大接近 風真玲太

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1回目

「……おまえ、結構そういうの慣れてんだ?」

「慣れてないけど……いやだった?」

「ぜんっぜん、へーき。あのな、だてに10年も向こうで暮らしてないから。」

「そっか。イギリスの人のスキンシップってすごいんだろうな?」

「すごいって……おまえが何想像してんだか知らないけどさ、普通の挨拶だから。」

「普通かぁ……」

「けど、相手がおまえじゃ普通に対応できないから、困ってんだ。」

「えっ、どうして?」

「いいか?普通に対応するって、俺からもスキンシップで返すことになるだろ?いいのかよ。」

「それは……困るかも。」

「自分が困ることは人にすんな。……じゃあな。」

(イギリス流のスキンシップ……やっぱりすごいのかな?)

 

2回目

「……ふぅ。あのさ、前にも言ったよな?」

「もしかして……スキンシップのこと?」

「わかってんじゃん。てことはさ、俺からもお返ししていいんだよな?」

「えぇと、それは……」

「……ったく、おまえのはただ触ってるだけ。スキンシップって言わないんだよ。相手がいること忘れんな。」

「うん、わかった。でも、自然にこうなっちゃうみたい……」

「お、おい。自然てなんだよ?間違っても他のやつにすんなよ。……俺ならいいけど。」

「えっ、いいの?」

「あー、いいよ。他のヤツにされるくらいなら、好きにしてくれ。ほら。」

(えぇと、ほらって言われても……)

 

3回目

「ふぅ……
 で、おまえ。あの約束守ってんだろうな……?」

「約束?」

「他のヤツにはすんなって。」

「う、うん。」

「おい、頼りない返事すんなよ。約束があるから、俺は我慢してんだからな。もし破ったら……イギリス式で3倍返しだからな。」

「3倍返し!? ……わかった。」

「わかったなら、いいよ。じゃあな。」

(イギリス式の3倍返し……なんだかすごそう……)

 

4回目

「もう、そこまでだ。」

「あっ……ごめんなさい。」

「我に返ったような顔すんな。……ったく、大丈夫かよ。 あのな、10年ぶりに会ったけど、俺もおまえも、あの頃のままじゃないんだぞ。」

「う、うん。それはわかってる。」

「いーや、わかってない。はぁ……いいか、だいたい自分の家の前だぞ。ご家族に見られたらどうすんだよ。」

「あ……ちょっと恥ずかしいかも。」

「だろ?だからここまでだ。わかったら、もう帰れよ。」

「ごめんね、風真くん。もうしないようにする。」

「うっ、それはそれで……なんか、もの足りないっていうか…… はぁ……俺、おかしくなってる。じゃあな。頭冷やしながら帰りまーす。」

(わたし、風真くんのこと困らせちゃったかな……)

 

5回目

「もういい。気が済むまでやれよ。」

「え? あっ、ごめんね。」

「なるほど。思った通りだな。俺がやれというと、おまえはやめる。」

「そんなつもりじゃ……」

「だから、いいよ。家の前でも学校でもどこでもさ。好きなだけどうぞ?」

「そんなこと言われても…… 調子に乗って、ごめんなさい。」

「え…… い、いや、そんな顔すんなよ。怒ってるわけじゃない。」

「でも、嫌な思いさせたよね?」

「まあ、わかってくれればいいんだって。だから、好きなようにしろよ。
 なんかもう、俺さ 衝動の向こう側に到達した気がする。」

「衝動の向こう側?」

「そ、悟りの境地? だから、おまえも遠慮なく来いよ。じゃあな。」

(なんか風真くん、おかしかったよね?悪いことしちゃったかな……)

 

6回目

「待てって! はぁ……前言撤回。」

「えっ?」

「『えっ?』じゃない。俺が好きにしろって言ったから、めちゃくちゃしてんだろ、おまえ。」

「めちゃくちゃ?ごめん、そんなつもりじゃ……」

「……ったく、この前、悟りの境地に至ったはずなのに、すっかり帰ってきた。いいか?スキンシップってのは双方向なんだ。おまえのは、ただ触ってるだけ。」

「う、うん。」

「おまえがその気なら、俺が本場のスキンシップを教えてやる。」

「あ、あれ?」

「ん。どうした?」

「ううん! なんでもない。」

「まあいい、俺は10年ハグとキスがあいさつ代わりの文化で育ったんだ。覚悟しとけよ。」

(イギリス流のスキンシップのお話……あれ、前にも聞いたよね?風真くん、大丈夫かな?)

 

7回目以降

「おいっ。もうそこまでだって!」

「もうやめてるよ?」

「……えっ?俺、おかしくなったのかもな。まだおまえの手の感覚が……
 どうしてくれんだよ。……ったく。」

(風真くん、大丈夫かな……?)

 

2択会話

「夜道は色々と危険だってわかったよ。」

 どうかしたの?

   「それだよ、無自覚が一番怖いってこと。」

 この辺は安全だよ?

   「そりゃ、おまえは安全だよ。ま、俺次第か?」

 

「あのさ、俺だって男だぞ。わかってんのか?」

 風真くんは男子だよ。

   「わかってんなら、自己責任な。俺が何しても。」

 女子だったら、かわいかったのにね♪

   「おまえなあ……もっと危機感を持てよ。」

 

「何だよ?なんか付いてるのか?」

 目と鼻と口?

   「はいはい。いつものおまえで良かったよ。」

 ごめん、見つめちゃった

   「ふーん、そう。じゃあ、俺も。」

 

「やっぱり、おまえなんか試してるよな?」

 ううん、風真くんを信じてるから

   「……ったく。ほどほどにしとけよ?」

 ただ、自然と……

   「のんきなやつ。俺だから許されんだぞ。」

 

「なんだよ、俺はここにいるよ。」

 うん、知ってるよ

   「なら、何の確認だよ。」

 よかった

   「いつだっているだろ?心配すんな。」