日常のひとコマ 本多行

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オススメの参考書

(うん、次のテストもがんばるぞ!参考書、買って帰ろうかな)

「◯◯ちゃん、いらっしゃいませ。」

「あ、本多くん。今日はシフト入ってる日なんだね。」

「うんうん、そういう君は……参考書を買いに来た?」

「うん、あたり。」

「じゃあ、おすすめがあるよ。これこれ。解説がすごく面白いんだ。」

「へぇ、ありがとう。本多くんのおすすめなら間違いないね?」

「それはどうかな……?」

「えっ?」

「だってさ、君にこの前の期末テスト、負けちゃったからさ……君をかく乱する作戦かもよ?」

「ええっ!?」

(でも、本多くんにライバル視してもらえるってうれしいかも?)

 

キープしていた「はばチャ」最新号

(今日は『はばチャ』の発売日だ!本屋さんに寄ってみよう)

「◯◯ちゃん。ごめん……」

「あっ、本多くん。どうしたの?」

「『はばチャ』の最新号、ついさっき売り切れたよ……」

「あ、そっか。でも、よくわかったね。」

「はぁ、実は君の分、一冊ここの隙間に隠してたんだ……」

「えっ!」

「だー、でも、ごめん。『書店員のオレ』と『君の友だちのオレ』がケンカして――書店員の方が勝っちゃった。」

「そっか。でも書店員さんとして正しいよ。」

「はぁ……この辺にもう一冊、挟まってないかな……?」

(ふふっ。ありがとう、本多くん)

 

楽しい気分で思わず歌が

(うん、本屋さんでのバイトしてると、勉強に力が入る気がするな!)

「◯◯ちゃん。最近、君と話すのがますます楽しくなってきたよ。」

「ふふっ、うれしいな。」

「1匹2匹は、本の虫~♪ 3匹4匹、腹の虫~♪ グー!」

「ふふっ、可愛い歌!」

(本多くん、楽しそう。……ふふ、髪の毛もぴょんぴょん揺れてる)

「うんうん、君も一緒に~。 ああ、これね。小さい頃、母さんがよく歌ってくれたオリジナル数え歌。なんか虫の数を数えてるのって、面白いよね?」

「ふふっ、素敵なお母さんだね。」

「ありがとう。でも君だって、勉強も本も好きだからきっといいお母さんになるよ?」

「えっ!」

(うれしいけど、ちょっと恥ずかしいな……)

 

本の内容はすぐに忘れがち

(この前、本多くんと観た『初恋の行く道』の原作本、人気だな……)

「『初恋の行く道』、新装本が出たんだね。」

「うん、ますます人気だよ。」

「もしさ、原作を読む前に映画見ていたら、どんな感想だったかなぁ?」

「ふふ。でも、もう忘れられないから、確かめられないね?」

「うーん……でもオレ、君と観た映画の記憶は無理だけど、本の内容って結構簡単に忘れちゃうんだ。」

「え、本多くんでも?」

「うん、オレ中学の頃に図書室読破チャレンジやったんだけど、全然意味なかった。だって内容忘れちゃうもん。」

「ふふっ、そっか。」

「でもね。今は大丈夫。忘れない方法、覚えたんだ。すごく簡単!本の背表紙を時々見るだけ。するとファーっと頭に内容がよみがえる。何度かやると記憶が定着する感じ。」

「そうなんだ。」

「そそ。だから、オレ、こうやって書棚の整理するの大事だって思ってる。」

(本多くんにはただの整理じゃなくて、本の内容を思い出すキッカケだったんだ。すごいな……)

 

サイン攻めのクイズ王

男の子「クイズ王、サインありがとう!」

「いいよ。質問はまた今度ね。」

(ふふっ。本多くん、子どもたちにつかまってるのかな?)

「本多くん、最近、大人気だね?」

「うんうん。テレビ放送の後、すごいんだ。だから店長に叱られちゃったよ。サインはひとり1枚まで。質問コーナーはダメだってさ。」

「そっか。男の子はサインもらえてうれしそうだったよ。」

「ならいいけどさ。でも、質問に答えないクイズ王ってどうなのかな……?」

「本多くん、有名人みたいですごいな。」

「え、そかな?君もサインいる?」

(本多くん、まんざらでもないみたい?)

 

植物に関する本ならこれ

(こないだの課外授業で見た『サンカヨウ』、キレイだったな…… 図鑑や写真集なら、また見られるかな?)

「◯◯ちゃん、いらっしゃいませー!」

「あれ…… 今日、本多くん、バイト?」

「うん、ヘルプ頼まれてね。君は?」

「こないだの課外授業で見た『サンカヨウ』がキレイだったから、植物の写真集が気になって。」

「うんうん。そういう興味のつなげ方っていいよね。ちょっと待って、こっち。」

 

「ほら、この辺。『高山植物カラー名鑑』に、『食虫植物ミクロの世界』、色々あるよ。でもね、だいたい10リッチくらいするんだよね。」

「わぁ、結構するんだね……」

「そだ。今度さ、自分たちで植物写真集を作るってどう?携帯のカメラでパシャってさ。」

「うん、面白そうだね?」

「そそ、こんな高いの買わないでいいって。もったいない。」

(そんなこと、大きな声で言ったら店長に怒られるよ……?)

 

お客さんが多くて大満足

「◯◯ちゃん。」

「あ、本多くん。今帰り?」

「ううん、これからバイト。店長から電話あってさ、頼まれたんだ。じゃね!」

(……お客さんとしてお店に行ってみようかな?)

「あれっ? どうしたの?」

「お疲れさま。本多くんの様子、見に来たよ。」

「そなの?嬉しいな。今日は色んな人が来てくれる。 あ、ほら、前にさ 海で子どもたちとヒライソガニ捕ったでしょ?」

「うん。お味噌汁に入れるとおいしいカニだよね?」

「ピポピポーン!あの子たちが水槽持って来てさ。今はペットとして飼ってるんだって。」

「すっかり、お友だちだね?」

「ああ、でも 水槽持って入ってきたこと、店長には内緒だよ?」

(ふふっ、人気者は大変そう?)

 

少し暴走したことを反省

(ふぅ、レジ締めも終わり。 あれ?本多くんは……)

「本多くん、まだ書棚の整理?」

「ううん、本の整理してれば、オレの頭の中も……って思ったけど、全然ダメ。」

「え……」

「ふぅ……もう、整理やめた。 あのさ、この前はバイト中にごめんね。オレ、暴走して君に変なこと言ったよね。家で妹と母さんにも叱られた。」

「ええ!? 家で話したの?恥ずかしいよ……」

「ええっ。やっぱりか…… 二人とも オレといると、君が恥ずかしい思いしてるって言うんだ。」

「でも、その分楽しいこともいっぱいだよ?」

「それって……楽しい方が多い?」

「ふふっ、もちろん。」

「やったー!」

店長「君たち!店内でデートは禁止だって言ったろー。」

(やっぱり、恥ずかしい方が多いかも……)

 

昆虫展の虫を詳しくチェック

(昆虫カラー名鑑の増補版か……立派な本だな……)

「◯◯ちゃん、目の付け所がいいね。こないだ一緒に見た昆虫展の虫たちも載ってるよ。」

「うん、本多くん、好きそう。」

「見てみて、これ。アサギマダラの1000キロの旅を追いかけた本。こっちはオオカバマダラの3500キロ。君はどれが気になる?」

(うーん……本棚の本より、本多くんが大事そうに持ってる本が気になるかも……)

「ああ、君もこれかぁー!」

「だって、本多くんが大事そうに持ってるから。」

「うんうん、いいよ。これは『象虫の写真集』、どぞ!」

(ゾウムシ……? えぇと、やっぱりいいかな?)

 

好評な紹介文

(本多くんが考えた紹介文、好評だな……)

「『大人は高校生の自分に、高校生は明日の自分に会える本』か……」

店長「本多君のPOP、いいよね。いつか君にもお願いするよ。」

「あ、はい!本多くんみたいにはできそうもないけど、楽しそうだな……」

「お疲れ様。本多くんの紹介文、好評だって店長が褒めてたよ?」

「そなの?少女コミックだったから、ちょっと心配だったけど、よかった。」

「わたしも読みたくなったかも。『大人は高校生の自分に、高校生は明日の自分に会える本』。」

「うんうん、試してみてよ?ちゃんと明日の君に会えるか、さ。」

「本多くんは会えたの?」

「あ、オレ?オレはなぜか君に会えたんだ。不思議だよね。」

「ええっ?」

(どういうことなんだろう……?)

 

店長からの信頼

「◯◯ちゃん。お疲れ様。店長から伝言っ。店員おすすめの本、今月は君に任せるってさ。」

「ええ!? わたしに?」

「そそ、店長は信頼していないと、お客さんへのおすすめを任せたりはしないよ?」

「本多くん、どうしよう……」

「じっくり考えればいいって。ほら、お客さんだよ!」

「うれしいけど、責任重大だな……」

「◯◯ちゃん。どう?おすすめ決まりそう?」

「ううん、全然……」

「もっと楽しまなきゃ!そだ。単純に君が最近読んで、ワクワクした本をおすすめするってどうかな。何かある?」

「えぇと……最近読んだ……『はばチャ』かな?」

「雑誌かぁ!? うんうん、いいね。君らしいし、ナイス着眼点!」

(本当に大丈夫かな……?)

 

顕微鏡の付録について

(最近、付録が立派な雑誌が多いな。うーん、陳列が難しいんだよね……)

「豪華付録の冊子なのか?アイテムに冊子がついているのか?」

「あ、本多くん、お疲れ様。ふふっ、本当にそんな感じ。」

「だよね。あ、でもオレ結構好きだよ。この手の雑誌。ちょっと前だけど、顕微鏡の付録があったんだ。毎号集めると、最後に顕微鏡ができるってやつ。」

「ふふっ、面白いね。」

「でしょっ。誰が考えたんだろうね?すごくいいアイディア。」

「本多くんならもっと面白いこと考えそう。」

「ああ、その挑戦受ける。考えてみるよっ!」

「……あ、本多くん。もう上がる時間だよ?」

「うーん、もうちょっとでいいアイディアになりそうなんだけど。ほら、書籍流通って委託期間が長いからさ、返品可能な期間に孵化しちゃいそうで……」

「ふ、孵化?」

「そそ、その問題が上手く解決できないんだよな……」

(本多くん、何かとんでもないこと考えてそうだな……)

 

大事な本を落としそう

「今日は店内の模様替えだ。」

「わぁぁ~っ!!」

「えっ、本多くん、大丈夫!?」

(ああっ、本を持ってあげないと……!)

 

「◯◯ちゃん。ありがとう、助かったよ。」

「よかった。本多くんの声がしたから、びっくりしたよ。」

「うん、貴重な本持ってたから、つい大きな声出ちゃったよ。これ、『初恋の行く道』の初版本。見返しに作者のサイン入りだよ?」

(ふぅ、大事な本を傷つけないでよかった……)

 

クイズ間違え探し

(ふぅ、やっとお客さんの波が途切れたみたい)

「本多くん。そろそろ、15分休憩だよ?」

「もう?忙しいとあっという間だよ。そうだ。クイズ間違え探し!このコーナーの本を少しだけ変えたのわかる?」

「わたしだって、ここのスタッフだよ?」

(……って、あれ?本多くん、髪切った?)

「ピポピポーン!正解っ! 昨日、髪切ったんだ。……って君、問題ちゃんと聞いてた?思わず正解にしちゃったけどさぁ……」

(ふふっ!本多くんと一緒のバイト、楽しいな!)

 

休憩なしで大忙し

(今日はたくさんの本が搬入される日だ。がんばるぞ!)

「◯◯ちゃん、今日は忙しくなるよ。頑張ろう!」

「……あれ?本多くんは、まだ休憩しないの?」

「オレ、店長からここの書棚、任されてるからさ。面陳列する本を変えてみようかなって。表紙が見えると、お客さんの目に止まるでしょ?」

「すごいな。ここは本多くんのおすすめコーナーだね?」

「うんうん、そんな感じにできたらいいよなぁ。将来、君と一緒に好きな本だけ集めて、本屋ができたらすごく楽しいかもね?」

「本多くんが選んだ本しか置いてない本屋さんか……大人気になりそう。」

「君も選ぶんだよ?オレと君の店なんだからさ。」

「えっ。」

「ね?」

(すごいことを言われた気がする……けど、もしそんな本屋さんができたら楽しいだろうな……)

 

いっしょにバイト先へ

(今日はバイトの日だ!)

「◯◯ちゃん。待って待って! 君もこれからバイトだよね?」

「あ、本多くん。うん、そうだよ。」

「やった、一緒に行こう!」

――今日さ、君と一緒に来たから、学校の続きみたいだね?」

「うん、そうだね。」

「ほら、オレ、中学まで図書室の住人だったし、クラブ活動って経験無いんだ。だからね、放課後こうやって君といるの、なんか楽しくてさ。」

「ふふっ。そういえば、二人で図書委員やってるみたいだね。」

「そそ。君とこうしてるとクラブや委員会みたいで、最高っ!おまけにアルバイト料までもらえるんだよ?」

「ふふっ、店長に怒られるよ?」

店長「二人して、何ヒソヒソ話してるんだ?ほら、レジのヘルプ頼むよ。」

「はいはーい!」

「はーい。」

「ははっ、これからもよろしく!」

 

探していた本を発見

(欲しかった本、前は売り切れだったんだよね。……ちょっと探してみよう)

「◯◯ちゃん、いらっしゃいませ!」

「あっ、本多くん。今日はバイトの日なんだね。」

「そそ、今日はお客さん少ないしちょっとゆったりかな?君は?」

「うん、えぇとね――

「ああ、ちょっと待って!言わないでいいよ。こっち、来て。」

「え?」

「コレでしょ?ほら前にさ、君が探してた本。」

「うん。よくわかったね。」

「うんうん、バイトしてた時、そんなこと話してたでしょ?あ、でも入荷したってわけじゃなくて、変な棚に差し込んであったのを見つけたんだ。」

「そうだったの。よく見つけたね?」

「うん、発想の転換!お客さん気分で、この本を探すとしたらって考えたんだ。そしたら、すぐ見つかったよ。お客さんが一回手に取ってから、自分が考える正しい場所に置いちゃったんだね。」

(さすが、本多くん!名推理だな……)