ときめき会話 臨海公園 氷室一紀

 

ショッピングモール

スカイラウンジ

「なんだか、お決まりのコース。」

「飽きた?」

「不思議とそうでもない。とりわけ好きな場所でもないのに3回も来るなんて……」

「う……なんか、ごめん。」

「別に君のこと責めてないだろ。……まぁ、毎回新鮮なリアクションする人と一緒だから楽しいんじゃない?」

「えっ……それって――

「わざわざ言わせないで。ナンセンス。」

「ふふっ!」

「……ほら、その嬉しそうに鼻の下伸ばすところとか、景色より見ごたえある。」

「 !? 伸ばしてません!」

「はは!本当、君には飽きない。」

(なんだか、悔しい……)

 

臨海公園

煉瓦道

「ここって雰囲気いい。非日常を味わえる感じ。」

「たまには普段の生活を忘れたいよね。」

「なるほどね……現実逃避はナンセンスだけど、たまにはこんな時間も必要なのかも。それにしても、君ってたまにハッとさせるようなこと言うよね。」

「そうかな?」

「普段はいつもそんな感じなのに。……僕も何か仕返ししたい。」

「ええっ。仕返しって……」

「君の考えを見抜いたり、核心を突くようなことを言ったり、ドキッとさせたり。……ハァ、全然できる気がしない。第一、考え見抜けてたらこんな苦労してないし。」

「氷室くん、苦労してるの?」

「ええ、おかげさまで。」

(わ、わたしのせい?)

 

波止場

「海、好きなの?」

「氷室くんが好き。」

「はぁ?なに、それ?僕が喜ぶとでも思ってる?」

「あ、ごめん……」

「……謝る必要、ないのに。好意を持ってもらえたら、普通、嬉しいと思うだろ。」

「えっ!?」

「なに、その反応?深い意味はないから。君だって、そうだろ?ただ、その冗談、多用しないほうがいい。勘違いするヤツ、出るだろうし。」

「うん、わかった。」

「……やっぱ、冗談なんだ。」

「ん?今なんて?」

「いい、なんでもない。」

(氷室くん?)

 

遊覧船

「どうしたの?……考えごと?」

「氷室くんのことを考えてた。」

「な――!? ……気になることあるなら、直接聞いてくれない?」

「そ、そうだよね。」

「それにさ、そんなこと急に言われたら――
 ……いや、なんでもない。単なる邪推。」

「え? じゃすい?」

「で、何を考えてたわけ?20文字以内で答えて。」

「ええ!?」

「制限時間、設ける?じゃ、あと30秒。」

「ちょ、ちょっと待って!」

「30、29、28、27――

「だから、その……」

「……3、2、1――はい、アウト。これ、課題にするから。今度提出して。」

「提出!?」

「人のこと、からかった罰。」

(そんなつもりじゃないのに……!)

 

水族館

水族館内

「海の中にいるみたい……とか思う?」

「氷室くんは?」

「僕は、海の中とは思えない。前から思ってたんだけど、水族館ってさ、媚びてない?」

「媚びてる?」

「人工的に詰め込んで、ムード出して さあ喜べ――みたいな。ま、個人的な意見だし、楽しむ人は楽しめばいいと思ってたけど……今日は、僕も少し楽しい。」

「どうして?」

「……隣ではしゃいでる誰かがいるから。」

「えっ。」

「子どもみたいに目、キラキラさせて……眩しい。今日は、魚じゃなくて君を見ていようかな?」

「ええっ、せっかく水族館に来たのに?」

「何を見ようと、僕の自由だろ。反論は聞かない。以上。」

(うう、なんだか恥ずかしい……)

 

ウォーターガーデン

「色んなカップルに見られながら悠々と泳ぐペンギン……どんな気分なんだろ。」

「うらやんでそう。」

「なんで?ペンギンだったら、そんなのどうでもよくない?」

「でも、もし自分がペンギンで、氷室くんがデートに来てたら……」

「……は?勝手に妙な想像しないでくれない?なんで君以外の人とこんな場所来なきゃいけないんだよ。」

「いや、そのもしもの話で……」

「じゃあレーイチさん。」

「え?」

「ペンギンの君が見た僕の相手は、レーイチさんだよ。」

「レーイチさんって……氷室教頭?」

「そう。きっと何か面倒な理由があって、嫌々連れ出されたんだ。今度はきちんと、僕の嫌そうな顔も見といて。」

(……うん、想像つくかも?)

 

深海コーナー

「僕らが見ている海なんて、ほんの一部に過ぎないんだな……」

「急にどうしたの……?」

「普段よく行く海の底にも、こんな世界が広がってるのかって思ったら、少し怖くなった。それと……君にも。」

「えっ、わたし?」

「いつもニコニコしてるけど、本当は、全く違う感情を抱いていたらどうしよう、って。僕の言動に対しても、見えないところで怒ってたり、悲しんでたら……色々自信、無くす。」

「氷室くん……」

「だから、何かあったら隠さないで欲しい。」

「うん。きちんと伝える。」

「そうして。でも、いきなり牙を向けて襲ってくるのはやめてよ。見せるんだったら、まずは背びれから。」

「……わたしはサメ?」

「君に嫌われるのは、サメに襲われるのより怖いからね。」

(んん? 喜ぶべき……?)

 

プラネタリウム

「……隣の二人、星、全然見てなかった。何しにきたんだか。」

「羨ましい!」

「うらやましいんだ……?僕には理解できないな。公共の場なのに?」

「それだけ夢中になれる相手がいるってことでしょ?」

「……………… 心から好きだと思える相手なら、周りなんて気にならなくなるのか……僕にはそんな経験……まだないな。」

「氷室くんもいずれそういう恋してみたい?」

「……興味がない、と言ったら嘘になるかな。でも、相手が肝心。」

「候補はいる?」

「それは…… そこまで話す筋合いないだろ。プライバシーの侵害。」

(? 氷室くん、顔赤かったような?)

 

海水浴

「君にとって、海って何?」

「恋の狩り場♡」

「何それ。じゃあさ、僕は何なの?君がその辺の男に声かけるのをずっと横目に見てろって?」

「いや、今のは冗談で……」

「わかってる。わかってるけど、腹立つ。僕にとって海は特別な場所で、そこへ今、君と一緒に来てるんだ。しかも、今まで手放さなかったひとりの時間よりも、君との時間を優先して。それがどれだけ―― …………ハァ。」

「氷室くん?」

「こんなこと言いたいわけじゃなかった。何言ってんだろ、本当に。」

「えぇと、ごめんね?わたしが変なこと言ったから。」

「そう、君のせい。反省して。」

「う……すみません。」

「お詫びは炭酸とフライドポテトで。丁度小腹も空いてきたし。」

「はあい、買ってきます。」

「勝手に行かないで、僕も行く。その辺の男に手出されたら困るし。」

「しません!」

「どうだか。」

 

青の洞窟

「いつ来ても、異世界に迷い込んだような錯覚……」

「そろそろ慣れよう?」

「慣れないものの中に、自分が含まれてるって自覚ある?」

「えっ?」

「君と一緒だと、いつも新鮮さを感じるからね。下手したら、一緒にコンビニ行っても慣れないかも。」

「ええっ!?」

「ま、さすがにそれは冗談だけど。……けど、それぐらい新しい刺激、受ける。君といると。」

「そうなの……?」

うん……胸がむずむずしてくすぐったくて……でも、なんか心地いい。僕は、この感動には慣れたくない。」

「氷室くん……」

「ま、でも……そろそろ慣れよう?って言われるほど、君の隣が当たり前なのは嬉しい。」

「ふふ、うん!」

 

海辺の散歩

「……これだけ人がいないと、改めて海の大きさを感じる。」

「なら、騒ごう!」

「ぷっ……まさかそんな返し、されるなんて。」

「えっ、ダメ?」

「ダメじゃないけどさ……今の流れは明らかにおかしかった。でも面白いから採用。ただし、僕は騒ぐってことをしたことないから、きちんと指導して。いい?」

「もちろん!」

「うん、任せた。で、何して騒ぐ?」

(氷室くん、ノリノリだ!)

 

花火大会

浴衣コメント

「ふーん?」

「どうかな、この浴衣?」

「浴衣は浴衣。……でも、いいんじゃない?似合ってるし。」

(褒めてくれてるのかな?……ふふっ、喜んでくれてよかった)

 

ミニ丈浴衣追加コメント

「僕から離れないで。その浴衣のせいで、さっきから男どもが君のこと見てるんだ。ムカつく。」

「来年もまた、この花火を見ていると思う?」

「見てないかも……」

「……君は卒業してるしね。」

「そうだね……」

「……でもさ、卒業したらつき合いが終わりなんて決まりなくない?同じはばたき市に住んでるんだし、会うことくらいできる。だからさ、君が卒業したって会ってもいいけど。……僕は。」

「氷室くん……」

「……なんて、一年後の約束を気軽にすべきじゃないかな。でも、僕の気持ちは変わらないと思うから。」

「うん!ありがとう。」

 

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