日常のひとコマ 風真玲太

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オークションの仕事依頼

「話ってなに?」

「そうだ、こないだのチャリティーオークション、覚えてるか?」

「うん。風真くんがタキシードで司会してた。ほんと、すごかったな。」

「それはいいんだけどさ……会場にいたお客さんがさ、俺にまたオークションの仕事頼みたいって言ってるらしい。」

「へえ……!風真くんがやりたいって思ったらやってみたら?」

「そうだな……」

(風真くんは、真面目で色々考えちゃうから、少しでも背中を押してあげられたらいいな……)

「背中押してくれるのか?サンキュ。オークションで、色々な品が見られるのは好きだし……うん、そうだな。俺の考えてること伝えて、それでもやらせてもらえるなら。」

「わかってもらえるといいね。」

(また風真くんが司会する姿見られたらいいな……)

 

スケートで手をつないだこと

「そうだ、なんか話があるって言ってたよね。」

「うん、前さ おまえとアイススケート行っただろ?」

「うん。楽しかったね。」

「あんなに自然に、手つなげたの、久しぶりだった。」

「え?」

「同じクラスで近所に住んでて、近すぎてさ、逆に難しいよな、手繋ぐタイミング。」

「ふふっ、そうかも。」

「いつも近くにいられんのは、嬉しいんだけどさ?」

(風真くん、もっと手を繋ぎたいのかな……)

「うん、そうだな。今は自然だよな。ほら、手繋いで帰ろうぜ。」

「う、うん……」

(やっぱり繋ぎたかったんだ……)

 

ポケットに何かが

「風、出てきたね……」

「話し込んじゃったな。暗くなる前に帰るか。」

「うん。」

(……あれ?風真くんのポケットが膨らんでる?何か入ってるのかな)

「ははっ、流石の嗅覚だな?おまえと食べようと思ってさ、焼き芋、隠し持ってた。」

「えっ、本当に?」

「うん、制服の中に隠したら、すっかりタイミング逃してさ?」

「ふふっ、やった!ありがとう、風真くん。」

「その顔、キャンプの時も喜んでくれたもんな。遅くなるから、歩きながら食べようぜ。」

 

勝者の振る舞いを

「改めて言うのも変だけどさ……良かったな、ローズクイーン。」

「うん……でも、わたしでいいのかな?」

「こら、もっと堂々としろよ。勝者の振る舞いって大事だぜ。じゃないと負けたやつが浮かばれない。堂々と胸張れよ。」

「う、うん。そうなのかな……」

男子生徒「あそこにいるのって、ローズクイーンの先輩じゃね?」

女子生徒「きゃっ……隣は若様、風真先輩だよ!付き合ってるのかな?」

「…………」

「……恥ずかしいね。」

「コラ、おまえたち丸聞こえなんだよ!」

男子生徒「すみませーん。」

女子生徒「すみませーん。」

(風真くん、声大きいよ……みんなこっち見てる……)

 

ウエディングドレスはどうする?

「そういえばさ、文化祭で着たウエディングドレスって、どうするんだ?」

「しばらく部室のマネキンに着せておくよ。」

「そのあとは?」

「色々。自宅に持ち帰った先輩もいるし……リサイクルしたり。」

「リサイクル!?」

「うん。後輩部員たちの参考にもなるでしょ。」

「おまえのはさ、持ち帰ろう。」

「えっ……う、うん。卒業までは預かってくれるから、それまで考えとく。」

「卒業後はおじいちゃんの店で、本番まで預かってもらうのもいいんじゃね?」

「ええっ!? 本番って、本当の結婚式?」

「あ、ああ、そうだけど。なんか問題あるのかよ?」

(風真くん……なんかすごいことを言ってる気が……)

 

学食のメニューについて

「ふぅ……なんか話こんじゃったな。もうこんな時間じゃん。」

「遅くなっちゃったね。……あれ、でも何か用事だったんじゃないの?」

「あ、そうだった。全然大したことないんだけどさ、学食のこと。」

「学食?」

「そう、最近メニューがおまえとかぶるなって。…………」

「……それだけ?」

「それだけ。」

「ええー?」

「だから、大したことないって言っただろ?それとも大したことないと誘っちゃダメなのかよ。」

「ふふっ、そんなことないよ。」

「じゃあ、またメニューかぶったら誘うよ。」

 

真剣に練ったデートプラン

「◯◯。最近、忙しいのか?」

「え?そんなことないけど。」

「……あっそ。じゃあ、この前は、たまたま忙しかったってことか。」

「この前って……?」

「……忘れてんのかよ。こっちは真剣にプラン練って誘ってんだけど?デート。」

「あ、ごめんね。こないだはバタバタしてて。」

「……ったく、バタバタしてるのは生まれつきだろ?」

「もう。その日だけバタバタしてたの。」

「はいはい。断ったことに深い意味がないことだけは、じゅーぶんわかったよ。今度バタバタしてない時に誘いまーす。 ……ふぅ。」

(風真くん、気にしてたんだな……今度誘ってくれたら、ちゃんと一緒に出掛けよう)

 

太陽が沈む前は特別な時間

「……きれいな空だな。」

「ほんと……」

「なあ、この時間ってさ、特別な感じするだろ?」

「特別?」

「太陽が沈み切る前のこの時間……マジックアワーって言われてる。俺は好きだな。それに魚もよく釣れる。」

「ふふっ。お魚もこの時間が好きなんだ。」

「ああ、そんな特別な時間が今。学校帰りにさ、おまえとあと何回見られるかなって考えると、すごい貴重だろ?」

「うん、そうだね。」

「だから、タイミングがあった時は一緒に見ようぜ、この景色。 ……絶対断るなって、言ってんじゃないからな。」

「……ん? うん、わかった。」

「……じゃ、決まりだ。」

(あれ?風真くん…… 前に一緒に帰れなかったことを気にしてるのかな……?)

 

バイトに慣れてきた?

「◯◯、どうだ、バイト、そろそろ慣れてきたか?」

「うん、風真くん……いえ、『先輩』のおかげです。」

「よろしい。良い心がけだ。」

「ふふっ。でも風真くんが色々教えてくれたから、できることが増えてきたのは本当だよ。」

「きっと、おまえならいいスタッフになれるな?」

「目指せ、カリスマ店員?」

「こーら、調子に乗んな。ま、将来のために修行してもらうのはいいかもな?」

(……将来?)

 

主人公に後輩ができる

「そうそう、シモンのアルバイト募集の公告、出てたな?」

「え、本当?」

「ああ。とうとうおまえにも後輩ができる。」

「そっか。今までは、わたしが一番の新人だったのにな……」

「なに、寂しそうに言ってるんだよ?おまえが教育係になるくらいの気持ちでいけよ。」

「う、うん。がんばるよ。」

「そしたら、時給上がるかもな?」

「え、ほんと?がんばります。」

「現金なやつ。」

「カワイイ服もたくさん買えるし?アクセサリーも……」

「ちょっと待て。俺がおまえの時給決めてるわけじゃないから、そんなに本気になるなって。」

 

お客さんから指名を受ける主人公

「そういえば、話ってなに?」

「あ。そうそう。おまえ、シモンでお客さんに指名されてたらしいよ?」

「本当に?うれしいな。」

「お客さんの信頼を勝ち取るって大変なことだよな。すごいじゃん?」

「うん、ありがとう。」

「ただ、男性客ばかりってのは気がかりではある。」

「えっ……」

「そこで提案。もうさ、常に俺と一緒のシフトでいいんじゃね?」

(えぇと……それはどうかな?)

 

シモンの品ぞろえについて

「おまえに聞いて欲しいことあってさ。シモンの品ぞろえ、どう思う?」

「いきなりどうしたの?」

「こないだ店長に聞かれた。新規のお客様を獲得したいって。」

「そっか、風真くんの意見聞きたくなるのもわかるな。」

「それは嬉しいけどさ。なんて言ったらいいか、難しいよ。俺は、今のお客様を大事にした方がいいって思うからさ。」

「風真くんはすごいな……色々、お店やお客様のこと考えてるんだね。」

「自分の店だったら、何にも悩まないのにな。」

「風真くんのお店か……きっと素敵なんだろうな。」

「なに、他人事っぽく言ってんだよ。……ったく。」

(んん……?)

 

いっしょに仕事をすると楽しい

「風真くん、話ってなに?」

「おまえと一緒にバイトするようになってもう大分経つよな。」

「そうかな……?」

「何でそんな感じなんだよ。」

「一緒に仕事していると楽しくて、あっという間だったし。」

「それは同感。なんか、二人で店やってるみたいな錯覚に陥る。」

「ふふっ、うん。」

「将来のシミュレーションさせてもらいながら、アルバイト代ももらえる。シモンには感謝だな。」

「風真くんのお店への貢献度だってすごいよ。わたしも少しでも近づけるようにがんばらないと。」

「でも、おまえを指名するお客さんも増えてきてるしさ、俺たち二人で店やったら無敵じゃね?その時は……シモンから離れた場所に出店しないとな。恩を仇で返すわけにはいかない。」

(ふふっ、風真くん、もうお店を出すことは決まってるみたい)

 

颯砂くんとの関係について

「そういえば、お話ってなに?」

「……もういいかな。」

「え?」

「颯砂のこと、色々聞こうと思ったけど……やめとく。」

「颯砂くん……?」

「せっかくの二人の空間に、あいつ入れることないし。でかいし。」

「ふふっ。」

「あんまり噂してると走ってきそうだから、ここまで。
 マジかよっ!?」

「え?」

「ふぅ……違った。ていうか、なにビクビクしてんだ俺は。なさけね。そろそろ、行こう。送るよ。」

(風真くん……)


氷室くんとの関係について

「あ、そういえば何か話があるって。」

「あったけど、なくなった。」

「え? そうなの。」

「ここで二人で過ごすの、俺にとってデカいんだ……いつもと違った考え方ができる。
 ここに来るまでは、情けねぇけど…… イノリのこと詮索しようって思ってたんだ。」

「氷室くんのこと?」

「でも、もういい。おまえは今まで通りにしててくれ。あとはさ、俺の問題。おまえでもイノリでもない。俺の問題。」

「……うん。」

「ほら、そんな顔すんな。大丈夫、明日から急にサーフィン始めたりしねぇから。」

(風真くん……)

 

本多くんとの関係について

「あのさ、おまえ最近本多と仲いいよな?」

「え、行くん……?」

「はぁ……
 あいつのこと、そんな感じで呼んでるんだな。
 はぁー、聞くんじゃなかった。」

「えぇと……」

「ふぅ…… 正直悔しいけど、今は仕方ねぇ。
 うん?なんか、あの夕焼け雲、本多の顔に見えてきた。」

「ええ?どれ?」

「今は俺たちの時間。邪魔すんなよっ!」

「ふふっ、全然似てないよ?」

「いいや、あっちの雲も似てきた。」

「ええー?」

 

七ツ森くんとの関係について

「そうだ。なんか話があったんだよね?」

「ああ、七ツ森のこと。」

「七ツ森くん?」

「あいつ、流行とか最先端の情報とか詳しいじゃん。おまえにさ、そういうアドバイスとかしてくんの?」

「どうかな?流行のファッションとかは教えてくれるけど。」

「おまえが、好きでするんならいい。……でも、あいつの情報でおまえが変わるのは、嫌だ。」

「えっ、変わる?色々なファッションとか試してみたいだけだよ?」

「そっか……おまえが好きで選んでるんならいいんだ。色々試してさ、最後は帰ってくればいいじゃん。原点回帰?」

(原点回帰? 風真くん、ファッションの話してるんだよね?)

 

ふたりの時間は、あっという間に

「なんかさ、二人でいると時間経つの早いよな……俺たちだけ、周りから取り残された感じ?」

「ふふっ、そうかも。」

「悪くはないよな。俺たちの時間だけゆっくり流れて、周りはいつも通り忙しい。……ん?でも、どうなんだ?」

「え?」

「だってさ、俺たちの体感では1時間しか会ってないのに、周りからは何時間も何してたんだって思われる……それって得か?」

「えぇと……よくわからなくなってきた。」

「俺もよくわかんなくなってきた。……でもさ、夕焼けの時間はみんなに平等だから、ここにいれば、損も得もなさそうかな?もうちょっと日が傾くまでぼうっとしてようぜ。」

「ふふっ、うん!」

 

季節ごとの好きな場所

「時間を忘れる……いい季節だよな?」

「うん、気持ちいいよね。風真くんも春は好き?」

「ああ、好きだよ。釣りをしてても気持ちいい。この季節は、山や川かな。」

「海は夏?」

「釣りじゃないけど、俺にとって、海は冬。冬の荒波が運んでくる、お宝を探しに行くんだ。」

「宝物……」

「また即物的なこと考えたな?前に言ったことなかったか?小さい頃、おじいちゃんと変わった形の流木を探して宝物にしてったって。」

「へぇ、楽しそうだね。」

「流木探しに興味があるなら、次の夏は海水浴じゃなくて流木探しに誘うよ。」

「ふふっ、はーい。」

 

話したいことがあったはず

「……そういえば、話あったんだよな……」

「うん、何の話?」

「……なんだったかな?まあ、大したことないと思うけどさ。」

「え、忘れちゃったの?」

「俺が言いそうなこととか、おまえ、わかんない?」

(風真くんが言いそうなこと……お母さんみたいな、小言とか?)

「おまえ今、良からぬことを考えてたな?」

「え?そんなことないけど……」

「けどなんだよ。時間はたっぷりあるから、ゆっくり聞こうか?」

「ええー?風真くんの話を聞くんじゃないの?」

「たった今、事情が変わったんだ。」

(もう、都合がいいんだから)

 

風真くんの何か違うところは?

「なあ、……何か気付かないか?」

「えっ、どうしたの急に。

「ほら、何か違うだろ、俺。気になること、ないか?」

(気になること……?風真くんの髪が伸びて、目に入りそうなのは気になるけど……)

「お、おい。口で言えばわかるって。……でも、ま。アタリ。」

「え?」

「少し、髪、切ったんだ。良く気づいたな?」

「え、う、うん……まあね。」

「へえ……おまえ、意外と俺のこと見てるのな。合格。」

(えーと……長くて気になったことは黙っておこう)

 

寒さに耐えていたら

「寒いな。ごめん冷えるよな、もう行こ。」

「う、うん。でも何か話あったんでしょ?」

「さっきまであったけど……並んで寒さに耐えてたら、もう忘れた。」

「ええ?」

(風真くん、すごく寒いみたい。手、少し震えてるかも?)

「ああ、サンキュー。引っ張ってくれ。体がカッチコチに固まって、立ち上がれない。」

「ええー?もう、いくよ。よいしょっ――

「よっと……うわっ!?」

「わあ!」

「なんか、温まったな?」

「ふふっ、そうかも?」

 

帰り道は特別なもの

 「なぁ、俺たちにとって帰り道って、特別だろ?

「うん、そうだね。」

「鐘の音はあの時一回だけだけどさ。おまえと二人で下校してると、またなんか起きそうな気がする。」

「ふふっ、何かって何?」

「何だろな、ま、いいこと?」

「こっち!聞こえたの、こっちだと思うんだ、おれ。来て!」

「……ん?」

「え!?」

「聞こえたよな?」

「う、うん。小学生の風真くん?」

「ああ、あの時の俺たちに会えたりしてな?行ってみようぜ!」

「ええっ、まさか!」

(でも不思議……本当に、昔の風真くんの声みたいだったな)