日常のひとコマ 本多行
- オススメの参考書
- キープしていた「はばチャ」最新号
- 楽しい気分で思わず歌が
- 本の内容はすぐに忘れがち
- サイン攻めのクイズ王
- 植物に関する本ならこれ
- お客さんが多くて大満足
- 少し暴走したことを反省
- 昆虫展の虫を詳しくチェック
- 好評な紹介文
- 店長からの信頼
- 顕微鏡の付録について
- 大事な本を落としそう
- クイズ間違え探し
- 休憩なしで大忙し
- いっしょにバイト先へ
- 探していた本を発見
オススメの参考書
(うん、次のテストもがんばるぞ!参考書、買って帰ろうかな)
︙
「◯◯ちゃん、いらっしゃいませ。」
「あ、本多くん。今日はシフト入ってる日なんだね。」
「うんうん、そういう君は……参考書を買いに来た?」
「うん、あたり。」
「じゃあ、おすすめがあるよ。これこれ。解説がすごく面白いんだ。」
「へぇ、ありがとう。本多くんのおすすめなら間違いないね?」
「それはどうかな……?」
「えっ?」
「だってさ、君にこの前の期末テスト、負けちゃったからさ……君をかく乱する作戦かもよ?」
「ええっ!?」
(でも、本多くんにライバル視してもらえるってうれしいかも?)
キープしていた「はばチャ」最新号
(今日は『はばチャ』の発売日だ!本屋さんに寄ってみよう)
︙
「◯◯ちゃん。ごめん……」
「あっ、本多くん。どうしたの?」
「『はばチャ』の最新号、ついさっき売り切れたよ……」
「あ、そっか。でも、よくわかったね。」
「はぁ、実は君の分、一冊ここの隙間に隠してたんだ……」
「えっ!」
「だー、でも、ごめん。『書店員のオレ』と『君の友だちのオレ』がケンカして――書店員の方が勝っちゃった。」
「そっか。でも書店員さんとして正しいよ。」
「はぁ……この辺にもう一冊、挟まってないかな……?」
(ふふっ。ありがとう、本多くん)
楽しい気分で思わず歌が
(うん、本屋さんでのバイトしてると、勉強に力が入る気がするな!)
「◯◯ちゃん。最近、君と話すのがますます楽しくなってきたよ。」
「ふふっ、うれしいな。」
︙
「1匹2匹は、本の虫~♪ 3匹4匹、腹の虫~♪ グー!」
「ふふっ、可愛い歌!」
(本多くん、楽しそう。……ふふ、髪の毛もぴょんぴょん揺れてる)
「うんうん、君も一緒に~。 ああ、これね。小さい頃、母さんがよく歌ってくれたオリジナル数え歌。なんか虫の数を数えてるのって、面白いよね?」
「ふふっ、素敵なお母さんだね。」
「ありがとう。でも君だって、勉強も本も好きだからきっといいお母さんになるよ?」
「えっ!」
(うれしいけど、ちょっと恥ずかしいな……)
本の内容はすぐに忘れがち
(この前、本多くんと観た『初恋の行く道』の原作本、人気だな……)
「『初恋の行く道』、新装本が出たんだね。」
「うん、ますます人気だよ。」
「もしさ、原作を読む前に映画見ていたら、どんな感想だったかなぁ?」
「ふふ。でも、もう忘れられないから、確かめられないね?」
「うーん……でもオレ、君と観た映画の記憶は無理だけど、本の内容って結構簡単に忘れちゃうんだ。」
「え、本多くんでも?」
「うん、オレ中学の頃に図書室読破チャレンジやったんだけど、全然意味なかった。だって内容忘れちゃうもん。」
「ふふっ、そっか。」
「でもね。今は大丈夫。忘れない方法、覚えたんだ。すごく簡単!本の背表紙を時々見るだけ。するとファーっと頭に内容がよみがえる。何度かやると記憶が定着する感じ。」
「そうなんだ。」
「そそ。だから、オレ、こうやって書棚の整理するの大事だって思ってる。」
(本多くんにはただの整理じゃなくて、本の内容を思い出すキッカケだったんだ。すごいな……)
サイン攻めのクイズ王
男の子「クイズ王、サインありがとう!」
「いいよ。質問はまた今度ね。」
(ふふっ。本多くん、子どもたちにつかまってるのかな?)
︙
「本多くん、最近、大人気だね?」
「うんうん。テレビ放送の後、すごいんだ。だから店長に叱られちゃったよ。サインはひとり1枚まで。質問コーナーはダメだってさ。」
「そっか。男の子はサインもらえてうれしそうだったよ。」
「ならいいけどさ。でも、質問に答えないクイズ王ってどうなのかな……?」
「本多くん、有名人みたいですごいな。」
「え、そかな?君もサインいる?」
(本多くん、まんざらでもないみたい?)
植物に関する本ならこれ
(こないだの課外授業で見た『サンカヨウ』、キレイだったな…… 図鑑や写真集なら、また見られるかな?)
︙
「◯◯ちゃん、いらっしゃいませー!」
「あれ…… 今日、本多くん、バイト?」
「うん、ヘルプ頼まれてね。君は?」
「こないだの課外授業で見た『サンカヨウ』がキレイだったから、植物の写真集が気になって。」
「うんうん。そういう興味のつなげ方っていいよね。ちょっと待って、こっち。」
「ほら、この辺。『高山植物カラー名鑑』に、『食虫植物ミクロの世界』、色々あるよ。でもね、だいたい10リッチくらいするんだよね。」
「わぁ、結構するんだね……」
「そだ。今度さ、自分たちで植物写真集を作るってどう?携帯のカメラでパシャってさ。」
「うん、面白そうだね?」
「そそ、こんな高いの買わないでいいって。もったいない。」
(そんなこと、大きな声で言ったら店長に怒られるよ……?)
お客さんが多くて大満足
「◯◯ちゃん。」
「あ、本多くん。今帰り?」
「ううん、これからバイト。店長から電話あってさ、頼まれたんだ。じゃね!」
(……お客さんとしてお店に行ってみようかな?)
︙
「あれっ? どうしたの?」
「お疲れさま。本多くんの様子、見に来たよ。」
「そなの?嬉しいな。今日は色んな人が来てくれる。 あ、ほら、前にさ 海で子どもたちとヒライソガニ捕ったでしょ?」
「うん。お味噌汁に入れるとおいしいカニだよね?」
「ピポピポーン!あの子たちが水槽持って来てさ。今はペットとして飼ってるんだって。」
「すっかり、お友だちだね?」
「ああ、でも 水槽持って入ってきたこと、店長には内緒だよ?」
(ふふっ、人気者は大変そう?)
少し暴走したことを反省
(ふぅ、レジ締めも終わり。 あれ?本多くんは……)
︙
「本多くん、まだ書棚の整理?」
「ううん、本の整理してれば、オレの頭の中も……って思ったけど、全然ダメ。」
「え……」
「ふぅ……もう、整理やめた。 あのさ、この前はバイト中にごめんね。オレ、暴走して君に変なこと言ったよね。家で妹と母さんにも叱られた。」
「ええ!? 家で話したの?恥ずかしいよ……」
「ええっ。やっぱりか…… 二人とも オレといると、君が恥ずかしい思いしてるって言うんだ。」
「でも、その分楽しいこともいっぱいだよ?」
「それって……楽しい方が多い?」
「ふふっ、もちろん。」
「やったー!」
店長「君たち!店内でデートは禁止だって言ったろー。」
(やっぱり、恥ずかしい方が多いかも……)
昆虫展の虫を詳しくチェック
(昆虫カラー名鑑の増補版か……立派な本だな……)
「◯◯ちゃん、目の付け所がいいね。こないだ一緒に見た昆虫展の虫たちも載ってるよ。」
「うん、本多くん、好きそう。」
「見てみて、これ。アサギマダラの1000キロの旅を追いかけた本。こっちはオオカバマダラの3500キロ。君はどれが気になる?」
(うーん……本棚の本より、本多くんが大事そうに持ってる本が気になるかも……)
「ああ、君もこれかぁー!」
「だって、本多くんが大事そうに持ってるから。」
「うんうん、いいよ。これは『象虫の写真集』、どぞ!」
(ゾウムシ……? えぇと、やっぱりいいかな?)
好評な紹介文
(本多くんが考えた紹介文、好評だな……)
「『大人は高校生の自分に、高校生は明日の自分に会える本』か……」
店長「本多君のPOP、いいよね。いつか君にもお願いするよ。」
「あ、はい!本多くんみたいにはできそうもないけど、楽しそうだな……」
︙
「お疲れ様。本多くんの紹介文、好評だって店長が褒めてたよ?」
「そなの?少女コミックだったから、ちょっと心配だったけど、よかった。」
「わたしも読みたくなったかも。『大人は高校生の自分に、高校生は明日の自分に会える本』。」
「うんうん、試してみてよ?ちゃんと明日の君に会えるか、さ。」
「本多くんは会えたの?」
「あ、オレ?オレはなぜか君に会えたんだ。不思議だよね。」
「ええっ?」
(どういうことなんだろう……?)
店長からの信頼
「◯◯ちゃん。お疲れ様。店長から伝言っ。店員おすすめの本、今月は君に任せるってさ。」
「ええ!? わたしに?」
「そそ、店長は信頼していないと、お客さんへのおすすめを任せたりはしないよ?」
「本多くん、どうしよう……」
「じっくり考えればいいって。ほら、お客さんだよ!」
「うれしいけど、責任重大だな……」
︙
「◯◯ちゃん。どう?おすすめ決まりそう?」
「ううん、全然……」
「もっと楽しまなきゃ!そだ。単純に君が最近読んで、ワクワクした本をおすすめするってどうかな。何かある?」
「えぇと……最近読んだ……『はばチャ』かな?」
「雑誌かぁ!? うんうん、いいね。君らしいし、ナイス着眼点!」
(本当に大丈夫かな……?)
顕微鏡の付録について
(最近、付録が立派な雑誌が多いな。うーん、陳列が難しいんだよね……)
「豪華付録の冊子なのか?アイテムに冊子がついているのか?」
「あ、本多くん、お疲れ様。ふふっ、本当にそんな感じ。」
「だよね。あ、でもオレ結構好きだよ。この手の雑誌。ちょっと前だけど、顕微鏡の付録があったんだ。毎号集めると、最後に顕微鏡ができるってやつ。」
「ふふっ、面白いね。」
「でしょっ。誰が考えたんだろうね?すごくいいアイディア。」
「本多くんならもっと面白いこと考えそう。」
「ああ、その挑戦受ける。考えてみるよっ!」
︙
「……あ、本多くん。もう上がる時間だよ?」
「うーん、もうちょっとでいいアイディアになりそうなんだけど。ほら、書籍流通って委託期間が長いからさ、返品可能な期間に孵化しちゃいそうで……」
「ふ、孵化?」
「そそ、その問題が上手く解決できないんだよな……」
(本多くん、何かとんでもないこと考えてそうだな……)
大事な本を落としそう
「今日は店内の模様替えだ。」
「わぁぁ~っ!!」
「えっ、本多くん、大丈夫!?」
(ああっ、本を持ってあげないと……!)
「◯◯ちゃん。ありがとう、助かったよ。」
「よかった。本多くんの声がしたから、びっくりしたよ。」
「うん、貴重な本持ってたから、つい大きな声出ちゃったよ。これ、『初恋の行く道』の初版本。見返しに作者のサイン入りだよ?」
(ふぅ、大事な本を傷つけないでよかった……)
クイズ間違え探し
(ふぅ、やっとお客さんの波が途切れたみたい)
「本多くん。そろそろ、15分休憩だよ?」
「もう?忙しいとあっという間だよ。そうだ。クイズ間違え探し!このコーナーの本を少しだけ変えたのわかる?」
「わたしだって、ここのスタッフだよ?」
(……って、あれ?本多くん、髪切った?)
「ピポピポーン!正解っ! 昨日、髪切ったんだ。……って君、問題ちゃんと聞いてた?思わず正解にしちゃったけどさぁ……」
(ふふっ!本多くんと一緒のバイト、楽しいな!)
休憩なしで大忙し
(今日はたくさんの本が搬入される日だ。がんばるぞ!)
「◯◯ちゃん、今日は忙しくなるよ。頑張ろう!」
︙
「……あれ?本多くんは、まだ休憩しないの?」
「オレ、店長からここの書棚、任されてるからさ。面陳列する本を変えてみようかなって。表紙が見えると、お客さんの目に止まるでしょ?」
「すごいな。ここは本多くんのおすすめコーナーだね?」
「うんうん、そんな感じにできたらいいよなぁ。将来、君と一緒に好きな本だけ集めて、本屋ができたらすごく楽しいかもね?」
「本多くんが選んだ本しか置いてない本屋さんか……大人気になりそう。」
「君も選ぶんだよ?オレと君の店なんだからさ。」
「えっ。」
「ね?」
(すごいことを言われた気がする……けど、もしそんな本屋さんができたら楽しいだろうな……)
いっしょにバイト先へ
(今日はバイトの日だ!)
「◯◯ちゃん。待って待って! 君もこれからバイトだよね?」
「あ、本多くん。うん、そうだよ。」
「やった、一緒に行こう!」
︙
「――今日さ、君と一緒に来たから、学校の続きみたいだね?」
「うん、そうだね。」
「ほら、オレ、中学まで図書室の住人だったし、クラブ活動って経験無いんだ。だからね、放課後こうやって君といるの、なんか楽しくてさ。」
「ふふっ。そういえば、二人で図書委員やってるみたいだね。」
「そそ。君とこうしてるとクラブや委員会みたいで、最高っ!おまけにアルバイト料までもらえるんだよ?」
「ふふっ、店長に怒られるよ?」
店長「二人して、何ヒソヒソ話してるんだ?ほら、レジのヘルプ頼むよ。」
「はいはーい!」
「はーい。」
「ははっ、これからもよろしく!」
探していた本を発見
(欲しかった本、前は売り切れだったんだよね。……ちょっと探してみよう)
「◯◯ちゃん、いらっしゃいませ!」
「あっ、本多くん。今日はバイトの日なんだね。」
「そそ、今日はお客さん少ないしちょっとゆったりかな?君は?」
「うん、えぇとね――」
「ああ、ちょっと待って!言わないでいいよ。こっち、来て。」
「え?」
「コレでしょ?ほら前にさ、君が探してた本。」
「うん。よくわかったね。」
「うんうん、バイトしてた時、そんなこと話してたでしょ?あ、でも入荷したってわけじゃなくて、変な棚に差し込んであったのを見つけたんだ。」
「そうだったの。よく見つけたね?」
「うん、発想の転換!お客さん気分で、この本を探すとしたらって考えたんだ。そしたら、すぐ見つかったよ。お客さんが一回手に取ってから、自分が考える正しい場所に置いちゃったんだね。」
(さすが、本多くん!名推理だな……)