- クレーンゲームの練習
- サーフィンのイベント
- 気になる器用さ
- 修学旅行が心配?
- チョコへの不器用なお礼
- ビリになってごめん
- 泳ぎ方のレッスン
- 好きなタイプを聞いた理由
- 寂しくなるバイト先
- 体調管理も仕事のひとつ
- 楽しいアルバイト
- 花に笑いかける姿
- 日常に入り込む存在
- 練習で作ったブーケ
- 将来はふたりでお店を?
- 氷室くんの応援
- 思わずやきもき
クレーンゲームの練習
「あ、氷室くん。今日もこれから海行くの?」
「いや、今日はゲームセンタ―― じゃなくて、うん、海。来るんでしょ?」
「あ、うん!」
︙
「氷室くん、さっき『ゲームセンター』って言いかけてたけど、行く予定だったの?」
「聞こえてたんだ……まあ、そう。ちょっと練習しようか悩んでたから。」
「練習?」
「クレーンゲームの景品を、一発で取れるようになるための練習。」
「えっ……」
「前に君と行った時、悔しい思いしたから。」
(氷室くん、そんなに悔しかったんだ……)
サーフィンのイベント
「どうも。」
「あ、氷室くん。今、帰り?」
「うん。海寄ってくけど、君もどう?」
「うん、ぜひ!」
︙
「氷室くん、もうサーフィンのエキシビションには参加しないの?」
「ああ……そういえば君も見に来てたね、前回の。」
「うん。すっごくカッコよかった!」
「……どうも。ま、僕が参加することで、少しでもイベントが盛り上がるなら出場するかな。会長にもお礼したいし。」
「会長って……」
「あのイベントの主催者。商店会長もやってる人なんだ。そして、僕をサーフィンに誘ってくれた人。」
「へえ……そうなんだ!」
「うん。会長のおかげで、今の僕がある。サーフィンがなかったら、全く違った自分になってる気がするし。本当、感謝してるんだ。」
(氷室くん、商店会長さんに深い恩を感じてるんだ……素敵だな)
気になる器用さ
「氷室くん。今、帰り?」
「うん。海寄ってくけど。」
「あ、もしかしてサーフィン?見に行ってもいいかな?」
「……お好きにどうぞ。」
︙
(氷室くんは本当にサーフィンが上手だなぁ…)
「……? なに。」
(そういえば、前にベースも弾いてたよね。運動神経だけじゃなくて、手先も器用なのかも……?)
「何……?ジッと人の腕なんか見てさ。」
「あ、ごめんね。前に、ライブハウスに行った時のことを思い出してたの。」
「うん……それで?」
「氷室くん、バンドマンの人からベースを借りて弾いてたでしょ?」
「ああ、そんなこともあったっけ。」
「だから氷室くんって、手先も器用なのかなって。」
「手先 “も” ……ってどういう意味?」
「サーフィンもできて、ベースも弾けて勉強もできるでしょ?だから苦手なこと、何もなさそう。」
「なわけないでしょ。たまたま君が、得意なことやってる僕しか見てないだけ。」
「そうなの……?じゃあ、氷室くんの不得意なことって――」
「教えないよ。」
「ええ?じゃあヒント――」
「教えない。」
(うう、気になる……)
修学旅行が心配?
「あ、氷室くん。今帰り?」
「いや、今日は海行く。良い波来てそうだから。 ……君も来る?」
︙
「君はもうすぐ修学旅行か。」
「あ、うん。氷室くんも来年行けるよ?」
「言われなくてもわかってるし。ていうか、そうじゃなくて――
……君が羽目を外さないか、心配なだけ。」
「もう。大丈夫だよ。」
「たとえ、君が平気でも、他のクラスメイトはわからない。巻き込まれて、廊下で立たされないように。」
「はーい。」
「……あと、気が向いたら、連絡して。」
「えっ? 連絡って……」
「連絡とは、メールや電話のこと。話題なんて、山ほどあるだろ。……ま、無理強いはしないけど。あくまで気が向いたらでいいから。」
「うん、わかった!」
「……マナーモード、切っておこう。」
(今から???)
チョコへの不器用なお礼
(……あれ?氷室くんからメッセージだ。 “話したいんだけど時間ある?” だって……)
︙
(海から上がってきてだいぶ時間経つけど……氷室くん、ぜんぜん話してくれないな……)
「あ、うん……その、急に呼び出してごめん。……チョコ、おいしかった。」
「えっ?」
「二度も言わせないで。バレンタインにチョコ、くれただろ?あれ、おいしかったから! 以上。」
「あ! 良かった。がんばったから。……もしかして、話ってそれ?」
「……悪い?」
「ううん!」
「で……他のヤツにも、あげたの?手作りチョコ。」
「手作りは、氷室くんだけだよ?」
「あ、そ。味わって食べた甲斐、あった。」
「また作ろうか?」
「そうほいほい作られても、複雑なんだけど……あのタイミングでもらえるから嬉しいものでしょ。」
「バレンタインってこと?」
「まあ……そう。だから、来年も……」
「ん?」
「なんでもない!良い波来そう、いってくる!」
(氷室くん……?)
ビリになってごめん
(氷室くん、いなかったな。二人三脚のこと、謝りたかったのに……
あ、もしかしたら……)
︙
「……で、何? わざわざここまで来て。」
「あ……体育祭のこと謝りたくて。ごめんなさい。二人三脚、ビリになっちゃって。」
「なんだ、そんなことか。 ま、いいよ。君と組むって決めたの、僕だし。」
「怒ってない?」
「そこまで子どもじゃない。……ただ。ちょっと、自分の身体能力疑った。実は運動できないんじゃないか……って。 だから今日、普通にサーフィンできて安心した。」
「やっぱりわたしのせいだよね。」
「そこは否定しない。」
「次があったら、がんばるね!」
「次って……まあ、好きにしたら?」
「うん!」
泳ぎ方のレッスン
「あ、氷室くん。今帰り?」
「ああ、君か。今日はこれから海に行くつもり。……よかったら、来る?」
「うん……!」
︙
「あのさ、少しは泳ぎの練習、したら?」
「え……」
「前にプール行った時、泳ぎ、得意じゃなさそうだったから。海、気持ち良いのにもったいない。なんなら教えるけど?」
「本当?」
「君にヤル気があれば、ね。僕の指導、厳しいから。」
「……お手柔らかにお願いします。」
「は? 泳げるようになりたくないの?」
「そうじゃないけど……」
「なら、お手柔らかになんて甘えたこと、言ってる場合じゃないだろ。だいたい、海って危険だってわかってる?波にさらわれることだってあるし。中途半端に泳げたら、油断する。だから、しっかり泳げるようになったほうがいい。」
「わ、わかった……がんばります。」
「よろしい。有言実行、期待してるから。」
好きなタイプを聞いた理由
(あ、氷室くんだ!)
(……あ、行っちゃった。よし、追いかけてみよっと!)
︙
「……それで本当にここまで来たの?君って暇だね。」
「う……」
「でも、ちょうど良かったかも。僕も聞きたいことあったし。」
「え、なに?」
「……この前、好きなタイプについて聞いたでしょ?あれは、なんで?」
「ええっと……あの時も言ったけど、単なる興味だよ?」
「それ以外、まったく意図はなし?」
「う、うん……」
「……あ、そ。なら、いい。」
「氷室くん?」
「べつに。ちょっと気になっただけ。」
「どうして?」
「理由、必要なわけ?君だって、理由なく好きなタイプについて聞いただろ?」
「そうだけど……」
「いろいろ思い悩んだ自分が馬鹿みたいだ。」
(氷室くん……あの質問で、悩ませちゃってたんだ……)
寂しくなるバイト先
「◯◯先輩。」
「あ、氷室くん。どうかした?」
「あのさ、このあと時間……あるよね。バイト、辞めたんだし。」
「あ……う、うん。」
「ちょっと付き合ってくれない?」
︙
「仕事、嫌になった?」
「あ……ううん、そうじゃないけど。」
「じゃあ、なんで―― ……や、なんでもない。責めたいわけじゃないから。人それぞれ、色んな事情、あるだろうし。」
「うん……ごめんね。」
「べつに。 少し……寂しくなるなとは思ったけど。」
「えっ。」
「ま、だからといって、どうってわけじゃないけど……君を止める権利ないし。……バイト先で顔見れなくても、学校で会えるし。」
「うん。」
「ま、それなりに楽しかったよ。今までどうも。」
(氷室くん……)
体調管理も仕事のひとつ
「あ、氷室くん。お疲れ様。もう帰る?」
「うん、海寄ってくけど。」
「じゃあ見に行っていい?」
「え……いいけど……」
「やった!」
︙
「次のシフト、出勤やめといたら?」
「えっ。どうして?」
「やっぱ自覚ないんだ。顔に疲れ、出てる。」
「う……」
「体調管理も、仕事のうち。そんな顔した人と一緒に働きたくないし、急に倒れられたりしたら、それこそ迷惑。」
「そうだよね……ごめんね。」
「べつに。今倒れたわけじゃないんだから、謝る必要ないでしょ。勉強に運動に遊びに……色々優先させたいことがあるのはわかるけど。それと同じくらい……いや、それ以上に休むことが大事ってことは君もわかってるでしょ。」
「うん。」
「となれば、こうしていられないね。もう、帰ろう。」
「え、でも……」
「またすぐ来られるでしょ。君の体が一番だってこと、肝に銘じて。」
「あ……うん。ありがとう、氷室くん。」
楽しいアルバイト
「あ、氷室くん、お疲れ様。もうあがり?」
「うん、今日は海寄って帰る。良い波来てそうだし。」
「わあ、いいね!」
「君ももうあがりだろ?来たきゃ、来れば?」
「やったあ!」
︙
「けっこう、がんばってるじゃん。」
「え?」
「バイト。正直、すぐに辞めると思ってた。」
「やめないよ?だって、楽しいし!」
「……あ、そ。」
「もっと、いろんなことできるようになりたいなぁ。」
「君の努力次第でしょ。……ま、今の調子なら、心配ないと思うけど。やれることが増えれば、やり甲斐も出るし、もっと面白くなると思う。」
「うん、そうだね。」
「ま、どこまでがんばれるのか、見せてもらうとするよ。」
(よーし、がんばるぞ!)
花に笑いかける姿
「お疲れ様。」
「あ、氷室くん。もう帰るよね?」
「そう、これから海。君も、来る……?」
「いいの?お邪魔します!」
︙
「……花、好きなんだ?」
「好きかな。バイトしてると愛着でてくるし。」
「いつも仕事しながら、花に笑いかけてるくらいだしね。」
「えっ、そうだった?」
「無自覚? なら、筋金入り。」
「ちょっと恥ずかしいかも……」
「いいんじゃない?……わりといい顔してるし。」
「えっ……」
「照れないで。……つられる。」
(ふふ、氷室くんに褒めてもらえちゃった……!)
日常に入り込む存在
「お疲れ。君ももうあがりでしょ?」
「うん、どうかしたの?」
「海、寄ろうと思うんだけど、君も来る?」
「えっ、サーフィンするの?ぜひ!」
「なんでそんな必死?じゃ、着替えたら行くよ。」
「うん!」
︙
「なんか、バイト先に君がいるのが、当たり前になってきた。」
「本当?」
「うん。君、いつの間にか僕の日常に入り込みすぎ。ま、いいけど。」
「……ふふっ。」
「なに?」
「なんとなく、くすぐったいなって……」
「何それ。」
(……あれ、氷室くんの顔、赤い……?)
「え……別に、赤くない。夕日のせい。」
「ふーん?」
「なに?言いたいことあるなら、言えば?人の顔見てニヤニヤするなんて失礼。」
「えっ、にやにやしてた?」
「わりといつも。」
「ええっ!?」
練習で作ったブーケ
「◯◯先輩。もうあがりでしょ?」
「あ、お疲れ様。うん、氷室くんと一緒だよ。」
「じゃあ行くよ。良い波来てるから。」
「あ……ふふ、はい!」
︙
「……あのさ、君自身花が欲しいって思うことある?」
「うーん、もらえたらうれしいかな?……もしかして、くれるの?」
「練習で作ったブーケぐらいなら。」
「本当? うれしい。」
「失敗作でも?」
「うん!」
「ふーん?じゃ、しばらく待ってて。とっておきの失敗作、作るから。」
「失敗作がとっておき?」
「そ。上手くいったブーケは商品にしないといけない。けど、生半可なの渡すのは癪だし。」
「それって、どのへんが失敗になるの?」
「いいだろ。僕が失敗と思えば失敗。それだけ。ま、失敗を期待されても困るから、今日聞いたことは忘れといて。」
「ふふ、わかった!」
(楽しみだな……!)
将来はふたりでお店を?
「あ、氷室くん。もうあがりだったよね?」
「そうだけど。」
「じゃあ、今日はサーフィンかな?」
「じゃあ、君はその見学?」
「ふふっ、うん!お邪魔します。」
︙
「バイト、いつまで続けるつもり?」
「やれるところまでかな。氷室くんは?」
「僕も同じく。」
「じゃ、一緒に極めてみようか?」
「なに。将来、アンネリーに就職?」
「どうだろう。でも、すごくやり甲斐はあるよね?」
「まあ、ね。もし、この先やりたいことが見つからなかったら、それもいいかも。そしていつか二人で店を持つ。」
「えっ?」
「花を極めるんだろ?なら、君はこれ以上ない人材。ライバル店に行かれても困るし、今のうちにヘッドハンティングしとく。」
「あ、そういう意味ね。」
「? なんだと思ったわけ?」
「ううん、なんでもない!」
(はあ、ドキドキした……!)
氷室くんの応援
「あ、氷室くん。今日もこれから海?」
「ああ、うん。……そうだ、君も来なよ。」
「え?う、うん。」
︙
「……おめでとう。」
「え?」
「期末テスト、まさか連続で1位になるとは思わなかった。」
「ふふっ、やったよ!」
「調子に乗らないこと。気を抜いて、つまづいてもしらないから。今回のことで、君に勝とうと奮い立ったヤツ、たくさんいると思うし。」
「そうだね。がんばらないと。」
「……じゃあ、次、また1位を取ったら、ご褒美あげる。」
「えっ、ご褒美?」
「うん。僕のできる範囲内であればなんでもいいよ。」
「本当に?じゃあ……褒めてもらおうかな?」
「え……そんなことでいいわけ?」
「うん!」
「ふーん、わかった。」
「よし、がんばろうっと!」
「……君のやる気って、ずいぶん安上がり。でもま、がんばって。応援してる。」
思わずやきもき
「氷室くん、お疲れ様。途中まで一緒に帰らない?」
「今日は海寄ってく。」
「じゃあ、わたしも行こうかな。いい?」
「いいけど……リョータ先輩は―― や、なんでもない。」
(風真くん?)
︙
「リョータ先輩って、やけに君のこと、気にかけてる。」
「え、そうかな?」
「……報われないな。」
「えっ、どうして?」
「さあ。僕の知ったことじゃないし。」
「?」
「ま、しっかり仕事したら?そうすれば、リョータ先輩も安心するでしょ。わざわざ君のこと、見に来なくてもよくなるだろうし。」
「たまたま立ち寄ってくれただけだよ?」
「ホントにそう思ってる?」
「違うの?」
「さあね。でも、リョータ先輩がそう言うなら、そうなんじゃない?
……ったく、なんで、僕がやきもきしなきゃいけないわけ?」
「氷室くん?」
「なんでもない。」
(???)