ときめき会話 はばたき山 本多行

 

はばたき山:スキー

「はばたき山が白一色だ……」

「うん、とってもきれいだね?」

「そだね。真っ白で画一的な美しさって感じ。」

「本多くん?」

「じっくり観察できれば、たくさんの発見があるって思うけど……スキーしながらは難しいな。」

「じゃあ今日は本多くんがしたいことしよう?」

「えっ! ふぅー。ありがと、君はいつもオレのことを優先してくれるんだ。でも、今日はスキーを楽しもう!」

「いいの?」

「うん。真っ白だけの世界でも、ほら、華やかな君がいるからさっ!」

「えっ。」

「あとオレ、君と会う日は君の観察をしたいからさ。」

「ええっ。」

「ほら、滑ろ!時間がもったいないよ!」

(わたしの観察って……ちょっと恥ずかしいな)

 

動物園

動物園

「ナイトズーをやるみたい。」

「ちゃんと見えるのかな?」

「そんな君に、ナイトスコープの貸し出しもあるってさ。」

「面白そう。」

「でしょ?動物たちの無数に光る目に囲まれて、獲物になった気分を味わえるよ~?」

「ふふっ。本多くん、楽しそう。」

「うんうん、あの光る目、好きなんだよね。網膜の後ろの反射板がなせる業。オレもあの目が欲しいよ。……そういえば、君の目もキラキラしてるな。ちょっと見せて。」

「え?」

「もしかして、君の目にも輝板が……」

「本多くん、大丈夫?」

「え? やっぱり興味深いっ!君をもっともっと知りたくなったよ!」

(ちょっと恥ずかしい……)

 

グッズショップ

オカメインコのおしゃべりぬいぐるみだって。」

「ちょっとうるさそうだね?」

「そっかなぁ?ちょっとやってみるよ。おはよー。」

ぬいぐるみ「オハヨー。」

「ふふっ、少し声が変わってるね。かわいいかも。」

「うんうん。そのまま再生じゃないのが、気が利いてる。じゃ、今日は二人で楽しもう!」

「ふふっ、うん。」

ぬいぐるみ「キョウハフタリデタノシモウ!キョウハフタリデタノシモウ!キョウハフタリデタノシモ――

「ええっ!」

「あれ、止まんないよ?店員さん、すみませーん!」

 

「はぁ、壊れてたみたい。オカメインコ、ちょっと苦手になりそうだよ……」

「ふふっ、じゃ この後はゆっくり見学しよう。」

「うんうん、そだね。二人で楽しもう! マネされないうちに行こう。」

(本多くん、いつも楽しませてくれてありがとう)

 

わんにゃんハウス

「あれ……?近寄ってこない。みんなどうした?」

「エサ買ってくる?」

「待って待って、わかった。……そういうことか!」

「どうしたの?」

「今日、家出る時に妹につかまってさ、デートって言ったら、なんか香水振りかけられたんだ。」

「たしかに、いい香りかも。」

「ほんと? なんか『恋が成就する香り』らしいんだけど……どう?」

「えぇと、どうって言われても……」

「だー、オレは何を言ってるんだっ。 わっ、みんな急にどうした?ん?まさか、香水の……」

「すごい、みんな急に本多くんの周りに寄ってきた。」

「君は、どう?」

(どうって言われても……)

 

はばたき城

天守

「ほら、お堀がぐるっと囲んでいるよ。」

「水攻めされたみたい。」

「君にはそう見えるの?」

「うん。お城から逃げるの難しそうだなって。」

「確かに。その時は籠城するしかないね。それで援軍を待つんだ。」

「助けが来なかったら?」

「うんうん、いい質問。そこで、はばたき城の『抜け穴伝説』の登場ってわけ。」

「抜け穴があるの?すごい。」

「そそ、君みたいなきれいなお姫様をそっと逃がすための、秘密の抜け穴。さ、姫。こちらへ。」

(本多くんに『姫』って呼ばれちゃった)

 

展示コーナー

「甲冑を着て、記念撮影ができるらしいよ!」

「ちょっと恥ずかしいかも。」

「じゃ、記念撮影だけ。」

「え?」

「二人で写真撮ったことなかったなって。 すみません、写真撮ってもらってもいいですか?」

(本多くん?)

「……うんうん。やっぱりさ、甲冑着た君より、こっちの写真でよかった。コスプレ、断ってくれてありがとう。」

「でも、よかったの?」

「うん、まずは、普段の君といっぱい写真撮っておきたかったから。」

「そっか、わたしも――

「そのあと甲冑着てもらった方が、面白いもんね、うんうん。」

(……ん?『面白い』?)

 

遊園地

ジェットコースター

ミニスカート追加コメント

「そうだ!スカート、きちんと押さえてね?前に妹が大変なコトになったんだ。」

位置エネルギーの蓄積と解放。その繰り返しってことだね。」

「それが人気の秘密なの?」

「さあね、わかんないなぁ。まず、オレが理解できてないから。」

「あ、ごめんね。嫌だった?」

「だー、違うって。君が楽しいなら、オレはいいんだ。」

「でもそれじゃ、さびしいよ。」

「なんで?オレ、君が楽しいこと、興味あることもっと知りたいから。だから、オレが好きかどうかなんて、あまり関係ない。」

「関係あるよ。二人が楽しい方がいいでしょ。」

「はっ…………なるほど。んじゃ、もう一回ジェットコースター、行こっ。」

「ええっ?」

「楽しんでる君の隣にいられる……それってオレの望んでいることだし。だからさ、もしかしたらオレも、ジェットコースターを好きになれるかもって。ほら、行こ!」

「……どうだった?」

「やっぱり……もういいかな。」

(本多くん、挑戦してくれてありがとう)

 

観覧車

「オレ、だんだんわかってきた、観覧車の良さ。」

「地上から切り離された感じがいいよね。」

「うんうん、喧噪の中から急に隔離されるのって、面白い体験だよ。……ん?そっか。あの妙な感情って、そこから生まれてたのかもしれない。」

「妙な感情?」

「なんかさ、ほら、何もない空間で、君と正対して座るでしょ?面接でもしてるみたいに。」

「うん、ちょっと変だよね。」

「変じゃないよ。温かいっていうか、嬉しいっていうか……あれっ?もしかして、これが……甘酸っぱい青春の想い?

「本多くん、声が大きいよ?」

「もう一回、これは確認が必要だよ!来て!」

「ええっ!待ってよ、本多くん~!」

 

バンジージャンプ

「あれ?なんだこの感じ。楽しいとも怖いとも違う。」

「大丈夫?無理してない?」

「無理なんかしてないよ。オレにとっての新しい感覚。君は?」

「うん、少しは慣れたかも。」

「もしかして、二人で恐怖の向こう側に来たのかも?」

「ふふっ。」

「ほーら、あの高さから飛び降りたんだよ?……ダメだこっち側に戻ってきた。」

「他の人のジャンプ見るのも怖いよね。」

「うん、その方が怖いかも。」

「ふふっ。まだまだ向こう側いけないね?」

「うんうん、オレどっち側でもいいや。君とこういう会話ができるならさ。」

(これからも、本多くんと楽しくお話できるといいな)

 

コーヒーカップ

「遊星歯車機構って、仕組み自体は好きなんだ。」

「難しいこと考えてると酔っちゃうよ?」

「何も考えていないと、もっと酔っちゃうからね。それに、自転しながら公転するカップに乗り込んでると、知らない惑星にいるみたいって思う。」

「わぁ、すてきだね。」

「ほら、ちょっと気が紛れるでしょ?」

「苦手なのに誘っちゃって、ごめんね。」

「んーん。オレひとりじゃ、コーヒーカップは乗らないでしょ?するとさ、さっきみたいな想像もできない。だからさ、君が一緒なら、どこだって行ってみる価値ありってこと!」

「ふふっ、じゃあまた誘うね。」

「うんうん……あ、でもコーヒーカップは、しばらくいいかな?」

(うーん、どうしようかな?)

 

お化け屋敷

「さっき絶叫が響いてたけど、大丈夫だったかな?」

「もしかして、わたしの声?」

「うん、君の声もすごかったけど。もしかして、嫌だった?」

「そんなことないよ。ただ自然と声が出ちゃっただけ。」

「かわいいなー。」

「えっ?」

あっ、ごめんごめん!君は怖い思いしてるのにな、何でかわいいなんて思ったんだろう。」

「そうだよ、もうっ!」

「あれ?なんか、ここがぎゅーっとしてきた。」

「えっ、大丈夫?」

「君とお化け屋敷……ケミストリー!」

「ええ?」

「恋愛は化学反応だって?オレの体に何が起きているんだー?」

(本多くん、顔が赤い……大丈夫かな?)

 

ナイトパレード

「なんかさ、あのマグロ人間、ずっとオレたちの前を回遊してる。」

「本多くんに用があるんじゃない?」

「あっ、あの時助けたマグロかも。」

「え? マグロの恩返し?」

「そそ、小学生の頃、水族館でさ 弱っているマグロがいたから、飼育員の人に教えたことがあったんだ。きっとオレのこと覚えてて、お礼に踊りを見せてくれてんだよ。」

「ふふっ。『鶴の恩返し』と『浦島太郎』がまざってるみたい。」

「ん? 待ってよ。『鶴の恩返し』だとすると、あの時助けたマグロは君ってことになる。」

「ええっ?」

「だって、きれいな女の人になって恩人の前に現れるんでしょ?てなると、オレの周りに現れたきれいな女の人は君だもん。ほらね?」

「本多くん……」

「機織りじゃなくて、DHAたっぷり料理とか、作ってくれる?」

(挑戦してみよう……)

 

牧場

牧場

「おみやげに手作りソーセージだって。」

「少し複雑な気持ち……」

「昔家族で牧場に来たことあってさ、妹が君と同じこと言ってた。オレは何も気にしないで喜んで食べてたらしい。」

「ふふっ、そうなんだ。」

「そそ、でねその時、母さんがさ、妹の優しさだけじゃなくて、オレの態度も褒めてくれたんだよね。きちんと美味しく頂くこともすごく大事!って。オレはいつも食べてるソーセージより美味しくて喜んでただけなんだけど。」

「ふふっ。」

「オレはむしろ、妹や君みたいに、その場にあった感情を表現できるのって、冷めた感じよりずっと正しいって思う。」

「本多くんは冷めてなんかないよ?優しくて、いつもみんなを楽しませてくれる。」

「えっ!? ……その『みんな』に君も入ってる?」

「もちろん!」

「やった!じゃあ、一つお願い。」

「なに?」

「これからも、オレの言動をさ、君みたいな優しい人にチェックしてもらいたいな? どう?」

「ふふっ、わかりました。」

「よっし、じゃあさっそく、できたてソーセージ食べに行こ!」

(牧場の手作りソーセージか……やっぱり少し複雑かも……)

 

キャンプ場

「ひとりキャンプって流行ってるらしいね?」

「本多くんと二人がいいな♡」

「なんかドキッとした……君、時々それやるよね。」

「それって?」

「オレのことドキッとさせるやつ。
 ……一般反応より、反射に近いかもしれない。」

「え?」

「大脳が意識し、判断した反応ではないってこと。スゴイことだよ。だって君の何かにさ、オレは大脳とは関係なしに、体が反応してんの。」

「そうなの?」

「そそ。君のおかげで、自分の中に新たな不思議が見つかったよ!
 二人キャンプ最高っ!

(本多くん、やまびこしてるよ……)

 

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