくれる?一応、年上なんだから。」

「う、うん……がんばる。」

「……本当、頑張って。」

(よし、年上らしくしないと……!)

 

4回目

「本当、わかってない。」

「えっ?」

「僕も男だって言ったよね?それとも後輩だからって、なめてんの?」

「そんなこと……!」

「その気になれば、君のことだって力づくでどうとでもできるんだよ。」

「……力づくって?」

「君があおるからいけない。僕は悪くないよ。」

「あおってるつもりは……」

「自覚がなくてもあおってる。」

「う……」

「適度にほどよくって言った僕も悪かったけど、まさかここまでとは思わなかった。」

「そんなに触られるのが嫌?」

「嫌じゃない。けど、犬じゃあるまいし、触られてただ嬉しいじゃ済まないんだよ。その行為に意味を求めるし、その先のことだって、意識せざるを得ない。……わかるでしょ。」

「う、うん……なんとなくは。」

「なんとなくは以後禁止。勉強して出直してきて。以上!」

(勉強って、どうすれば……!?)

 

5回目

「ああ、もう!」

「!? 氷室くん……?」

「あれだけ言ったよね?自重しろ、行動を慎め、勉強しろって!何1つ実行できてないだろ!」

「意識は、してるつもりなんだけど……」

「……どこが?今のが、勉強したうえで自重した慎みのある行動だって言うなら、全力はどうなるんだ?」

「全力か……」

「考えないでいいよ。付き合ってられないから、帰る。」

「えっ!? 待って!」

「なに。」

「その……きちんと謝りたくて。」

「……はぁ。だから、何度も言ってるでしょ。謝ってほしいわけじゃないって。君に触れられること自体は嫌いじゃないし、むしろ……嬉しい。」

「うん……」

「ただ、もっと自覚してほしい。その行動は、君が思っている以上に僕にとっては刺激が強すぎるって。……こんなこと、言わせないでよ。」

「ごめんなさい……」

「こっちも、声を荒げてごめん。でも、そういうことだから。」

「うん。」

「……じゃ、帰る。おやすみ。」

(ちょっと反省しないとかな……)

 

6回目

「…………わかった。僕も認識を改める。これまでは、こっちの要望を一方的に押し付けてたし。」

「氷室くん?」

「僕は適度なスキンシップを求めたけれど、君は過度なスキンシップがしたいんだろ?」

「そ、その表現は……」

「僕にとっては、君のスキンシップは過度なんだ。」

「う……」

「だから、1つ確認させて。この過度なスキンシップは、僕相手だからやってる?それとも――誰でもよかった?」

「そんなことない、氷室くんだからだよ。」

「……そ。じゃ、努力をするしかないか。君を自制させるのより、そっちの方が手っ取り早そうだし。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。じゃ、帰る……またね。」

(氷室くん……)

 

7回目以降

「ほんと、理不尽。」

「あ、また……ごめんね?」

「いつまで我慢できるか……知らないから。」

 

2択会話

「なんで触るわけ?」

 ダメ?

   「好きにしたら?」

 触りたいから

   「なにそれ……」

 

「なんか企んでるだろ?」

 えへっ!

   「そんなふうに笑ってごまかしたって意味ないから。」

 イイコトだよ

   「嫌な予感しかしないんだけど。」

 

「僕で遊んでるでしょ?」

 もちろん

   「……認めるんだ。」

 遊びじゃない、本気だよ

   「はぁ!? ……その冗談、ナンセンス。」

 

「僕のこと、後輩だからそういじるワケ?」

 もちろん

   「……あ、そ。今後もそのスタンスでいて。」

 かわいいからね

   「かわいいって……なにそれ。」

 

「……近くない?」

 あっ、ごめん!

   「別に怒ってるわけじゃないし。」

 もっと近くにいっちゃダメ?

   「…………いいけど。」