ホタルの住処 七ツ森実

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恋愛

夢の中みたいな世界

「……キレイだな。」

「うん、キレイだね……」

「現実に戻るの、イヤんなる。」

「ふふ。どうして?」

「だってさ……今、この夢の中みたいな世界で俺とあんた、二人っきりだ。周りなんかゼンゼン気にもならない。……ヤバくない?」

「ヤバい?」

「ヤバいでしょ。こんなこと普段はできないし。こうして――じっくり見つめ合ったりさ。」

(わぁ……七ツ森くんの顔が近い!)

「……なんか俺、おかしいな。魔法にでもかかったみたいにフワフワしてる。あんたから、目が離せない。」

(七ツ森くん、いつもよりちょっと大胆!? わたしまでドキドキしてきちゃうよ……)

 

好きなヤツ、いる?

「◯◯。」

「なあに? 七ツ森くん。」

「今、好きなヤツとか、いる?」

「えっ?」

「驚くなよ。俺ら、思春期の少年少女なんだから こういう話題、するモンじゃない?」

「うん、でも……」

「ま、言いづらいか。女子からは。 …………俺はね、いるよ。」

「 !! 」

「だーかーら。なんでそんなに驚くの。オモシロいコ。」

「だって……」

「そういうところも好き。愛しさが止まんなくて、ホント困るわ。」

(今、すごくドキッとしちゃった……)

 

独り占めする気分

「んー……」

「どうしたの?悩み事?」

「悩み事……そうだな。悩んだほうがいいコトかもな。」

「聞いてもいい?」

「んー。じゃあ、質問。」

「うん。」

「みんなが好きなものを独り占めできたときってどんな気分?」

「そうだね……場合によるかも?」

「まぁ、そりゃそうだけど。嬉しい?気まずい?」

「うーん……」

「…………」

「……七ツ森くん?」

「気まずいけど……でも嬉しいほうが勝つな、やっぱ。」

「?」

「ということで、俺は今すごく嬉しい。OK?」

(……今?独り占めしてる?それって、わたしのこと??)

 

言葉は全部、聞いてる

「ホタル、きれいだね。」

「ああ。」

「何匹くらいいるんだろう。数千、数万?もっとかな?」

「ああ……」

「七ツ森くん……聞いてる?」

「聞いてるよ。あんたの言葉は、いつだって全部。あいつらといるときだって、あんたの言葉だけは、ちゃんと。」

「そ、そっか。」

「あんたは?俺の言葉、ちゃんと聞いてくれてる?みんなといても。」

「それは……」

「ゴメン。責めてるわけじゃないから。楽しいときって、流されちゃうもんな。けどさ、俺、あんたに余所見されるとツライよ。」

「七ツ森くん……」

「……これがジェラシーか。面倒くさいもんだな。」

(ジェラシー?)

 

不甲斐ない自分

「ハァ~……」

「どうしたの?大きなため息なんて。」

「あー……ゴメン。なんか自分が不甲斐なくて。」

「どうして?」

「…………
 なあ。俺たち、今、デートしてるんだよな?」

「う、うん。」

「それって、つまり、お互いのこと―― …………
 ヤメた。なんか女々しいわ、こういうの。
 俺がもっとしっかりリードすりゃいいハナシ。だよな?」

「???」

「デート、これからももっとしような?」

(七ツ森くん、ダイレクトだなぁ……)

 

なんだか物足りない

「付き合ってない…… だからか?」

「?」

「や、なんでも。 …………」

「七ツ森くん?」

「なんか足んないんだよな……何が不満なんだ、俺? こんなに近くにいて、たくさん話もしてる。今だってデートしてるし。……この後は必ずバイバイだけど。
………… わかった! 俺たち、もっとデートしよう。別れ際の名残惜しさに慣れちゃうくらい。」

(七ツ森くん……なんだか焦ってる?)

 

恋愛についての考えかた

「そういえば。」

「うん?」

「前に、なんだか妙にハズカシイ話したの、覚えてる?」

「えぇと……どれ?」

「え!? 俺ら、ハズカシイ話、そんなにいっぱいしてたっけ?……まぁ、それは置いておいて。恋愛についてどう思う、ってヤツ。」

「あ…… 七ツ森くん、卒業までに愛だの恋だののいろんな考え方、聞かせてくれるんだよね?」

「よく覚えてるな…… 実はさ、今すでにいくつか答えられる回答があるんだけど。」

「聞かせてくれるの?」

「ダメー。まだ聞かせません。卒業までにって、言ったじゃん。なら、卒業式の日ってこともある。」

「卒業式……」

「そ。だから、あんたも卒業式までこのミッション、覚えててよ。」

(ということは、卒業式の日に教えてくれるつもりなのかな……?)

 

夜の部屋でも?

「ホタルの光って、あったかいよな。」

「そうだね。点々と、あたたかい色がフワフワ……あ。七ツ森くんの部屋にあった機材の明かりみたい!」

「お、よく覚えてますね。電源ランプとか、たくさんあるからな。夜になると、ここのホタルに負けないくらいキラキラしててキレイだぜ?」

「そうなんだ!見てみたいかも。」

「夜だぜ?」

「あ……そっか。」

「まったくもー……あんたね、スキが多いから気をつけな?」

「う、うん。」

「…………あのさ、もしかして俺のこと、オトコとして見てないの?」

「え?」

「出たよ、え?が。それ来ると、なんでも許しちゃうんだよな……ま、いっか。俺の部屋、また遊びに来な。美味いケーキ、用意しとくからさ。」

(やった!でも、男の子として七ツ森くんのこと見てないって、どういうことだろう……)

 

嬉しいペアルック高校生

「今日一日、俺たちって周りからどう見られてたんだろ?」

「ペアルックのこと?」

「そ。なかなかいませんよ?ペアルック高校生。」

「ふふっ!」

「ハズカシさはMAXなんだけど、それよりも、嬉しかったんだよな。示し合わせた訳じゃないのに、二人の趣味が偶然重なるとか。」

「たしかに。」

「あんたも、もちろん俺も、バッチリ決まってるしな?」

「ふふっ!」

「あんまりそういうの意識したコトないけど、今日は……運命感じた。今度はいつになるかなー。楽しみじゃね?」

(次のデートで、ってことだよね?ペアルックかぁ……)

 

ナンパに気をつけて

「あんたさ、普段から、ああやって声かけられてんの?」

「え?」

「ナンパ。マジ腹立つわ、あーいうの。ま……今日は俺が遅れたのがいちばん悪いんだけど。」

「そうだよ?」

「ゴメンナサイ。けど、オドオドしてたら相手に付け込まれる。あんたも気をつけてくれよな。」

「はい……」

「……しょーがないか。ナンパしたくなる気持ち、わかんなくないし。」

「?」

「な、だからホント強くなって?このままだと俺、あんたをひとりにしておけなくなっちゃう。」

(七ツ森くん、すごく心配性……?)

 

もっとサプライズを

「特定の人のコトを考えてプレゼントを選ぶのがスゴク楽しいんだって最近感じるようになった。」

「特定の人?」

「そ。主にあんたに対してなんだけど。」

「七ツ森くんからもらったプレゼント、とっても素敵で感動したよ。」

「だろ?感動してもらえて、俺も大満足。」

「ふふ!」

「…………ちょくちょくそんな顔されると、普段もサプライズとかしたくなる……」

「ふふ、してもいいよ?」

「いいのかよ?学校とか、登下校中とか、いつでもやるぞ?」

「楽しみにしてます♪」

「…………や……ムリっす。生活できなくなりやす……」

(どれだけサプライズするつもりだったんだろう?)

 

眠くなりそう

「……ふふっ。」

「え、なに?なんで笑ってんの。」

「ううん。ここって薄暗いし、雰囲気がよくて七ツ森くん、眠くならないかなって。」

「この状況だからこそ眠くならないでしょ。」

「そう?」

「あんたは眠くなっちゃったの?」

「眠くはないけど、うっとりするような気分だなぁって。」

「うっとりねぇ……グッスリじゃなくて?」

「この間の、音楽室の七ツ森くんみたいに?」

「あ、あれはッ……」

「ふふ。でも、状況は全然違うけれど、きっと同じような気持ちよさかも。」

「あー……たしかに。でも、今は本当に眠くないよ。あんたがいるから。」

(七ツ森くん……)

 

いろんなカオ

「◯◯。」

「なに、七ツ森くん?」

「同級生の中で、俺のいろんなカオを知ってるのはあんただけだ。」

「うん。」

「前に、女装したこともあるよな。」

「うん、あったね。」

「…………何とも、思わないの?引くとかキモチワルイとか。なんていうか……多面性あるのってブキミだな、とか。」

「え?」

「エッ?…………やっぱあんた、サイコーだ。あんたに出会えて、俺は本当に報われた。……サンキュ。」

「どういたしまして。七ツ森くんの女装、本当にカワイかったよ♡」

「あんたの大変身もな♡」

(ふふっ!)

 

フォトメインのSNS

「そういえば……俺、フォトメインのSNSやってるんだけど。」

「えぇと……どれ?」

Nanaじゃないヤツ。女のコのカッコしてるほうのアカウント。ま、最近あんまり更新してないけど。リア充なもんで。」

「?」

「たださ。俺に本気でお熱な男子ファンもいて。もちろん、女のコのカッコのな?」

「う、うん。」

「どうやら本体が男だってわかってないっぽい。大半のファンにはバレてるから、そろそろ気付いて欲しいんだけど……かといって、今さら “7♡coは男です” って正体バラすのもタイミング悪いし。けど、このまま女の子って信じて恋して、彼らのリアルな恋愛時間削っちゃうのも申し訳ないんだよな……」

「うーん……」

「んー……SNS、スッパリやめりゃいいのかな?」

「でも、想いの形はどうであれ、ファンがたくさんいるんだよね?」

「いる。あんた、鋭いね。この話題、あんたにしかできないからさ、これからも相談に乗ってくれる?」

(えぇと、七ツ森くんが女装しているSNSの、悩み相談ということかな?)

 

記念日の過ごしかた

「なあ、あんたんちって誕生日とかみんなで祝うタイプ?」

「え?」

「や、ウチさ、そういうとこ案外ドライで。母さんはお祝いとかハデにやりたいみたいなんだけど、親父と姉貴はなんつーか……ハートがクールでさ。俺も特別ハデにしたくはないけど、記念日とかそういうのって、家族でもやったほうがいい派なんだよな。」

「なるほど……お母さん、ちょっと可哀そうだもんね?」

「そうそう。誕生日とかクリスマスはさ、みんなからプレゼントはあるんだけど、それだけ。母さん、本当はごちそう作って、ケーキ食べて、ハッピーバースデーって盛り上がりたいっぽい。親父と姉貴は仕事でいつも帰りが遅いから そういう日は、俺がちょっとだけ母さんに付き合って、プチパーティーみたいのしてる。」

「ふふ。七ツ森くん、優しいんだね?」

「今頃気づいた?……あれ?なんでこんな話になったんだっけ?」

(七ツ森くんの家族のこと、少しだけ知ることができたみたい)

 

恋愛の悩み

関係は、キープくん?

「キープくん……」

「?」

「だったら複雑だなー……」

「ねえ、なんのこと?」

「あんたと俺の関係のコト。」

「え……」

「や、位置づけを確定させたいワケじゃない。でも、なんかこう、モヤッとした状態で気分がどうしてもスッキリしなくて。……あんたはさ、どういう風に見てんの?俺のこと。」

「あの……」

「んー、それじゃ答えづらいか。つまり、そのだな……俺以外で、特別気になるヤツとか、いたり?」

「それは……」

「……ヤバ。この質問はキモチワルイわ。ゴメン。今言ったこと、忘れて。俺、ひとりで焦ってんな。カッコワル……」

(七ツ森くん?)

 

あんたはヒロイン

「紅一点のグループにありがちなビミョーな空気感なんだよな、今。」

「?」

「なあ。気づいてないかもだけど、あんたはヒロインなんだぜ?」

「えっ、わたしがヒロイン!?」

「そ。けど、今の俺はヒーローでも王子様でもない。おそらく、ただのナイトだ。」

「ナイト……」

「……と、考えないといけない心境なワケ。」

「??」

「……◯◯。このナイトたちの中にひとり、特別扱いしてるヤツいるだろ?」

「え……」

「いいんだ。わかんなくていいコトに、俺が勝手に気付いちゃっただけだからさ。ハハ……これって、ジェラシー?」

(七ツ森くん……)

 

なぜか少し怖い顔

「…………」

「…………」

「…………」

「……七ツ森くん、怒ってる?」

「……え?」

「怖い顔してるから……わたし、気に障ることでもしたのかと思って。」

「あぁ……ゴメン。今日のデートで何かあったとかじゃないから。
 ……逆に聞いていいか?」

「う、うん。」

「俺、あんたに嫌われるようなコトなにかした?」

「え?」

「辛い。心が張り裂けるって、初めて体験した。
 ……あんたに嫌われるのは、世界の終わりと同じだ。」

「七ツ森くん……」

「嫌いに……ならないでくれ。」

(七ツ森くん、辛そう……わたしにも何か原因があるのかな……)

 

勝手な思い込み?

「…………
 ……参ったな。」

「どうしたの?」

「気づいてねぇの?」

「?」

「ハッ……俺の勝手な思い込み?」

「あの、七ツ森くん?」

「ちょっと黙っててくれねーか。」

「…………」

「…………
 悪い。八つ当たりとかサイテー、俺。
 自分に原因があるのかもしんねーのに……
 でも、アイツと笑い合ってるのかもって考えたらもう
――

「七ツ森くん……」

「ダセェなー。これ、100%ジェラシーだわ。◯◯、ゴメン。」

(七ツ森くん、辛そう……わたしにも何か原因があるのかな……)

 

味わう喪失感

「◯◯。単刀直入に聞く。」

「なに?」

「カザマのこと、好き?」

「えっ!?」

「そうだろ?」

「それは……」

「じゃなきゃ納得できねぇし。このミゾ……喪失感。
 いつも隣にいたのが、今、そうじゃなくなって
――
 でも、あんたが幸せなら。アイツを選んだなら、それでいい。応援する。
 けど、こうして二人でいると、俺はまた、あんたのことを……
 
………… 」

(七ツ森くん…… 風真くんとのこと、気にしてる)

 

キレイしか言えない

「アイツなら、こんなホタルの大群を見たらいろんなコト教えてくれるんだろうなー。」

「それって、本多くんのこと?」

「しかいないでしょ。知りたいことから、どうでもいいコトまで、楽しそうにさ。俺にはできない技だわ……この風景を見ても、キレイくらいしか言えない。……コイツらの昼間の姿見たら、ちょっと引くけど。」

「ふふ!」

「…………俺はさ。アタマ良くないし、なんか怪しいし、学校じゃネクラみたいなカンジで。ダーホンみたいにポジティブシンキングを表面に出せない性格だけどさ。アイツに恋愛で負けるのだけは絶対にイヤだ。」

「えっ?」

「ダーホンには、ゼッテー負けねぇ。」

(七ツ森くん、本多くんとのこと、気にしてる?)

 

ホタルが髪飾りみたい

「あ……」

「ん?」

「あんたの髪。今、ホタルが止まった。」

「えっ。」

「キラキラ光る髪飾りみたいだぜ?……キレイだ。」

「ホント?見てみたいなぁ。」

「なら、写真撮る?ちょっと待ってな。」

「うん!」

「あ!あーあ、飛んでっちゃった。はしゃぐから。」

「うぅ……」

「……プッ!こんなロマンチックな場所でもあんたは普段とゼンゼン変わんないんだな。」

「そう?」

「そう。俺は……この場所の魔法にかかりまくってんのに。」

(ホタルの住処の魔法?)

 

なんでそんなにカワイイ

「わぁ、キレイ!ホタルがたくさん……」

「ああ。」

「すごいね……」

「ヤバ……すげーキラキラしてるし……」

「こっちにもホタルがたくさん。ね、見て見て!」

「う……ダメだ、俺。ダメだぞ……」

「七ツ森くん?」

「…………あぁもうっ!なんでそんなにカワイイんだよ!」

「えっ!?」

「いつも以上にカワイくなられるとどうにかなっちまいそうだ、マジで……」

「?」

「耐えろ、俺。流されたら、タダのチャラ男だ……」

「七ツ森くん、大丈夫?」

「クッ……だからそんな顔で見んなっつーの!」

(七ツ森くん、顔が真っ赤?)

 

友人

抜け駆けで罪悪感

「今頃何してんのかなー……あいつら。」

「あいつら……あ。風真くんと本多くんのこと?」

「そ。お馴染みのメンバー。なんていうか、ホラ。俺たち、抜け駆けでデートしてるワケだし。罪悪感?ちょっとそんな感じしてさ。べつに、あんたとデートすんのにあいつらに断り入れる必要はないんだけど。今日みたいにスゲー充実してるとさ、二人に悪い気する。」

「ふふ!」

「笑うなよ。俺は案外マジメな男なんだぜ?」

「うん、知ってるよ。」

「たく……ま、今度、美味いスイーツでもおごって心の中で謝っとくか。」

(七ツ森くんて、友だち思いなんだね)

 

不思議なグループ

「……なあ、ちょっと思ったんだけど。」

「ん?」

「俺たち――カザマとダーホンと俺、この男三人組。不思議じゃねぇ?」

「不思議?」

「うん。俺はトモダチとか作んの、自分からしないタイプなんだけどさ。気付いたらこのグループがあって。いつの間にか、俺はソコにいた。“類は友を呼ぶ”っていうだろ。俺、あいつらとどっか似てんの?」

「うーん……」

「ビジュアルも感性も誰ひとりかぶらない。性格もバラバラ。はば学にいなけりゃ、きっと一生関わることはないと思う。でも、こうしてあんたを含めて4人、個性バラバラのメンツで、1つのグループができた。不思議だ……こんなにごちゃまぜなのに、妙に居心地がイイ。俺、このグループが、スキだ。」

(ふふ!きっとみんなも同じように思ってるよ)

 

多い友だち

「あんた、トモダチが多いよな。」

「うん、そうかも。」

「校内でしゃべってたり、下校したり、常に誰かといるもんな。」

「うん。」

「その中のひとりが、まあ俺なんですけど。」

「ふふ!」

「トモダチかー……俺は大勢と何かすることってニガテだから尊敬する。男女分け隔てなくとか、マジ難しすぎるし。」

「それはどうかな……」

「エッ!? 男子と女子で付き合い方、違うの!? じゃあ、男子は―― “本命” と “それ以外” とか?」

「ふふ……」

「なに、その意味深な笑み!俺のポジションてどこら辺!?」

(七ツ森くん、面白いなぁ)

 

人気者のホタル

「あ……見ろよ、あそこ。ホタルがたくさん集まってる。」

「ホントだ!あそこだけすごく光ってるね?」

「ああ。人気者のホタルでもいるのかねぇ。」

「あはは!」

「そういえば、あんたに似てるわ。あの雰囲気。」

「わたし?」

「そ。友だちも多いし。よくあんな感じで人に囲まれてる。その中心は、いつもあんただ。楽しそうにしゃべって、笑って。笑顔、サイコーにキラキラしてるぜ?」

「なんだか恥ずかしいな……」

「ハハ!そうそう、そういう反応もしてくれるからいつまでも離したくなくなる。」

「えっ?」

「いんや。こっちのコト。」

(友だちか……たしかに、たくさんいるかも)

 

学校ではどう見える?

「俺って……」

「ん?」

「学校じゃ、周りからどー見られてんだろ。地味だし、分厚いメガネだし。やっぱネクラとか、とっつきづらいとか?そういうオーラ、出しまくりだしな。」

「そんなことはないと思うけど?」

「なんで。」

「七ツ森くんてやっぱりモデルさんなんだなって思う。何もしなくても、カッコいいもん。」

「直球……
 ……カッコいい、か。それって、武器になんのかな。」

「武器?」

「トモダチつくったり、スキな子にアタックしたり?」

「えぇと……なると思う、かな?」

「ん、OK。じゃ、これから少しずつ武器を試していくんでお付き合いヨロシク。」

(……わたしに?)

 

誰かひとりを愛すること

「俺たち、生き物に生まれた以上、“トモダチ” だけで終わるってコト、ないんかな。」

「?」

「あー……わかりづらいか。ごまんといる人間たちとの関わりの中、いつかは誰かひとりを愛して、結婚して。そんなときが来る……ハズだ。」

「あ、うん……」

「でも、愛した人と一緒になれるとは限らない。もしかしたら、愛していても結ばれないってことだってあり得るだろ。」

「うーん……」

「なんかさ、こんだけいるホタルを見てたらそんな人生…… ムシ生?を送らざるを得ないヤツもいるんだろうなって思ってさ。」

「そ、そうだね。」

「知り合い、トモダチ、恋人、夫婦。人生の理想的なゴールにたどり着くにはまず人とトモダチになる必要がある。俺はソレを作るのに奥手だから、これから苦労すんのかなー……ハァ。な、あんたは俺のトモダチだよな?」

(七ツ森くんなら、友だちを作るきっかけたくさんあると思うけどな……)

 

お楽しみ

はばたき学園に来て正解

「ハァ……」

「どうしたの?ため息なんてついて。」

「ん?あぁ、ちょっと、思い出しため息。」

「ふふっ、思い出しため息?」

「うん。はばたき学園に入学して本当に正解だったなって。中坊ンとき、はばたき市でモデル事務所の人にスカウトされなかったら はば学に通うことは無かったと思う。」

「そうなの?」

「ああ。はば学は、実家からだと隣町で少し遠かったし、羽ヶ崎学園のほうが近かったんだよな。だいたい、はば学は超進学校で。おまけに、教師も生徒も個性豊かすぎるだろ?俺、もともとそういうニギヤカなの苦手だから。」

「そうなんだ……」

「中坊ンとき、俺はネット世界の住人だったからリアルのほうは何するのも面倒でさ。……けど。はば学であんたに会って考え変わった。」

「え、わたし?」

「そ。もちろん、モデルの仕事がキッカケだけど意識改革のいちばんの原因は、あんた。ネット世界はさ、ひとりぼっちで自己満足するための逃げ場所だったんだ。今はリアルの……この場所、時間、人間。会話、ふれあい、全てを大切に想うこと。ぜんぶ、あんたに教えてもらった。今が、サイコーに楽しいんだ。……ありがとな。」

(七ツ森くん……)

 

女装する男子のこと

「◯◯。女装する男子って、どう思う?」

「えぇと……例えばジェンダーレスとか、そういうの?」

「んー……まぁ、そうかな。魔女になったり、女子高生風に変装したり。」

「……コスプレ?」

「あぁ……そっか、女装じゃなくてコスプレかもな?」

「ふふ。」

「やっぱ、一般的には……アレか。」

「いろいろなカタチで自己表現することは自由なんじゃないかな。」

「自己表現、なる……イイこと言った!」

「やった!」

「それだ。キレイに、可愛く見せたくなる自己表現。俺にはその欲求がある。ま、俺の場合、ちっちゃい頃から姉貴にカワイイ服とか着せられてたのが始まりだけど……」

「?」

「なあ。女子って男子を女装させたくなるもんなの?」

「えぇっ!?」

「あ、すげー驚いてる。じゃあ、ウチの姉貴がそういう性分なだけか……」

(七ツ森くんのお姉さん、弟の七ツ森くんでいったい何を……!?)

 

ホタルを数え続けて

「ホタルが一匹、ホタルが二匹、ホタルが……数えるには、さすがに多すぎるな。」

「ふふっ。全部数えるつもりだったの?」

「ああ。」

「それじゃ、朝になっちゃうよ。」

「そ。朝まであんたと一緒にいたいから。」

「え……」

「………… !! ヤバ……何この雰囲気……流されて勝手にクチが滑る。朝まで一緒?なにそれ、キザいし、クサいし、ヤラしー……」

「あの、七ツ森くん?」

「今のナシな!これはホタルの住処が悪い。」

「???」

「正式に恋人になってから……改めて、来る。」

(正式に恋人?)

 

ホタルはモデルみたい

「俺、昆虫ってマジで苦手なんだけど夜のホタルは別。」

「ふふ。」

「本体、見えないし、やっぱ光がすげーキレイだし。あー……ステージ上のモデルみたいなモンかも。」

「どうして?」

「他人に美しく見せるために、見えなくてイイところは上手く隠して、見えるところは最大限に着飾る。こいつらも、コミュニケーション……主に求愛行動だけど、全力でアピールしてる。そんで人間までトリコにしちゃうなんてマジすげーな、ホタル。」

「うん、そうだね!……あ、七ツ森くんの肩、ホタルがとまったよ。」

「ウソッ!? 取って! お願いッ! スキンシップはNGっ!」

(七ツ森くん、本当に虫が苦手なんだね……)