喫茶店会話 本多行

 

好きなテレビ番組について

「テレビは、どんな番組が好き?」

「なんでも好きだよ。あ、でも宇宙誕生とか、地球46億年の進化とか、特に好き。」

「本多くんらしいかも。クイズ番組は?」

「好きだよ。回答者になった気分で、ハイハイって答えてる。」

「ふふっ、楽しそう。」

「でも妹は怒るんだよ。お兄ちゃんと観てるとつまんないとかさー。」

「ああ、妹さんの気持ちちょっとわかるかも。」

「ええっ! 君もか。へこんできたよ……だってさー、知ってて黙ってるの変だよね?」

(たくさん知識があると大変なんだな……)

 

好きな食べ物について

「好きな食べ物ってある?」

「それはラーメン!」

「即答だね。」

「濃厚味噌にハマってたけど、きれいな醤油スープ、透明な塩も好きかな。煮干し、アゴ出汁とか使った魚介系と、とんこつ、鶏がらの動物系のブレンドもいいんだ。」

「ふふっ。本多くんが言うと、実験って感じ。」

「そそ、ラーメンは化学反応だよ。 ケミストリーっ!

(びっくりした……)

 

好きなスポーツについて

「スポーツって、何かやってる?」

「オレ結構好きなんだよ、スポーツ。」

「へぇ、少し意外かも。」

「そう?どんな運動も好きだよ。ただね、向いてないみたい。特に野球。興味ありすぎて体が止まっちゃうんだよ。」

「止まっちゃうの?」

「そそ、完全にフリーズ。凄い人はボールが止まって見えるって言うけど、オレは逆、自分が止まっちゃうから。」

「ええっ?」

「回転数とか回転軸とか気になるから、ピッチャーの投げたボールをジーっと見ちゃう。見えないけどねっ。」

「それじゃ、打てないよ?」

「うんうん、まったく。」

(本多くんはスポーツ好きっていうより、何にでも興味があるって感じかな)

 

よく聴く音楽について

「本多くんはどんな音楽が好き?」

「あんまり意識したことないな。」

「音楽は聴かないの?」

「妹がよく聴いているアイドル歌手の曲は自然と覚えちゃうってくらい。もしかしたら、オレも好きなのかなぁ?」

「へぇ、今度聴かせて?」

「りょーかい!じゃあ、踊りもね。」

「振りもできるの?」

「うんうん、体が動いちゃう。妹には『怪しい踊り』って不評だけど。」

「ふふっ、仲がいいんだね。」

「昔は二人でテレビの前で踊ってたのに、最近はオレのソロ。ちょっと一緒にやってみる?」

(えぇと……妹さんの気持ちわかるかも……)

 

趣味について

「ねぇ、本多くんの趣味のこと、教えてよ。」

「だー、趣味か。それ聞かれるのが一番困るんだよなー。」

「そんなに悩むことなの?」

「うん、趣味って言葉の定義にもよるけど、好んで習慣的に行う行為って意味ではさ……」

「そんな難しく考えないでいいよ。」

「うーん、自由な時間に習慣的に行っているって言えば、生き物の世話かな。」

「ペットの世話?」

「そそ。植物も昆虫も魚も色々だよ。たーくさんいるから。」

「ふふっ、大変そう。」

「水槽の中で、植物、昆虫、魚の小さな生態系を維持できていると、あまり手間はかからないんだ。」

「へえ、すごい!」

水草から、酸素の気泡が生まれると、太古の地球の海を想像したり?で、今度は望遠鏡をのぞき込むんだ。」

(本多くんの趣味って、簡単に教えてもらえることじゃないのかも……)

 

学校について

「ねぇ、本多くんってどんな中学生だったの?」

「ずーっと図書室にいたよ。図書室の本を読破するって、決めてたからね。」

「すごい。全部読んだの?」

「ううん、むりだった。もうちょっとって時にね、図書カードからパソコンでのデータ管理に変わっちゃってさ。どの本を読んだか、わからなくなった。」

「でも、すごいと思う。」

「全然。だって、読んだかどうかわからないってことは、身についてないってことでしょ?でもおかげで、図書室の呪縛から解放されて外に出られたし、誰かに教える楽しさに目覚めたのもその頃。」

(……そっか、中学時代の本多くんは今よりもっと本の虫だったんだ)

 

将来の夢について

「本多くんは将来の夢ってある?聞かせて欲しいな。」

「夢かぁ!夢のメカニズムには興味あるけど、そういうことじゃないよね?」

「ふふっ、将来の夢だよ。」

「小学校の先生が今は有力かな?」

「小学校?大学教授じゃなくて?」

「そそ、小学校ってところが重要なんだ。」

「そっか、本多くん、子ども好きだもんね。」

「まあそうなんだけど、そこじゃない。」

「えぇと……じゃあ、どうして?」

「小学校は全教科教えられるでしょ?国語、算数、理科、社会っ!!」

「そっか、なんでも知ってる本多くんには、小学校の先生がぴったりかも。」

「うんうん、ついでに体育も。だからさ、今のところは小学校の先生かな。」

(本多くんなら、すごくいい先生になりそう)

 

異性の好みについて

「本多くんは好きな女の子のタイプってある?」

そだねー。やっぱり大事なのは好奇心。」

「好奇心?」

「そそ。知らないことを調べたり、観察したりさ オレと一緒に面白がってくれる人かな?具体例を挙げると君がいい。」

「ええっ!?」

「好奇心が旺盛で、オレに付き合ってくれて、面白い。ほらね?」

「面白い?」

「うん、君って最高に面白い。」

(面白いって……喜んでいいのかな?)

 

恋愛について

「ねぇ、真面目に聞くんだけど、いい?」

「なになに?」

「あのね、『恋愛』ってどう思う?」

「それ、オレも知りたい。」

「え?」

「ただ、全然わからないってわけじゃない。ヒントはあるんだ。君といると、時々あるんだ。この辺がぎゅーっとなる感じが。最初は意味がわからなかったけど、多分これ、『恋愛』って感情に起因してるんじゃないかな。」

「えぇと……」

「うっ……」

「えっ! どうかした?」

「今もなった。ぎゅーってこの辺。君の声聞くと時々なるんだ。」

「ちょっと恥ずかしいよ……」

「あ、もしかして君もなる? オレの声聞くと。
 ◯◯ちゃん。」

「えぇと……」

「あれ?だめ?おっかしーな?オレの声で君もこの辺がぎゅーって……」

(本多くんの恋愛観。いつか聞くことができるのかな……?)

 

告白未遂

「あのさ、この前オレに恋愛について質問したことあったよね。」

「うん、あったね。」

「今のオレにとっては最大の難問かも。ずっと考えてるのにいまだに最適解が見つからないんだ。どんな本を読んでも、ネットで検索しても答えが見つからない。こんなの初めて。」

「あ……ごめんね、変なこと訊いて。」

「ううん。むしろすっごく面白い。君といるとこんな風に、初めてがたくさん出てくるんだ。おかげで毎日が楽しくって仕方ないよ。だからオレ、君のことは大好き――
 えっ!」

「えっ?」

「オレ……今、何て言った?」

「えぇと……『君のことは大好き』って……」

「だー!何言ってんだろ、オレ!ゴメン、今のはウソ!いや、ウソじゃない!ウソじゃないんだけど、今言うコトじゃなくて!」

「う、うん。大丈夫だから、落ち着いて?」

「うう……」

「本多くん、送ってくれてありがとう。えぇと……大丈夫?」

「あ、うん。こっちこそありがと。オレは平気……たぶん。まだ頭ん中グルグルしてるけど、余計なこと口走る前に今日は帰るよ。それじゃ、またね?」

(本多くん……)

 

風真・本多・七ツ森グループ

風真くんについて

「本多くん、最近、風真くんとよく話してるね?」

「そそ!リョウくんちって、骨董品やアンティークを多く扱ってるでしょ?オレが知らない専門知識だったり、色んな技術や技法を知ってるんだ。もっと訊きたいくらいなんだけど、ウンチクを披露するのが仕事じゃないって、あんまり話してくれないんだよね。」

「話すのが嫌いなのかな?」

「そうじゃないとは思うよ?聞けばちゃんと答えてくれるし、ヤな顔はしないんだ。ただ、一歩引いてるっていうのかな?そーいうトコ、オレと違うんだよね。オレだったら興味をもってくれる相手なら、積極的に話しちゃうなー。」

「ふふっ。」

「そそ。そうやって君が反応してくれると尚更ね!リョウくんのこと、少しは見習おうと思うんだけど、やっぱオレにはムリかなー?」

(本多くん、風真くんのこと慕ってるんだな……!)

 
本多くんについて

「最近、本多くんの周りすごくにぎやかだよね。」

「うんうん、確かにそうかも!オレ、中学生の頃は、ひとりで図書室にこもってたからさ。」

「そっか……」

「母さんからはよく、知識だけじゃなくて、もっと実体験を大事にしなさいって言われたよ。
そーいう意味でも、オレにとってリョウくんやミーくんと一緒にいることはすごく大事。当たり前のことだけど、同じものを見ても二人ともまったく違う見方をする。その結果、自分が気づかなかったことを、二人の目を通して知ることができる
――
それってすっごくワクワクしてこない?オレはする!」

(本多くん、楽しそう!ホントに充実してるんだな……)

 

七ツ森くんについて

「本多くん、最近、七ツ森くんとよく話してるね?」

そだねー。話してるのはほとんどオレだけど。ミーくんてさ、たまに誰も知らないようなブランドのアイテム見つけてくるんだよね。でね、そんなのどこで見つけてくるの?って尋ねるんだけど――いつも渋い顔をされる。学校で話しかけた時なんかは、特に。」

「そうなんだ?」

「うん、でもね、面倒くさそうにしてたわりには最後までオレの話に付き合ってくれるんだ。オレはそんなトコも含めて、ウマが合うと思ってるよ。」

(ふふ、いつか七ツ森くんにも訊いてみたいな……?)

 

男友だちだけで話す話題って?

「最近、風真くんと七ツ森くんとよく一緒にいるけど、どんな話してるの?」

「うーん、どんな話してたかな。一般的に、男友だちが集まると 好きな女の子のタイプとか服装とか、そーいう話をすることが多いのかな?もっとも、オレたちはそーいう話しないけど。」

「そうなんだ?ますます気になる……」

「話してるのはほとんどオレかな?リョウくんは時々ツッコんでくれるんだけど、ミーくんは興味なさそうにしてる。でも、二人ともどんだけつまんなそうなカオしててもちゃんと返事はしてくれるんだよ。」

「ふふっ、思い浮かぶかも?」

「そそ!思い出した。三人とも、君のことはよく話すね。」

「えっ!」

「あー、そっか……だから、オレたちが集まっても好きなタイプについて話すことがないのか。」

(……んん?)

 

わたしの存在について

「最近、風真くん、七ツ森くんとわたしたち、4人でいることが増えたよね。」

「一緒にいると楽しいからね。」

「男子の中でわたしだけ……周りから見ると、やっぱりおかしいのかな?」

「急にどしたの?誰かがおかしいなんて言ったの?」

「あ、ううん。そういうわけじゃないんだけど……」

「うーん、そーだね。君はオレたちの中ではハブ的な存在なんだよ。ハブって言ってもヘビじゃなくて、ほら、ハブ空港とか言うでしょ?複数の拠点を結ぶ結節点としての役割。それがハブ。
リョウくんやミーくん、それにオレってさ、趣味や考え方も違って、普通だったらあまり接点がないんだ。なのに、君という存在が間にいることで、違和感なく一緒にいられる。
あくまでもオレの考えだから、二人に訊いたら、ぜんぜん違う!って言われるかもしれないけど。ただ、二人もオレと同じく、君を不可欠な存在だと思ってる。これは確実!
これで不安な気持ちは吹き飛んだ?」

(やさしいな……本多くん、ありがとう)

 

グループの絆について

「最近、風真くん、七ツ森くんとわたしたち、4人でいるのが普通になってきたね。」

「言われてみれば!全然、意識してなかった。それくらい自然になったってことかな。」

「今みたいな関係って、卒業したらもう終わりなのかな?」

「リョウくんは骨董店を継ぐのかな……?ミーくんはどうだろう……?」

「本多くんは……?」

「うーん、正直まだわかんない。興味あることがありすぎて、1つに絞れないんだよ。」

「じゃ、やっぱり卒業したら……」

「そこまで心配することないと思うけどな。仮に物理的な距離が遠くなったとしても、肝心なのは、心や気持ちの距離じゃない?だから、形が変わることはあってもオレたちの関係が終わることはないと思うよ。オレ、そーいうとこは楽観的なんだ。それとも……君は終わらせたいの?」

「まさか!」

「なら、仮定の話をするより今を充実させることの方が良くない?オレ、その方が絶対に楽しいと思う!」

(うん、本多くんの言う通りだよね!)

 
ちょっとドキドキしてる……

(あれ?どうしたんだろう、わたし。すごくドキドキして……)

「どしたの?」

「急にドキドキしてきて……」

「よく見たら顔も赤いし、もしかして体調悪い?」

「えっ。」

「大変だ!ますます顔が赤くなってる!熱あるんじゃない?」

「ま、待って!その……あんまり見ないで欲しいかも?」

「ええっ、オレのせい……?何かした?体調が悪そうだったから、様子見てただけなんだけど。」

「……たぶん、それかな。」

「どれ?」

「その……見つめ合っちゃうから……」

「なんだ、そゆこと?びっくりし―― ……あれ?なんだろ?オレまでドキドキしてきちゃったよ。これ……待って、ちょっと深呼吸!」

(本多くんにドキドキがうつっちゃった……)

 
本多くんを見つめる

「…………」

「ん?オレの顔に何かついてる?」

「あっ、ごめん。ついじっと見ちゃった。」

「なんだ。そーいうことならいくらでもどうぞ?」

「ふふっ、うん。」

「まだ何かある?」

「本多くんの髪、サラサラしてきれいだなって。」

「そ?父さんの抜け毛対策のためにいろいろ調べて、実践してみたからね。髪にいいっていう豚毛のブラシに、シャンプーもいろんなブランドのを試したな。そそ!髪を乾かす前に油を塗ると傷まないし、艶が出るって聞いて、椿油からオリーブ油まで塗ってみた!」

「へえ、すごい!」

「オレの髪、触ってみる?君なら特別にオッケー!」

(触ってみたいけど、いいのかな。なんかドキドキしてきた……)